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人には、それぞれの喜び方がある。パラリンピック金メダル。車いす男子単の小田選手はコートに倒れ込んだ。女子単の上地選手は涙を流して顔を覆った。「動」も「静」も味わい深い

人には、それぞれの喜び方がある。パラリンピックの車いすテニスシングルスで、日本は男女ともに金メダルを手にした。男子の小田凱人選手はコートに倒れ込んで豪快に優勝の喜びを味わった。女子の上地結衣選手は顔を覆って歓喜の涙を流していた。どちらの場面も美しかった。世界最高峰の舞台で頂点に立つことの重みが、見ている側に伝わるものだった。

7日に行われた男子シングルス決勝。18歳で初出場の小田選手は、世界ランキング2位。相まみえるのは世界1位のアルフィー・ヒューウェット選手(英国)だ。

セットカウント1-1で迎えた最終セット。小田選手は2時間半を超える試合を制して優勝を成し遂げた。

その瞬間だ。小田選手は車いすの右側の車輪を外した。バランスが崩れて、小田選手はコートに倒れ込んだ。仰向けになりながら、優勝の喜びを味わっていた。

今大会の舞台はローランギャロス。全仏オープンが行われる舞台だ。歴代の優勝者はコートに仰向けになって喜んでいた。今年の覇者となったカルロス・アルカラス選手(スペイン)も仰向けになって雄たけびを上げていた。

車いすに乗った小田選手も同様の方法で喜びたかった。車いすから前倒しでコートにダイブしようとしたが、うまくいかない。そのため、事前に考えていた車輪を外して倒れ込む方法を実行したのだ。

第3セットで、一度は相手にマッチポイントを握られていた。相手のミスで難を逃れると、一気に波に乗った。大逆転の金メダル。豪快な喜び方がこの試合の激しさとマッチしているように思えた。

前日には、女子シングルス決勝で上地選手が優勝した。パラリンピックは4大会連続の出場。高校3年時に出場したロンドン大会ではベスト8。リオ大会で銅メダルを手にした。そして前回の東京大会では銀メダル。少しずつ、結果は上向いていた。

それだけに、今大会では金メダルをぜひとも手にしたい。決勝では第1セットを奪われたが、第2セットを6-3で奪い返すと、最終セットは6-4で奪って、悲願の優勝を果たした。

その瞬間、上地選手は顔を覆って歓喜の涙を流していた。4大会目にしてつかんだ頂点。悲願の金メダルを手にした。流れる涙が止まらないのも当然だろう。

2人の喜び方は好対照だった。豪快に喜んだ小田選手が「動」とするなら、顔を抑えた上地選手は「静」ともいえる。

それでも、それぞれの喜び方は見ている側の胸を打つものだった。小田選手、上地選手、金メダルおめでとう。

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