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無力な少年の物語/邂逅?
「騎士団本部、どこにあるんだろう」
「ここを右って言ってたよ」
俺は地図と街並みを交互に見ながら歩いている。
挨拶に行きたいが、騎士団本部の場所がわからない。
「あ、おい、見ろよ」
「なんだ?」
ティムが指をさした方を見てみると、ローブを深く被った人が歩いている。
「あの人がどうかしたの?」
わかりにくいとティムに聞くと、彼は言った。
「ローブを繋いでいるボタン、よーく見てみろ。あれ、絶対に貴族だ
無力な少年の物語/何をしようか
「ザズ、起きたか!」
どうやら俺は行き来する旅人を狙った通り魔にやられたらしい。そいつは有名で、指名手配されている。
「あ、あぁ・・・心配かけてごめんよ」
「謝る必要なんてねぇよ。あいつがわりぃんだからさ。動いてもいいけど、傷が開くから走ったりするなって。気にすんな、騎士がしばらく泊めてくれる。よかったな」
「あぁ。だけど、あの後どうなったんだ?」
「言ってなかったな」
それからティムは話した。
無力な少年の物語/新しい街
馬車に揺られてどれくらい時間が経ったのかわからない。寝ていたかもしれないが、目指すべき最初の街に向かっている。
「見えて来たぜ、お客さん。この先が不落の騎士が守る商業都市、エル・ハリェ・メアンだ」
入り口で降ろしてもらった。
「ありがとうございました」
荷物のついでとはいえ、ここまで運んでくれた御者さんにお礼を言う。
「いいのさ。話し相手が馬しかいねぇとつまらねぇからな。気にすんなよ坊主」
それ
無力な少年の物語/踏み出そう
でも、行動を起こさないと動かないのは知っている。
今までの俺だったら、「どうせ俺なんてその程度」なんてすぐに諦めてしまっていた。が、今は違う。
ここに立っている俺は実力なんててんで無いが、心だけは少し強くなった、はず。
弱者なりに戦い、結果を出す。自分の持つ弱い力で少しでも、1人でも助けられる人が増えるのなら・・・
負けたって、批判されたっていい。俺なんかにできる事なら全力で挑んでみようと思った。
無力な少年の物語/立ち止まってはいられない
俺は、ティムとの出会いと、彼と話していくうえで共感できる考えがいくつもあった。価値観とか、その人の経験から飛び出てくる言葉は俺を少し成長させてくれて、新しい観点に気が付くこともある。
人と関わる事も、一つの勉強じゃないか。
その俺の考えが合っているかなんて正直わからないけど、とにかく一歩進んだ。進めた。
いつか、父のようになりたいし、追い越してしまいたい。
伝説的な騎士・シュナイダーは言っていた。
無力な少年の物語/心強い仲間がいるから
俺にしては随分と格好のいい啖呵を切ったが、どうすればいいのかさっぱりわからない。
とにかく、町の剣士や商人が集まる「剣士の集い」という集会場のような施設に行くことにした。
そこには武具の修理や販売から、デフスト含む厄介者の撃退依頼、商人等の護衛依頼などの様々な取引もできる。町の環境整備や流通行路の情報交換も可能なので、ここにはたくさんの人が来る。実際に依頼が終わって帰ってきた屈強そうな剣士が報酬金
無力な少年の物語/始まりの朝
「俺には、剣の才能も、力も、意志も、何もかもが足りないのだ。」
それに気付いたのは14の頃だった。夜中に、一人で。
俺の父は名を馳せる「剣豪」だ。俺もそんな父のようになりたくて生きてきたが、ここで初めて人と同じにはなれないと知った。
父はすごい人だ。かつて跋扈していたおぞましい怪物を倒し、人々を多く救ってきた。小さい頃の俺は、大きな父の背中を見て育った。逆に言うと、それしか知らなかったから、周りが