【読書録】『神メンタル「心が強い人」の人生は思い通り』星渉
売れている自己啓発本で、ちょっと興味を引いたものは、ちょこちょこと読んでいる。この手の本には、読みやすい反面、内容が薄っぺらいものも多いと感じる。だから、ざっと読んでみて自分の心に刺さらなかったら、さっさとブックオフやメルカリで売ってしまう。
こちらの本は、2018年に出版されたベストセラー。カバーのイメージからすると、ちょっと軽薄な感じがしたため、正直言ってあまり期待していなかった。しかし、よい意味で期待が裏切られた。
今後、備忘を兼ねて、心に残った本については、読書録をnoteにあげていこうと思う。
要約
(以下、ネタバレご注意)
思い通りに生きる公式とは、①目的地×②手段×③メンタル。だが、目的地(①)が明確であれば、メンタル(③)を強くすることで、手段(②)は自動的に見つかる。
そして、今この瞬間を、今のままの自己評価ではなく、自分の基準を上げ、未来の自己評価で生きるようにすると、脳が未来の自己評価と現実のギャップを埋めるため、勝手に現実を変える行動を指示し、行動が変わり、自動的に物事が実現していく。
参考概念
「損失回避の法則」:損した時の痛みは、利益の2倍強く感じる。得られる利益が2倍以上ないと行動に移せない。
「保有効果」:自分が持っているものを実際の価値よりも高く見積もってしまう。
「サンクコスト」:過去にかけた時間、労力、お金にとらわれて合理的な判断ができない状態。
「確証バイアス(偏見)」:今のままの自分が正解、という確かな証拠を集めてそう思い込む。
「心理学的ホメオスタシス(心理学的恒常性)」:脳の変化を止めようとする動き。変化をジャマする障害物は、自身の脳。
「カラーバス効果」:脳が認識すべき情報を選んでいる(「赤いもの」を探していたときには「黄色いもの」は全く目に入らない。)。
「スコトーマ」:心理的盲点。あるべき情報が見えていない状態。
目的地の設定方法
①完了形で、②測定可能な形で、③制限をかけないこと。やる理由を明確にする。設定できれば、完成図の情報を繰り返し見て、「海馬」(記憶を司る脳の一部)をだまし、「生きていくために不可欠な情報」として記憶させる。今ある習慣に新しい習慣を加えて、ちょっとだけやるところから始める。
神メンタルを作る方法論
「アファメーション」:肯定的な言葉による宣言。紙に書き出すのがよい(紙に書き出すときの指の動作は1万種類だが、キーボードでタイプする指の動きは8種類で、脳に与える刺激が圧倒的に違う)。宣言を毎日繰り返す。「自分にはできない」という思考をやめる。
不安や緊張している自分を認める。頭の中で考えるのではなく紙に書き出す。「メタ認知」能力(認知心理学の用語)=「自分自身の認知活動を第三者の客観的視点から理解し、コントロールする力」を鍛える。そして、負の感情に陥ったときは、「今」自分がなすべきことに集中する。
自信は後天的に作り出すことができる。自分で決めたことを自分で「できた」と認識することを積み重ねる。できることが増えることで、自分が好きになり、自分を知り、自分を愛し、自分の未来を描けるようになる。
すべての出来事について、反射的、機械的に、常によい出来事であると「フレーミング」する(起きた出来事に対して意味づけをする心理学の言葉)。「ツイてる」などの気持ちいい言葉を口癖にする。人間の脳は自分が設定した理由を探す力があるので、結果的にうまくいく。
試してみたいことは即実行する。人は忘れる。「エビングハウスの忘却曲線」。人は20分後には42%を忘れ、一時間後には56%、1日後には74%。1週間後には77%、1か月後には79%を忘れる。最終的には20%のことしか頭に残らない。
お金だけでは幸せになれない。「富の限界効用」=「贅沢に慣れると幸せを感じなくなる」。「快楽順応」=人は贅沢だと思っていたことにもすぐに慣れてしまい、なかなか幸せを感じにくくなる。
感想
メンタルが強い人が成功しているのは、周りの実例を見て分かっていたが、それを科学的に説明してもらえて腹落ちした感じである。誰でも読みやすく平易な言葉で書いてあるのに、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学などの知識がベースとなって、具体的な方法論を展開しているところが説得的で、よくある巷のハウツー本とは一味違うと思った。
私も、きっちりと目的地を設定して、目的地に到達した自分であればどういう行動をするのか、という視点を持って日々を過ごしていこう、という気持ちになった。
実は、上記の「カラーバス効果」のくだりを読んでいるとき、私はちょうどお風呂に入っていた。私は、湯船に浸かって本を読むのが好きなのである。後で調べると、カラーバスとは、color(色)をbath(浴びる)という言葉からきているらしい。bathつながりとは、奇遇だ。
まず、「5秒で周りの赤いもの数えろ」という。はい、トリートメントの容器が赤い。ひとつ数えた。すると次は、「そのまま本から目をそらさないで、今度は、黄色いものが何個あったか答えろ」ときた。意表を突かれたが、黄色いものか…。いや、特に何もなかったよな。と思った。そして顔を上げると、なんと、そこには、大きな黄色のスポンジがあった。
ずっと前からそこにあるのに、何でこれを思い出さなかったんだろう。狭い浴室である。そのスポンジは、一瞬で視界に入る距離にあり、「黄色のものを数えろ」と言われていたら、真っ先に目に留まっていたはずだ。
これは、脳が認識すべきものを選んでいるためで、未来軸ではなく現在軸でものを見ている限り、変化のチャンスも機会も、身近にあったとしても、察知したり認識したりできない、ということを説明するための例えだが、これがとても腑に落ちた。
あと、手前みそであるが、私は、別稿で書いたように、日記を手書きで書く習慣があり、その効用として、つらさを和らげたり、嬉しさを倍増させたりすることができると思っていた。そして、この本では、上記で触れた「アファメーション」「メタ認知」というくだりで、手書きの、メンタルに及ぼす有用性に触れている。私の思っていたことに科学的な説明を加えてくれているようで、とても嬉しかった。