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仕事を辞めたときに救われた本|吉本ばななのエッセイ
不動の好きな作家は、吉本ばななさんだ。
中学生の頃に「キッチン」を読んで以来、吉本ばななさんの作品を追い続け、著書はほぼすべて読んでいる。
作品の面白さだけでなく、彼女の執筆に対する一貫した信念にも深く共感し、信頼している。
ばななさんの言葉にとくに救われたのは、仕事に忙殺されて適応障害になったときと、その仕事を辞めたときだった。
がんばりやさんで、まじめでいい人たちは、どうしてもそれをやろうとして、ストレスが楽しいことや生きやすさを上回ってしまい、壊れてしまう。人生は一度しかないし、自分はひとりしかいない。そんないちばん基本的なことを忘れてしまう。(中略)
もう、ひとりも負けないでほしい。時代に押しつぶされて、かけがえのない笑顔を失わないでほしい。
休職してすぐは仕事を投げ出したような気がして、自分を責め続けた。
夜は眠れないし、朝も起きれない。毎日死にたかった。
休み始めて2ヶ月ほど経った頃、ようやく本を読もうと思い始めた。
それは、母が贈ってくれた詩を読み、読書が好きだったことを思い出したからだ。
「そうだ、私、吉本ばななさんのこと好きだった」
そう思い出して、久しぶりに本を手に取った。
ばななさんの言葉が、がんばりすぎなくていいんだよ、と寄り添ってくれた。
仕事を辞めることになったときは、自然とばななさんの本に手が伸びていた。
誰にでも潮目が変わる時があって、それに気づくのって、だいたい悪いことが起きている時ですよね。(中略)たとえば会社を突然クビになっちゃうとか、そういう衝撃的につらいことっていうのは、目を開く大きなきっかけだなって、よく言われることですけど、本当にそうだと思います。
この言葉と出会い、仕事を辞めることになったのは、何か大いなるものからのメッセージ、ギフトなのかもしれないと素直に思えた。
私が笑って生きていくための、もしかしたら天の計らいなのかもしれないと。
今、30代を迎え、もう自分を犠牲にしてまでがむしゃらに頑張る働き方はしない。
しかし、あの頃必死に働いて、懸命に生きたことに後悔はない。
要領も良くなかったし、実力も全然足りなかったけれど、頑張ることだけは怠らなかったと胸を張って言える。
愚直な自分を嫌いにならずにすんだのは、ばななさんのおかげだ。
私には、ばななさんがいるから大丈夫。
間違いなく私の人生は、吉本ばななに救われた人生だった。
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