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記事一覧
【短編小説】ただ、笑顔が見たいだけ
――アイツの笑顔を、今日、この日に至るまで、見たことがなかった。
無口で、ツマンネー女。昔からそうだった。この世の不幸を全て背負ってます、みたいなカオしやがって。俺はそれが気に食わなかった。
小学生の頃から、オレの周りには笑顔が溢れていた。先生のモノマネはクラスメイトに大人気だったし、授業中先生に当てられた時、答えを発表すると見せかけて一発ギャグをかましてやれば教室は笑いに包まれた。ただ
【短編小説】ヤツは、あなたの大切なものを【書くのに2時間半くらいかかった】
【今夜、あなた方の大切なものをいただきます
怪盗X】
「大切なものって何でしょうねぇ」
後輩刑事の須藤が緊張感のない口調で言う。
「正直、全く見当がつかない。今まで、怪盗Xが盗みのターゲットを明らかにしなかったことはないんだが……」
江崎警部が怪盗Xからの犯行声明文、いわゆる予告状を受け取ったのは、これが初めてのことではなかった。数年前、その頃既に正体不明の大怪盗として名をはせていた
ごんぎつね その後二次創作
自分の言葉をごんがどう受け取ったのか、兵十にはわかりませんでした。実際のところ、彼の言葉には失望の色がありました。おっかあに先立たれ、気にかけてくれる人のいないと思い込んでいた自分に、くりを、まつたけを、形ある愛情を足元にぽつんと置き去ってくれた、まだ見ぬ何者か。友人の加助にこの話をしたとき、加助は「そりゃあ、神さまのしわざだぞ」と何でもないように言いました。彼の言葉を、馬鹿げていると切り捨てる
もっとみる【短編小説】無条件に愛されるべき存在で理不尽に憎らしい存在【Chat GPTの力を借りて推敲】
あの子が憎くてたまらない。
どうして? 片思いのあいつがあの子を見て愛おしげに目を細め、その小さくてふわふわの頭を撫でたから?
違う。それが私にとって、世界を揺るがす重大事件であったことは認めるが、そんなのは、些細なことなのだ。
あの子に苛立ってしょうがない。
どうして? あの子の周囲には絶えず人が集まっているから?
違う。確かにあの子に周囲が向ける感情は、私に向けられるそれ
【短編小説】そらいろの絵の具【所要時間三十分くらい?】
「そらいろと申します、よろしくお願いします」
「はい、そらいろくんね……。君、どうしてウチに応募したの?」
「はい、私が御絵の具セットを志望したのは……」
「あー違う違う、そうじゃなくて。どうして、既に青がいるウチに応募してきたのって訊いてるの。正直、白ならまだしも青二本もいらないんだよね」
「いえ、私はあおいろではなく……」
「青でしょ、どう見ても。……あのねえ、青色なんて場所によってはいくらで
【短編小説】間の悪い男【外出先で一気に書いた】
――プルルルル、プルルルル……
電話の発信音を、僕は祈る気持ちで聞いていた。目の前では、ドアノブにかけられた白いタオルが揺れている――。
間の悪い人生を送ってきた。
小学三年生の頃、音楽の教科書を忘れてしまったことがある。普段は前日に次の日の用意を全てランドセルに入れてから眠りにつくのだけれど、その時は確か、何かの曲の歌詞を覚える宿題が出ていたため机の上でそれを開き、そのまま忘れてし
【短編小説】人生は、きっとどこかで面白くなる【好き勝手に書きすぎた】
「待って」
「待たない!」
「待ってってば」
「待たない! 俺は! 今日! 死ぬ! 誰であろうと、邪魔は許さん!」
「カギをかけてた室内にどこからともなく現れた俺のことはスルー⁉ お前は誰だってなる流れだろ普通!」
「それはちょっと気になったけども! 俺はもう死ぬんだ、関係ない!」
「そうか、やはり俺のことが気になるか。聞いて驚くな、俺は未来のお前だ!」
「いや別に気にならな……今なんて?」
「
魔女。と、旅人【書くのに二時間くらいかかっちゃった短編小説】
「お嬢さん、お名前は?」
「……魔女」
旅人の質問に、魔女は風に靡く髪を手で押さえながら答えた。
「っはは、キミ面白いね。そうじゃなくて、お名前、教えてよ。呼びづらいじゃん」
「……?」
旅人の言っていることが本気で分からない、というように魔女は首を傾げた。彼女の生まれ育ったこの街では、魔女と言えば彼女ただ一人を指す固有名詞だった。生まれた時には何かもっと別の名前があった気がするが、彼女
雪かきと、善意の小路【90分くらいで書いた短編小説】
「こちらお釣りと、レシートになります」
「どうも、ありがとうございました」
店員さんに軽く頭を下げ、先に会計を済ませていた一平に「待たせたね」と声をかける。
「ありがとうございましたー」
二人そろってコンビニを出、二人並んで歩道を歩く。道の端には、昨晩降った雪が積み上げられていた。レジ袋から購入したばかりのピザまんを取り出しながら、一平はニヤニヤとした表情で僕に話しかけてくる。
「お前
短編小説:ゾンビ勇者を殺したい!
正直勢いで書いたので世界観設定とか諸々ガバいけど。
プロローグ「アァ……」
荒野に響く声が酷くしわがれていたのは、その声の主がゾンビだから……ではなく、単に男の喉がからからに渇いていたからだ。知能を残したまま生ける屍となった男は、アンデット系種族の中でも上位種とされるリッチに分類される。そのため、喉を潤せば普通に人間とそう変わらない発声が可能であろう。
「マオウ……」
呟き、魔王城の
30分くらいで書いた短編小説「音楽の力」
「♪~、♪~~」
少女の歌声がか細く響く。小さな公園には、少女の他に少年が三、四人。
「バーカ」
「何か言い返してみろよ」
少年たちが笑うのに合わせ、ランドセルが揺れる。その声を掻き消すように、少女は徐々に声を張り上げていく。
「ネクラ」
「……ち、近寄んなよ、ショーガイがうつる」
対照的に、少年たちは気勢を削がれたように徐々にトーンダウンしていく。
「……グズ」
「えっと、のろ
一時間くらいで書いた短編小説「瓶詰めの妖精」
その町では、妖精をペットとして買うことがブームになっていた。
小人のような体と虫のような薄い羽をもち、鱗粉をまき散らす妖精。彼女たちには様々な品種があり、体の大きさや生態も様々だ。中でも小さくて飼いやすいとされている品種は、手のひらに乗る程度の小さなガラス瓶の中で飼育されることが多い。
――ずり、ずり、ずり。
エサは花の蜜、瓶の上の方からスポイトのような器具で流し込んでやる。掃除は週