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月刊『抽象的な歩き方』

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様々なフリー切符や長旅に出た記録の置き場。
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2024年12月の記事一覧

ACT.122『さらば、山岳よ』

ACT.122『さらば、山岳よ』

終端の顔ぶれ

 何度もここまでの連載で記したように、橋本から極楽橋までの区間というのは関西私鉄屈指の難所であり、50‰…すなわち、
『1000メートル進む毎に50メートルの勾配差が生まれる』
区間の連続である。
 そんな区間の終端は、こうして行き止まりの構造になっており、鉄道ファンや高野山への参詣客たちの記念撮影が出来る場所にもなっている。
 今回の冒頭の写真は、そんな記念撮影の可能な場所から撮

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ACT.121『聖なる終端』

ACT.121『聖なる終端』

さらば、秘境

 大阪から最も近い秘境駅として訪問した紀伊神谷駅。そんな紀伊神谷駅から去る時間もあと少しに近づいていた。
 列車のアクセスが1時間の中で何本もしっかり拡充している。そんな事への感謝をしっかりと思えるのも、秘境駅ならではの感情だ。22時まで列車を走らせているとはいえ、こうした鉄道だけの閉鎖された空間を訪れると普段利用している交通機関もまた違う特別な乗り物に思えるのだから、秘境駅という

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ACT.120『上昇軌道』

ACT.120『上昇軌道』

駅と歴史

 赤備えに身を包んだ2300系の2両編成が橋本に下山していった。
 列車の居なくなった荘厳な空気の無人駅は、いかにも寂しい。
 かつてこの駅を拠点に高野線山岳区間が発展した時期は、多くの乗客や集落の住民で賑わい鉄道は1つの拠点になったのだろう。
 そんな威容も、今は盛衰の歴史として時代の1片に組み込まれ久しい。
 自然の織成す澄み切った空気が、自分の中に刻まれている四季の感覚を呼び覚ま

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ACT.119『難所』

ACT.119『難所』

迎撃

 しばらく、真紅のトレッスル橋である丹生川橋梁の眼科を流れる渓谷を眺めて、次の列車を待機する。
 と、ここで次にやってくるのが観光列車の天空だ。
 前回、前々回の分で九度山から下山していく姿を見届けた列車であり、橋本から再び高野山・極楽橋に向かうところをこの名所で迎え撃つというわけだ。
 個人的にここまで歩いて想定外だったのは、全然茂みだらけで列車を見渡せる環境が出て来なかった事。
 ここ

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