12月15日 塩尻駅(長野県)~空気澄む 清々しい朝に~
12月15日早朝5時、松本駅のお城口に夜行バスは到着した。長野県中部の中心都市である松本は1日を通して乗降客で賑わいを見せているが、さすがに平日の早朝では町も眠りについていた。
駅の温度計は-2度を指していて、もちろん寒いわけだが、ただ寒いだけではなく、ひんやりとした空気は透明感と清々しさが肌から伝わってきて、北アルプスのもたらす魅力とも言えよう。
ぽつりぽつりと人が集まりだして、松本駅から出発した始発電車に乗り、まだ夜の明けぬ6時3分 塩尻駅に降り立った。
標高700メートルを越えるこの一帯には、桔梗ヶ原(ききょうがはら)のきれいな名が付けられ、ぶどうをはじめとした果樹や野菜畑が広がり、県下最大のワインの生産地でもある。
塩尻駅でも 昭和63年にぶどうとワインのPRとして世界でも類を見ない、ホーム上にぶどう棚がつくられ、塩尻ワイン組合やJR職員が一丸となって栽培を行っているのだという。信州のぶどうは収穫が9月末から10月にかけてとのことで、爽やかな風にたなびくぶどうをホームで眺めるのはとても楽しそうである。いことだと思う。
さすがに12月では休眠したぶどう棚しか見ることができなかったが、それでも思いを馳せながらホームの端までゆっくりと歩いてみた。
開業から120年、駅の移転から40年という節目を祝うポスターとクリスマスツリー装飾で彩られた駅は華々しい。対応してくれた若い女性駅員さんは、ホームへアナウンスをしながら、改札の対応をしつつ、私の入場券を時間で発券するという、なかなか器用な方であった。きっぷを買い終わると、その横にワインの樽が置いてあるが、これは用紙の記入机なのだという。楽しいおもてなしである。
今日はこの後に、静岡県にも向かう旅であったから、ゆっくりと塩尻を味わうことができなかった。それでもワインはおみやげに買い、年末年始に楽しもうと考えていた。が、コロナに感染してしまったのは皆さまにお話した通りである。
一通り落ち着いてから、ワインを楽しんだのであるが、香り高いだけではなく、甘みもよく感じる素敵なワインであった。塩尻の厳しい寒暖差のある気候は、ぶどうにとっておいしさを増す秘訣にもなるのだと言う。やはり私が感じた清々しい寒さは間違いではなかったようだ。