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メソッドよりも体験のシェア
シャーリー・マクレーン『アウト・オン・ア・リム』を読んだ。日本では1986年に単行本が出版され、その後、文庫化されている。
夫は若いとき(90年代ごろ)に読んだそう。当時、話題になっていた本らしいけれど、私は不勉強で知らなかった。最近になって私がスピリチュアル系の本を読んでいるのを見て、夫が本書をすすめてくれた。
シャーリー・マクレーンは1983年に映画『愛と追憶の日々』でアカデミー主演女優賞を受賞している。俳優業のかたわら本を何冊も出版していて、本書は世界的なベストセラーになった。
著者が40代のはじめごろに経験した、霊性や神秘的な世界との出合いのプロセスを、愛人との逢瀬も含めて赤裸々に綴っている。前半の愛人との交際を書いている部分は、最初は暴露本みたいだなと思っていたけれど、読み進んでいくにつれ、それがあるから後半の悩みや変化がリアルに伝わってくるのだと納得した。
物質的な欲望やエゴによる愛情を当然のこととして求め、享受していた状態から、著者は偶然とは思えない出来事に導かれ、輪廻転生や魂の永遠性を信じる人たちと知り合っていく。戸惑い、疑い、葛藤しながら霊性の世界へ踏み込んでいき、悩んで考え抜いて苦しんで、価値観を大転換させていく様子が鮮やかに描き出されている。
この記事のタイトルにも用いた「メソッドよりも体験のシェア」というのは普段から、私自身が発信する際に心掛けていることだけれど、本書の内容はまさにそれで、シャーリー・マクレーン自身の体験がシェアされているからこそベストセラーになったのだと思う。
○○とはこういうことです、こうすればいいんですよ、とメソッドを提示する記事は現代、ウェブ上にあふれている。
けれども実際、メソッドを読んでわかった気になっても、できるとは限らない。「わかる」と「できる」は別の次元のことだからだ。
本書の中で、著者のツインソウルとされている友人がこんなことを話す。
「それはね、君の魂にはまだいろいろ学ばなければならないことが残っているからだよ。例えば、忍耐とか、寛容とかね。頭で人間の霊性を理解するだけでは不十分なんだ。実際、その霊性を生きなければいけないんだよ。わかる?」
忍耐すればいいんですね、と頭でわかっていても、実際に忍耐できるかどうかはやってみないとわからない。
その意味で、この世に肉体を得て生まれてきて「人生を生きる」ということは、魂の計画を「やってみる」ことにほかならないのかもしれない。
そして、やってみることの価値判断は、結果として目標を達成できたかどうかより、やってみるプロセスから何を学んだかが重要なのだろう。
先ほどの例でいえば、「できる限り忍耐しようとしたけれど、やっぱり難しいものですね」という体験ができた人は、単に頭だけで「忍耐すればいいんですね」と言っていたときよりも、格段に進歩しているはずだから。
◇見出しのイラストは、みんなのフォトギャラリーから
mioartyさんの作品を使わせていただきました。
ありがとうございます。
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