結婚式のメンバー

書影

これは著者(カーソン・マッカラーズ)の自伝的な小説といえそう。
発表順としては「心は孤独な狩人」でデビューしたため、本作はそのあと、となるけれど、改めて、23歳で書かれた「心は孤独な狩人」がすばらしい作品であることを実感した。
この2作は、登場人物の性質に重なるところがいろいろあると感じた。ただ、話の長さや奥行きでいうと、氏が先に世に出した「心は孤独な狩人」の方がずいぶん壮大であった。唖(おし)のシンガーはもちろんのこと、名前は忘れたけれどシンガーに対して酔っぱらってまくしたてる、知性と野性が同居したような人物や、レストランの店主や、あとコープランド医師なんかもずいぶんキャラが個性的だった。
それぞれの人物の「閉鎖性」への着眼が、氏の作品では強いように思うし、それは昨今のBLM運動に見られるように根強く残っている。だからやっぱり、深いところでこういう小説は現代でも十分に通用してくる、効いてくると僕は思う。
僕の勝手な想像では、マッカラーズは人生のいろいろな苦難の中で本作「結婚式のメンバー」を書かざるをえなかったのではないかと思う。あるいは自己治癒として。実際にあとがきを読んでも「命を削って」、「生み出した」ということがよく伝わってくる。
僕はこの2作を読んで、カーソン・マッカラーズという人物にすごく親近感がわいた。サリンジャーに対してもそうであったように。あたたかいものがあとに残る。

さて、主人公フランキーが企てる兄の結婚式への計画…。話は終盤で、意外にあっさりした方向に進んでしまう。「え?そんなに?」と、はしごを外されたような気分にもなったけれど、自分の今までを思い返してみても「瞬間的に何かに対して燃える」ということがしばしばあったし、そういうときはだいたい盲目的になっていることが多かった(あるいは多い)。

途方にくれたり希望をもったり、くるくるくるくるまわり続けるフランキーに、自分が重なった。
こういうときはいつも「俺、だいじょうぶか?」と思うけれど、それでも、それでもなお、自分の中にある子どものような部分を大切にしても良いのではないだろうか。だって他に何がある?と、僕は思う。(もちろん生活していく上でのバランスというのはある程度は必要なのだけれど…)

そう、こういう本に出会えると、やっぱりうれしいんですね。

【著書紹介文】
この街を出て、永遠にどこかへ行ってしまいたい――むせかえるような緑色の夏、12歳の少女フランキーは兄の結婚式で人生が変わることを夢見た。南部の田舎町に暮らし、父や従弟、女料理人ベレニスとの日常に倦み、奇矯な行動に出るフランキー。狂おしいまでに多感で孤独な少女の心理を、繊細な文体で描き上げた女性作家の最高傑作を村上春樹が新訳。《村上柴田翻訳堂》シリーズ開始。

最後に好きなシーンをひとつ紹介して終わりにします。

スクショ①

スクショ②

(書影と著書紹介文は https://www.shinchosha.co.jp より拝借いたしました)

【関連note】心は孤独な狩人(読後感想)
https://note.com/seishinkoji/n/nc815e2a09c0e

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