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ACT.92『特急街道から出て〜最後の函館本線〜』

空席だらけの列車

 乗車して、少し驚いてしまった。
 観光列車、キハ261系5000番台…ラベンダー編成。この編成は夏季ラベンダーシーズンには車両運用を調整し、函館本線と富良野線を直通運転する臨時特急であるフラノラベンダーエクスプレスに充当されている。
 ラベンダーシーズンともあり、乗車している乗客は多いのかとフリースペースに入ったが、予想以上の空席で拍子抜けしてしまった。観光特急としての知名度。札幌から乗り換えなしでラベンダー観光に向かえるという認知度の少なさを列車が物語っているように感じた。
 乗車し、まずは荷物を車内に置いた。ラウンジ内の車窓を向いた座席に置き、そのまま車掌室に向かう。車掌室に向かい、車掌に声を掛ける。
 自己申告として
「滝川から乗車しました」
と申告すると、車掌が簡易の特急券を発行してくれた。その簡易の特急券を持ち、再び荷物を置いた自席に戻る。その際に、こんなものを頂いた。

充電機器だらけでみっともないのは許してください
 フラノラベンダーエクスプレスに乗車すると、こうした記念乗車証を車掌から頂けるようだ。
 富良野→札幌で表記があるという事は、逆方向の札幌→富良野の方もあるという事で良いのだろうか。こちらに関しては再度の渡道で乗車してみたい。
 通常、この乗車証を置いている場所というのはスマートフォン置き場になるのだが今回は特に置くものもなかったので記念乗車証の撮影代わりの台座として使用する事にした。
 ちなみにこの記念乗車証の裏側は、富良野線と函館本線の路線図が掲載されている。
 往路のフラノラベンダーエクスプレスか、それとも同じ富良野線を走行する富良野・美瑛ノロッコ号だったかに乗車すると、対になる乗車証を貰えるようで合わせると富良野線の路線図が完成する仕組みのようであった。
「ま、また裏返したらコレはなんとも言えんなぁ…」
そんな思いを混ぜつつ、車窓を向かっての座席に座って函館本線を札幌に戻るのであった。
 ちなみに。この画像でも分かるようにこの列車にはコンセント充電の機能が搭載されている。
 その為、携帯電話・スマートフォンなどの充電が可能だ。現代人には嬉しい配慮であるが、せっかく持ってきた充電バッテリーの出番が失われるのは少しだけ切ない。

札幌へ

 乗車している函館本線は、前回記事にも記したようにカムイ・ライラック。そして石北本線へ直通する特急・オホーツクと特急列車の街道となっている。
 そんな中で富良野線とを繋ぐ観光列車(特急)として函館本線を走行するラベンダー色の列車。乗車していると、少しだけ非日常を味わえる面白い列車だ。
 決して富良野線からの乗車だけと限定されている訳ではないので、函館本線からの乗車も全然可能なこの列車。ラベンダー編成に乗車できた…のはあるが、札幌まで贅沢に時間が被ったのは嬉しい誤算である。
 宣伝になるかもしれないが(だったらなんで
 ラベンダー編成の相方である、はまなす編成。
 この『はまなす』編成に関しては稚内から旭川まで宗谷本線で旅を共にした。記事をマガジンから辿ってご覧いただくと幸いである。
 写真は、乗車している現在の車両の車内。
 車窓を向いたベンチ状の座席になっており、風景を見ながら列車の旅を楽しめる。
 乗車した際にはスマートフォンは充電に専念させて、車窓をじっくり眺めるのもアリだろう。

 函館本線を走行している中で、列車は雄大な野原の車窓に差し掛かる。
 流石は観光特急…なのか、しっかり案内放送にも手は抜かず。この函館本線でも観光案内を実施していた。
 記憶は少し抜け落ちているのだが、確かこの区間のストレートは日本の鉄道でも随一の長さを誇るとかなんだったような気がする。いや、思い出せてないじゃないのでは…?(突っ込まないで
 ここで前回記事に改めてだが、乗車している乗客は大半が訪日の外国人観光客であった。乗車している日本人は鉄道ファンか、札幌まで向かうとして乗り合わせた乗客くらいしか居ないような気がする。
 列車はそのまま函館本線を札幌に向かい、自慢のエンジンを唸らせて走る。
 電車が主役となった函館本線の札幌⇄旭川だが、ディーゼル車の力強い唸りもまた捨て難い。
 俗に云う、『架線下ディーゼル』の状態である。

 しばらく乗車していると、車内チャイムが流れてきた。
「なんの案内を流すのだろう…?」
と耳を傾けてみると、北海道自動放送のベテラン、大橋俊夫氏による
『キハ261系ラベンダー編成』
の案内と観光列車としてのこの列車の機能が放送された。
 しかも日本語だけではなく、英語・中国語・韓国語も用意されており、世界中にこのキハ261系5000番台の良さ、宣伝がなされている状態となった。
 放送時間は4ヶ国も詰め込んでいた為かなり長い時間の放送で、聞き応えのあるものだった。
 実際にこの『ラベンダー編成』に乗車していると毎回聞けるかどうかわからないのだが、まさかのサプライズを受けた気持ちである。
 ちなみに。
 この『ラベンダー編成』に関しては専用の車内チャイムが用意されており、JR北海道の他の鉄道車両とは一線を画した車両として特別な存在となっている。
 函館本線を札幌に向かい走っていくラベンダー編成のラウンジ。
 車内は訪日観光客と自分、そして何人かの鉄道ファンだけであった。もう少しこの列車の認知度が浸透すれば、乗客も盛況になってくるのではないだろうか…と思うのだが、まずは富良野観光への国内需要がどれだけあるかにも注視したいところだ。

都市はすぐそこ

 フラノラベンダーエクスプレス。
 特別設定されたこの特急列車はある意味で先ほども記しているように『観光特急』としての位置付けであり、特急街道として北海道のメインルートを支えるカムイ・ライラックとは停車駅が異なってなぃる。
 富良野線の期間限定優等列車としての性格も持ちつつ、函館本線の駅を最小限に停車し通常の特急とは性格の異なる運用を行なっているのだ。
 停車駅は富良野を発車すると芦別・滝川・岩見沢・札幌となり滝川を発車すると圧巻の砂川・美唄の特別な通過の様子を楽しむ事が可能だ。
 そして、岩見沢を発車して函館本線は中間地点にして北海道随一の県庁所在地都市、札幌が近くなる。
 苗穂を通過している際の車窓だ。
 車内からキハ40形の特別塗装を観測した。
 奥にいるのはキハ283系である。翌日の石北本線への運用に備えての待機だろうか。車内の灯りが灯り、足を慣らしているようにも見える。
「あと5分少々で、終着、札幌に到着します…」
の案内。
 ごちゃごちゃに広げた充電の配線を纏めて、列車を降りる準備をした。

 札幌に到着。
 乗車してから車掌に自己申告をして以降、面倒さもあり充電物の管理もあったのでラウンジからは動かなかったのだが、割りかし多くの客が車内から降りてきた。
 写真は降車後、乗車記念に撮影した1枚。
 この中にも乗客と思しき客層の方が紛れており、さながら停車時間は撮影会のようになった。
 札幌でしばしの休息をした後に苗穂の運転所に帰り、次の富良野線直通運用に備える。
 札幌駅に入線した鮮明な紫色の特急形車両は一際目立ち、鉄道ファンの被写体として駅に佇む。
 自分は2回目の遭遇であったので、軽く撮影を済ませてそのまま駅のコンコースに向かった。
 高速バスで旭川に向かい、途中の滝川で少しの寄り道。そしてそのまま観光特急に乗車し札幌に戻る、なんとも虚無で忙しない時間であった。

ラベンダー編成の差異

 キハ261系5000番台ラベンダー編成…というのは、少しJR北海道の車両の中でも特別な存在となっている車両であり、少しよそゆきの雰囲気を残した車両だ。
 車内の銘板を見てみると、下に北海道のロゴマークがある。
 この車両は国・北海道の補助を受けて導入された車両であり無償で貸与されているのだ。
 JR北海道と車両の無償貸与の関係については、連載内で記しているのでまたご覧いただきたい。(宣伝かな、うん)
 しかし、JR北海道の車両ではなくとも実際に見ればキハ261系の一族としての姓を受けた以上は車両としての共通運用で生活しており、時々この統一された編成をバラされたり距離調整などで別の編成に組み込まれたりすることがある。
 特別な車両としての誕生。そしてまたある時には気動車としての性格を遺憾なく発揮し、北海道の広大な大地を今日もキハ261系5000番台・ラベンダー編成は支えているのだ。

 車両の特徴として、もう1つ。
 車両にはロゴが配されている。
  JR北海道ではなく、北海道の専用ロゴでありこの車両があくまでもJRの線路を走行し、JRと同一の性能を持ち同じ車両ではあるものの、保有先が異なっているという差異を見せている。
 車両の外装で分かる、ラベンダー編成の数少ない特徴である。

 最後に721系との共演を。
 この記録、いつまで撮影できるか分からないので本当に大事にしたいもんです。
 ラベンダー編成の表示は『回送』に変更され、店仕舞いの後に休息の準備は万端。
 最後の函館本線の乗車が、こうした面白い車両で本当に良かったと思う。
 また次は本格的に函館本線を本州寄りの函館から長万部に向かって乗車し、本格的な鉄道の長い長い長い旅として体験したいものである。

豪遊!!!〜実際どうなのかい?〜

 北海道といえば、やはりグルメ。
 はい、こういうのは何処のサイトにも。何処の雑誌にも掲載されているので最早説明は不要なんです。えぇ。
 北海道中を探し回れば、本当に肉に魚に野菜に色々な食材が美味で有名で、そして本州などに出張して物産展で触れられたりしますね。(最近見た北海道物産展では生きた毛ガニがそのまま生簀に入って出展されており驚きました
 ちょっと前の掲載では札幌の歓楽街・すすきの…に行きましたので『味噌ラーメン』を食しましたとさ。
 …無事に資金を確保した。
 と云う事で札幌駅内のビルに。
 ここで少しだけ、観光特急フラノラベンダーって呼ぶの面倒なので観光特急での車内で探りをかけていた寿司屋さんに。回転はするが、やはり北海道ならそう。『寿司』を食さねば!!!
 かなり前のネットラジオ…聞き覚えのある方は少なからずとして、TrySailという声優歌手グループがある。
 そのTrySailの番組で(しかもかなり昔だった)、こんな話を聞いた事がある。メンバーは3人いるのだが、3人の会話の中で
「北海道に行ったけど、魚介は苦手なのに『北海道の魚介は全然大丈夫なんだよね」
という内容の会話があった。
「これを確かめるしかない!!!」
そう思い、帰りはどれだけ高額でも寿司を食べて帰る事にしたのだ。というか海鮮系が少なかったのだが
 実際に、回転寿司で頼まない『えんがわ』をこの中には入れ、中にはあと2回ほど『ほたて』を混ぜた。地元・京都では絶対に選ばないようなラインナップで選択し食すと…
 あまり臭みや魚介独特の風味もなく、あっさり食せた。北海道の新鮮なフィルター…なのかどうかだが、やはり肥沃な自然を受けて育つ肉に魚は抜群の美味さだ。独特の魚っぽさを感じない、磯らしさが少しだけ抜けている…というのは北海道の魚介で感じる特徴かもしれない。
 偶々入店した店は偶然にもJR北海道の系列寿司店だったようで、駅近なのもあり多くの観光客が来店していた。
 カウンター席、テーブル席も埋まっている中、自分の横で寿司を食していた男女2人組も寿司の美味さに感動していた。
 観光系の客だったのだろう。
「まさか同じような客層で並ぶなんてね…」
そう思いつつ、寿司を脳内の電卓で計算し食べ進めていた。

 どれを取っても、隙がない。
 地元は京都で食するラインナップ、光り物にマグロ、サーモン。どれも新鮮でというか肉厚な中にしっかりと海産物の鮮度を感じる。
「最後には贅沢な時間だなぁ…」
なんて少し思って食べ、最後はマグロで締める。
 寿司屋入店前に預けた荷物を受け取り、最後はお会計。通常の回転寿司屋では10皿程度で2,500円近かった。
 少しだけ待ち時間は長かったが、美味い寿司を。北海道の魚介を少しだけ齧れた体験は本当に良かった。

閉館前に

 既にこの記事を記している間。
 寿司を食べ、この記念写真を撮影した今居るビル。エスタ札幌は閉館している。
 連載内でも記したが、丁度自分が北海道を訪問した時期は札幌駅前が『エスタ閉館』へのお別れムードいっぱいで何処か賑やかだったような記憶が残っている。
 自分にとっては最初で最後の経験になったこの入店。昭和っぽさ、ビルが長年生活に寄り添い札幌を支えたその様子をもう少し記録しておけば良かったと今では本当に悔やむばかりだ。現在はどうなっているのだろう。
 寿司を食べてビルをエスカレーターで下る最中。
 キッズプレイコーナー?らしき場所に面白い自転車があるのを発見した。
 721系と733系の自転車だ。専用のコース…そしてコース周りにはJR北海道の路線図が子ども向けに記されており、鉄道ファンとしてココロを揺さぶられる。

 同じコースの隅には、北海道標準の気動車としての階段を駆け上がるハイブリッド気動車、H100形の自転車も鎮座していた。
 そして横には733系。
 H100形に関しては行き先が『札幌』であるのだが、H100形が札幌を出入りする運用などあったのだろうか。(そう言ったら冒頭付近の南小樽で乗車したやつって)
 キッズコーナーの鉄道自転車を撮影し、再びエスタの階段を降りていく。
 閉館前ではあったが、最初で最後の札幌エスタを見れた事に、道民の生活の一部にお邪魔している感覚が感じられ嬉しかった。
 先ほどの寿司の方に戻るが、寿司の他にもソフトクリーム屋にステーキ屋に…飲食の幅がかなり広かった。

 エスタ閉館の文字を札幌駅の地下街では何回も見かけたので、最後に記念撮影を。
 この写真に写り込んでいる寿司屋にて北海道最後の晩餐を(また壮大な)食し、今回の旅は札幌で締める事になった。
 北海道の中心地、札幌で多くの道民たちを支え、交流に飲食に、買い物に。札幌の駅を見続けてきた商業施設のカウントダウンに立ち合い、最初で最後の時間を楽しんだ。

地下鉄は別腹!!

 どうして自分はこうも危ない橋を渡るのが好きなのだろうか。こんな話をしても仕方ないのは分かりきっているのだが。
 エスタ内部のエスカレーターを降りて、地上にたどり着く。『ST』ロゴが見えた瞬間、脳に余計なスイッチが入ったかのように
「札幌市営地下鉄もう1回撮りたいなぁ!!!」
という感情が湧いてきた。
 というわけで、南北線に再び乗車する。
 駅の入り口の時点でわかるこのレトロさ、札幌市営地下鉄の本当に好きな部分である。
 南北線は今後、新型車両を投入し五輪招致を再び狙っての接近メロディ…虹と雪のバラードは停止となったがこの開業した頃の昭和さ、平成らしさに関してはいつまでも札幌を訪れた際にそのままである事を祈りたいばかりだ。

 というわけで到着。
 撮影地構図ガイド…のようなサイトから幾らかの検索を仕掛けて、南北線の地下撮影駅として『平岸』を選択した。
 もう少し大通に寄っていれば、撮影の本数は幾分か稼げたような…ではあるのだが、そうは思ってもやはり見映えには逆らえないのであった。
 サイン類が本当にココロを擽る。
 この地下鉄はどうしてこうも魂を刺激するのだろうか。

 まずは1本目。
 入線を狙って撮影したのだが、入線に関しては失敗したので後方を狙って無理矢理暗くしつつもバックショットへ翻す。
 地下に吸い込まれていく南北線車両を捉えることができた。

 2本目。
 少し設定でビビって失敗を喫するなど。
 しかし代わり…?としてなのか、札幌の地下鉄独特の真ん中にレールを挟み込む方式で走行している事がよくわかる記録となった。
 前照灯が明るく道を照らすようにして、1枚。

 こちらもめげずにバックショット。
 全然こちらに関しては作品にもならない…というか、タイミングも画質も後悔に伏せる作品となった。
 掲載の為に取り込んだもので、半年近くの期間を経てようやく皆さんの下にお見せする。
 しかし、それに比例して…というのだろうか?
 行き先表示のフルカラーLED部、『麻生』の表示に関しては綺麗に浮かび上がっている。
 地下に吸い込まれる南北線を撮影し、チキンレースのような時間を札幌の地下で刻んでいた。
 南千歳に向かわなくてはならないのに、まだ性懲りなく撮影に伏せている自分。
 果たしてこの巨大な北国から離脱できるのだろうか??

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