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自選集:短編小説

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最新の心理解剖図は、古びた羊皮紙に書きつけられる。
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#小説

『私の頭痛』

『私の頭痛』

(小説、約2500字)

ここ数日、頭痛に悩まされていた。首の後ろあたりにしこりがあるような感じがする。そのしこりは物理的なものではなく精神的なものが由来だろうなと思った。

私は自分の体調不良の原因を見つけるのが得意だ。なにが原因でその結果が現れているのか、身体の内側の結びつきをある程度察することができた。そのためには数学のような思考と、瞑想のような集中の両方をうまく使いこなさなければならない。

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生きるのが辛いので、自分で書く空想的な文章の世界にひきこもります。それはこのノート上でのことだ(18.09.09)

前回(初回) → https://note.mu/sdw_konoha/n/n1b590ce2a2d3

(順番どおりに読んでもいいし、読まなくてもいい)

これをかっこつけた言い方でいうと、「文学的ひきこもり」ですw

ここまでのあらすじ:
森、歴史、水と時の流れ、バス、マンション、母ならぬ母の真心、長い手紙。

今やこの世の中は、コンピューターによって管理されている。

彼らの計算によって、た

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生きるのが辛いので、自分で書く空想的な文章の世界にひきこもります。それはこのノート上でのことだ。

生きるのが辛いので、自分で書く空想的な文章の世界にひきこもります。それはこのノート上でのことだ。

ついてきたい人だけ、ついてきてください。

人に読ませるためのものでもない、小説とも詩とも呼べないような空想的な何かを書いて、その書くという行為と結果のなかにひきこもろうと思います。それはこのノート上で行われること。

かっこつけた言い方でいうと、「文学的ひきこもり」です。

(色んな事を後回しにしてしまっていますが、少し元気が出たら確認して対応していきます)

約500年前に、西欧の小国の冴えな

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「今日もつまんねぇ一日だった」というツイートに何よりも救われる

「今日もつまんねぇ一日だった」というツイートに何よりも救われる

僕らが本当に見たいのは、不幸で、幼稚で、きしょい情報だ。

そんな自分の話をさらし続けてくれている人がたまにいる。その中でも有名な人と無名な人がいる。

ブログのような形で発信している人もいれば、リアルタイムの配信という形をとっている人もいる。

そういう人が自らのきしょさを発信してくれていたとしても、一人で見ているんじゃどこか物足りない。

できればみんなで「あーだこーだ」いいながら見たい。そこ

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自作小説の失敗作に共通する4つの特徴を分析していく。

自作小説の失敗作に共通する4つの特徴を分析していく。

noteに公開する小説と、そこまでたどり着けない失敗作の小説がある。

自分の場合、前者はそれぞれ違った内容だけど、後者はほとんど同じ内容だということに気づいた。ちょっと面白そうなので立ち止まって考えてみることにした。

(小説を書いていたけど、うまく形にできなかったのでそこで考えたことを言語化しておきたいというモチベーションで書かれたnoteです)

象徴的な140字小説。失敗作はだいたいここに

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幸せな食卓の下に、少しずつ蓄積されていった邪悪なもの

幸せな食卓の下に、少しずつ蓄積されていった邪悪なもの

肉厚なステーキを食卓で食べているこの瞬間でさえ、
僕はイライラして仕方がなかった。
父の不気味な無神経さを我慢しなければならなかったからだ。

【小説 / 読了時間:6~7分 / 2800字】

この食卓は絶望的な終着点なんだ。この世に生を受け、育ち、いま大学生活をしている僕にとってのね。もうどこにもいけないんだ。

一見すると、父・母・僕の三人の幸せな家族の食卓にも見えるかもしれない。いや、ほと

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いや綺麗事じゃなくてさ。現実にはそんな理屈なんかじゃとても捉えられない、うまく言葉にできなくて混沌としていて破壊的な体験がある。何も見えなくなってただ溺れて、それでも陸地を目指してあがくかのような。きっとそれこそが自分を自分たらしめる。書き残せるものがあるとしたらそういう話だ。

「あ、私は本気の本気じゃなかったんだ」彼の演奏を聴いてハッとした。例えるなら私が必死にパズルを組み替えている間、彼はパズルのルールなんか無視して上から絵の具を自由に塗って描いていた。そりゃ勝てんわ。安全圏の戯れじゃダメなんだ。それは自分の力をまず自分が信じていない証だったんだ。

街を歩く

街を歩く

どの大陸の海岸と繋がっているのか、溢れかえるような人の波

都会の中で「悪人」も一瞬だけ違う表情を見せることがある

僕は少しの戸惑いを覚える 抱える

君の苦労が報われていればそっちが表の顔だったのかな

誰も彼もが火の車 心が腹ペコ状態

他人をだましてでも今日の晩飯を手に入れていく

僕も例外じゃないけどね

「飾らない姿なんて見せられるわけないじゃない」と

手首に傷痕のある夜の蝶の声が聞

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原始の青、永遠の青

原始の青、永遠の青

――過去が重い。時間が経てばたつほど失敗ばかりが積み重なっていく……。うっ。

今日もまた深夜の悪夢にうなされ、罪悪感と劣等感にたたき起こされた。やはり僕は論理や理屈を重んじる人間だ。そういう人間の性なのか(同じタイプの友人の中にも同じような傾向を見た)、直近だろうが5年前だろうが、自分の矛盾や間違いがとても気になって仕方がない。理によって立っている人間は、無駄なところで記憶力が良いのだ。

一つ

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鏡の中のアカノ

鏡の中のアカノ

――アカノという教師の口癖は、「皆と同じが素晴らしく、そこから逸脱した者は未熟な病人だ」というものだった。これは言葉の暴力として、54年の生涯で何度も繰り返された。そしてついに、自分のしていることに気づくことはなかった。

「これは聞いた話なんだけどね」沙希は前置きして言った。「なんか近くの学校に、アカノっていう頭がおかしい教師がいるらしいよ」
「えっ、なにそれ? 最近どこも頭おかしい人ばっかじゃ

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偽りの注射と、廊下の残像

偽りの注射と、廊下の残像

わたしは夢の中で、どこかの大きな病院の白い廊下を歩いていた。コツ、コツというハイヒールの音が他人事のように聴こえていた。

その廊下は明るくモダンで、どうやら"診察室"と呼ばれる部屋へと続いているらしかった。

わたしは数多くの部屋の中から、ある一室の扉の前に迷うことなく立った。
なぜか胸騒ぎがしたが、わたしが選べる扉はそう多くないような気がした。最悪の選択肢の中から、ましなものを見つける。そうい

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