1冊目である「諦める力」が大ヒット後、「逃げる自由」は為末 大氏の続編とも言える2冊目。相変わらずタイトルの付け方は絶妙だ。
「諦める力」には意外性があって、アスリートだけでなく夢を追いかける全ての人々の参考になる本だと感じたけれど、人生相談形式になっているこの2冊目は、最初は、まあ実践編としてこんなものかなという感想で読み進めていた。
ところがどっこい。
「過去の栄光が忘れられず、キャリアに行き詰まっています」という表題に対する答えが傑出している。エリートして歩んできた質問者がキャリアに行き詰まり、「これまで栄光の道を歩んできたのでプライドを曲げることができません。どうしたらよいでしょうか」と相談している。
それに対する著者の回答が鋭い。
回答全てをここで書き写すことはできないけれど、著者の考えは以下に集結されると思う。
このゼロリセットの考え方は、人生でものすごく大切なコンセプトだ。
さらに著者は続ける。
「あのときを忘れられるかどうかに尽きる」
それは含蓄のある言葉だ。
言い換えれば「ゼロリセット」
華族の未亡人
これで思い出したエピソードがある。第二次大戦の終戦の焼け跡の日本で、
昔は華族の一員として豪勢な暮らしをしていた、ある婦人がいた。
夫亡き後、敗戦後の焼け野原となった土地で、彼女は生きていくために靴磨きを始めた。
上等の着物しかもっていなかったので、それを着て橋のたもとで靴磨きをはじめると、「上品なべっぴん」が靴磨きをしている、とうわさになった。
その儲けたお金で彼女はバラックを改装した小さな飲み屋をはじめたら、それもまた繁盛した。
彼女はプライドを捨てて、「自分にできること」をしたのだ。
華族であった自分を、さっと切り替えて生きるための行動に出る。
この思い切りと行動力がゼロリセットの力だ。
スランプを超えていく
話を戻そう。さらに著者はスランプに対しての見解を述べている。
つまり、スランプから抜け出して、「強運」をつかむための必要十分条件は「逆境」を通り過ぎることではないのか。それはなにも逆境に向かっていくことではない。時にはスルリと交わすことも大切だ。
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