男ばかりの実験室で、生理2日目に倒れそうになった♯生理の話ってしにくい
大学1年の後期、週1回、1コマ90分×2=180分=3時間の実験があった。
この実験の単位がいちばん厳しくて、この講義を1回でも休んだ途端に、実験レポートの提出の有無にかかわらず単位は得られず、それは、進級もできないことをも意味した。
また、この3時間は一応の枠であって、まれに早く実験が終わるときもあったが、ほとんどは予定時間をこえた。
しかも、一旦、実験が始まれば、終了するまでほぼノンストップで、立ちっぱなしであった。
その日もいつものように実験が始まると憂鬱だった。
その日は、生理の2日目だったからだ。
一般的に、生理の2日目がいちばん重くて辛い人が多い。
個人差があるが、腹痛、生理痛、頭痛、腰痛、大量出血、発熱、下痢などがある。酷い症状がある人だと、激痛でベッドから一歩も出られないときもある。
わたしはそこまで酷くはなかったが、3時間に及ぶ実験でほとんどトイレに行けなかったから
「血が漏れたら、どうしよう」
と気が気じゃなかった。もちろん、その日は、大人用のオムツ並みに大きい生理用品をつけて、さらに、万が一血が漏れたときのために、血が目立たない色のズボンをはいた。
いざ、実験が始まると、予想だにしない症状に遭遇した。
クラッ
最初は気のせいだと思っていた。
クラッ、クラッ
(頭がクラクラする。なに、これ?! まさか、貧血?!)
それまでは、生理の2日目でもあまり貧血を感じずに生きてきたから、信じられなかった。
クラッ、クラッ、クラッ
貧血の症状はどんどん酷くなり、実験台に掴まっていないと、後ろにバーンと倒れるのではないかと思った。
でも、誰にもそのことを相談できなかった。
実験室の中は男子学生9割で、同じ実験グループにはわたし以外は全員男子。先生に至っては男性しかいなかったのだ。
どうにかこうにか3時間の実験中、実験台のヘリにしがみついてやり過ごした。無論、実験に集中できるわけがない。ただその場にいるだけに近かった。
3時間くらい経って、おしっこが我慢できなくなってトイレに駆け込む男子学生が増えたタイミングで、わたしもトイレに駆け込んだ。
当時のわたしは、生理になると下痢になりやすかったのだ(食事中にこれを読んでいる方、ごめんなさい)。
5分か10分だろうか。トイレから実験室に戻ると、一人の男性講師が近づいてきた。
「どこに行ってたんだ!」
男性講師は怒鳴り始めた。
「トイレです」
わたしがそう答えると
「トイレ? 随分、長かったな!」
と大声で言った。どうやら、その男性講師はわたしが実験をサボったと思ったらしい。
すると、あまりに無神経な言い方に感じたのかもしれない。やり取りを見ていた二人の男子学生が
「長くないと思います」
とかばってくれた。
しかし、実験での先生からわたしに対する評価は最悪だった。
≪実験に対する積極性が感じられない≫
「生理の2日目だったんです! 貧血と下痢が酷かったんです!」
泣き叫びたい気持ちだったが、そんなセリフを男性の先生方に言えるわけがなかった。
悶々とした気持ちを抱えたまま数ヶ月が過ぎた頃、教授から学生にアンケートがまわってきた。
それは、実験に関するものだった。
◎どうしたら、学生全員が実験に積極的に参加してくれるだろうか。
わたしは、あの日実験室で遭った出来事を書く覚悟を決めた。
女子学生は1割しかいないから、無記名アンケートでも、誰が書いたかなんてダダ漏れに近かったのに、
それでも書こうと決めた理由は、もうその大学を退学しようと決心していたからだ。
「この大学に残った女子学生やこれから入る女子学生が少しでも過ごしやすいように」
それも一因だけれど、綺麗事すぎる。やっぱり、正直に言うと
「自分の実験に対する低評価を払拭したかった」
からである。
アンケート提出後の先生方の対応が恐かったが、泣いても笑っても、この大学とはあと数ヶ月でバイバイだと思えば、なんとか大学生活を過ごせそうな気がした。
2年の後期、また実験が始まった。すると、劇的な変化があらわれた。
✔️実験は座ってやること
✔️トイレに行くのは自由
✔️体調が悪い学生はすぐに申し出ること
実験が乗ってくると、立ち上がってやり出す男子学生がいると、すぐに先生が近づいてきて
「座りなさい」
と注意した。それは
「生理の症状が酷くても、女子一人だけだと座りにくい」
と書いたわたしのアンケートをもとに、学生全員を座らせる作戦に転じた先生方の配慮だったのだ。
そうなのだ。男性は、生理中に女性がなにに困っているか知らないだけで、きっと前から助けようとは思ってくれていたのだ。
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