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教育問題に関する私見と雑観

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私が書いた記事のうち、教育全般に関する個人的な意見などのものをまとめています。
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2022年9月の記事一覧

PTA未入会問題に見る、教員が法律を学ぶ必要性

PTA未入会問題に見る、教員が法律を学ぶ必要性

PTAに入会を拒否する家庭が増えているという問題を最近よく目にします。

先日は、そうした未入会の家庭の子供に関する以下のようなツイートを見かけました。

このことに関して、多くの教員が「当たり前だろう」、「入会していない保護者が悪いが仕方ない」という意見のリプをつけていたように思います。

PTAは任意団体であり、義務ではないそもそもPTAとは何でしょうか。

PTAは「Parent Teach

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大学入試の小論文の多くは、樋口式の「型通り」で十分という話

大学入試の小論文の多くは、樋口式の「型通り」で十分という話

小論文を入試に取り入れる大学が増えています。

推薦型や総合型の選抜方式では特に一般的になりつつあります。

その形式も様々で、事前作成提出の上、面接で詳しく突っ込んだ内容を聞くパターンから、当日時間制限で書くパターンや受験者同士でディスカッションをした後に作成に入る形式まで存在します。

少し前に小論文の入試形式が受験者の能力を判定するのに十分機能しているという内容の記事を書きました。

とりわ

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進路指導はいかに教員の「主観」を排するかが重要

進路指導はいかに教員の「主観」を排するかが重要

高校では、担任や進路指導部の教員が主体となって進路指導を行っています。

内容としては、キャリア教育から職場体験、オープンキャンパスの紹介、大学からの模擬講義の実施など、生徒が進路決定をするための手助け全般になります。

地方の高校では、共通テスト後に誰がどこの大学を受験するか、などの検討会も行っているようです。

進路相談の重要性進路指導の中でも、生徒が直接的に関係するものは進路相談でしょう。

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生徒より先に帰る教員

生徒より先に帰る教員

私の勤務校では「夕課外」という正課の授業とは別に、放課後に授業を行っています。

「夕課外」は16時半~17時半で実施されるため、16時半までを勤務時間とする職員の時間外に相当します。

もちろん、この時間の授業には手当がつくため、自分の授業がある日は「残業代」がつくことになります。

しかし、自分の担任クラスの「夕課外」の授業はあるが、自分の授業は無い、という日があります。
(あるいは、教科によ

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小論文は「学ぶ力」の差を如実に表す

小論文は「学ぶ力」の差を如実に表す

日本ではペーパーテストでの学力信仰が強く、総合型選抜や推薦選抜の入試に関して否定的な声が根強いように思います。

実際、こうしたペーパーテストの無い形式が一部の私立大学の定員確保のためだけに利用されていた、ということは事実です。

しかし、そうした批判を受けて文科省からは面接だけではなく、学力試験を2020年度から義務化しています。

ここでは、小論文の入試は学力試験の一部と見なされていますが、一

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「行き過ぎた指導」と「誰かをコントロールしたい」という心理と教員の心構え

「行き過ぎた指導」と「誰かをコントロールしたい」という心理と教員の心構え

教員という仕事の中で、宿題や課題の提出を促したり、遅刻を注意したりすることがあります。

こうしたケースにおいては、往々にして熱心な教員ほど「行き過ぎた指導」に発展することがあるようです。

では、どうしてそうしたことになるのかを考えてみます。

「行き過ぎた指導」は「誰かをコントロールしたい」という心理からくる「行き過ぎた指導」とはどんなものでしょうか。

生徒側は触れられたくない、教育上の指導

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徒弟制度による教員の新人教育と「参観」

徒弟制度による教員の新人教育と「参観」

教員の世界の新人教育は完全にOJT型、しかも教育担当者などついていないのと同じ状態で業務に放り込まれるのが主流です。

とはいえ、中学校や高校では空き時間は存在するため、そうした時間に新人は先輩教員の授業を参観することは多いのではないでしょうか。

「参観」は研究熱心さの証か若手の教員の方に授業を「参観」をしたいとお願いされることは少なくありません。

もちろん、快く引き受けるのですが「あまり参考

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全て学校任せの社会システムが方々に弊害をもとらしている現状

全て学校任せの社会システムが方々に弊害をもとらしている現状

大学入学共通テストの出願が近づいています。

前身の大学入学センター試験や共通一次試験を受験した人の数は相当数に上り、多くの大人はこの試験を経験した、という記憶を持っているでしょう。

しかし、その人たちは自分が現役の時にどうやって出願をしたか覚えているでしょうか。

実はこうした試験は高校で取りまとめをして、大学入試センターに送付しています。出願確認のはがきや受験票なども学校にまとめて送付され、

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受験で求められる能力は社会の求める能力と連動する

受験で求められる能力は社会の求める能力と連動する

受験偏差値の高い大学の学生が自社の社員になったが、思ったほどに活躍しない、という悩みを聞くことがあります。

それとは逆に〇〇大学以上の学生しかうちは雇わない、と公言していたり、学歴フィルターをかけている企業もあります。

受験学力は個人の知的能力と相関はあるのか、そしてそれらは仕事の成果に相関があるのでしょうか。

受験強者の知的能力は間違いなく高いまず、言えるのは大学受験で成功した、高偏差値大

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従来型の学力獲得は青春の挫折だった

従来型の学力獲得は青春の挫折だった

教育改革が叫ばれて何年も経っています。

その間、常に強く主張されてきたのが、主体性やそれを伸ばすためのディスカッションや総合的探究といった教育の推進です。

そうしたものに対し、私自身も期待感を感じますし、今まで伸ばしきれなかったり、可能性を見過ごしていたりした生徒に光を当てることのできる可能性を感じています。

と、同時に多くの標準的な生徒にとっての学力を担保することにつながっているのか不安に

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「公立夜間中学」設置と教員免許制度

「公立夜間中学」設置と教員免許制度

近年、義務教育の未就学者の問題が取りざたされています。

この問題の解決の手段として、「公立夜間中学」の設置が全国的に進んでいます。

「公立夜間中学」設置の動き「公立夜間中学」は義務教育を受けずに社会に出るなどした人を対象にした教育機関です。

これまでは一部の大都市などにしか存在しませんでした。

山田洋二監督の『学校』はこうした夜間中学が舞台になっいて、映画を見た方はイメージしやすいのではな

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「滅私奉公」を「美談」として語る恐怖

隣県の話ですが、このような新聞記事が話題になっていました。

2学期のスタートを気持ちよく切って欲しい、という担任の先生の熱意と思いやりを伝える素晴らしい話…

そんなわけがありません。こうした記事を掲載し、賛美する南日本新聞の社内の体制を推して知るべし、でしょう。

それは「業務」なのか学校の教員の仕事は「業務」と「業務外」の境目が不明確です。

授業の準備自体は業務ですが、それをスキルアップを

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