火を熾す/犬物語

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たて続けにジャック・ロンドンの短篇小説を読んだ(『野生の呼び声』は中篇)。今回は柴田元幸さん編訳の2冊の感想を。

『マーティン・イーデン』
https://note.com/seishinkoji/n/n1c98d46f9d16
を最初に読み、いたく感動したけれど、この2冊はあまりピンとこなかった。

たとえば本の帯の推薦文の中で目立つ言葉は
「北か南か」「犬か人か」「生か死か」「犬も人も等しく」「どっちがどっちの」「生きるか死ぬか」「勝つか負けるか」

ここには常に強烈な二元対立があるように思え、読んでいて疲れるところも多かった。経過がどうであれ、着地点が「こうでなきゃならん!」みたいな。

いや、おもしろいと思う短篇は確かにたくさんあった。たとえば、『メキシコ人』『生の掟』『影と閃光』『一枚のステーキ』『世界が若かったとき』『生への執着』『ブラウン・ウルフ』『バタール』『あのスポット』など。(いっぱいあるやん)

しかし何かを描こうとしているパワフルさがあまりにも前面に出すぎている印象が強かった。

特に代表作『野生の呼び声(The Call of the Wild)』この、犬の視点で書かれた物語は、僕にはとても難解に思えた。決して理解しようと読んでいるわけではないにせよ、違和感も含めてひっかかるポイントがほとんどなかったのかもしれない。あまりにも壮絶ではあるが、途中から犬がいったい何なのかわからなくなってきた。記号? むむむ…。

『馬に乗った水夫』によると、『マーティン・イーデン』はジャック・ロンドンの人生の実に終わりの方に書かれているし(しかも船の中で)、にじみ出てくる人生のむなしさ、みたいなものの方が僕は好きなのかもしれない。

大好き!からはじまり、大嫌い!になりかけた(なった?)僕にとってはそんな稀有な作家、ジャック・ロンドン。

(書影は http://www.switch-pub.co.jp より拝借いたしました)

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ジャック・ロンドンの『犬物語』に疲れた方は(笑)ぜひ、マーク・ストランドの『犬の人生』を読んでみてください。対極にあります。これ、めちゃくちゃおもしろかったです。
https://note.com/seishinkoji/n/n17fabe337817

あと「極北モノ」ならその名の通り、マーセル・セローの『極北』すごくよかったです。
https://note.com/seishinkoji/n/n3584a116a33d

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