頼むから静かにしてくれⅡ
Ⅰの方のレヴューと併せて読んでいただけるとお楽しみいただける(?)かと思います。
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Ⅰと続けて読むと、こちらの方はテイストに慣れてしまったというか、そこまでのインパクトは感じられなかった。
『ジェリーとモリーとサム』という短篇に対する訳者の解題がこの1冊を物語っていると思う…なんて発言はいささか暴力的だがP.241の解題をそのまま引用してみる。(以下、引用)
かつて私がこの短篇を訳したとき、『犬を捨てる』という訳題をつけたのだが、今回はオリジナル・タイトルに戻した。なぜならあまりにもこれは理不尽な題だからである。この作品の中にはたしかにジェリーもモリ―もサムも出てはくるけれど(端役のバーテンダー、客の娘、昔飼っていた犬)、彼らはすべて端役であり、話の本筋とはほとんど関係ない。どうしてこんな無茶苦茶なタイトルをつけなくてはならなかったのか、いくら考えても訳者にはわからない。しかしこれくらいひどいと、その原題に殉じてしまいたいという気にさえなってしまうから不思議である。発表時のタイトルは『ドッグ・ストーリー』(これはまともだがなんとなく物足りないなと感じるのは、題名に対するカーヴァーのオブセッション的毒気にあてられたせいであろうか?)
これも「情けない男シリーズ」の一篇である。混乱に混乱を重ねる生活に区切りをつけるために犬を捨てにいく男の話。こんなところを人に見られたら救われないよな、子犬を捨てるなんて人間の屑のすることだよな、とびくびく怯えながら犬を連れていく男の情けなさが切々と身にしみる。最後に彼は犬にさえ見はなされてしまうのだ。
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さて次は『愛について語るときに我々の語ること』と『ビギナーズ』に収録された17篇をそれぞれ交互に読んでいく。前者は編集者ゴードン・リッシュに半ば無理やり短くさせられたもので、後者はオリジナル・ヴァージョンだ。
これを読み解いていく中で、カーヴァーさんのことをもっと深く知れるはずだし、訳者である村上春樹さんのことも知れるはずだ。
ちょっとこの2冊は心して読みたいので、次のレヴューは3か月後ぐらいになるんじゃないかと思っていますが本はどこに行くまい。気長に参ろうぞ。