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COLD BREW

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都会の一角にある純喫茶。先代からの珈琲の味と香りを頑なに守り続ける男。彼の周りを織りなす女性たちの物語。
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記事一覧

COLD BREW 36

 既に、秒針は止まっていた。  それを確認して凍りついた。  無理もない。大晦日から元旦に…

百舌
4日前
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COLD BREW 35

 おはよう、の声を耳元で聴いた。  枕の上にその顔が微笑んでいた。  羽毛布団の中からずる…

百舌
9日前
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COLD BREW そろそろ開店か⁉️

 さて送付した履歴書の結果がそろそろ出ます。  一次選考結果が今週からぽつぽつ郵送される…

百舌
12日前
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COLD BREW 34

 ことりと、腕時計を置いた。  スイスから届けられた時計。  金無垢のケースの中身は、精緻…

百舌
13日前
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COLD BREW 33 #はじめて切なさを覚えた日

 残像が折り重なっている。  その席にどれ程の愛着があるのか。  厨房内に立つ僕からすると…

百舌
3か月前
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COLD BREW 32

 扉の呼び鈴が、乾いた音を立てた。  僕はオーヴンの掃除をしていた手を止めて、膝立ちの体…

百舌
3か月前
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COLD BREW 31

 剥落の日々を送った。  通夜の案内すらない。  近親者で織りなす旧家の持つ嗅覚で、僕は弾くべき存在であった。  最期の瞬間まで祐華を看取ったとはいえ、法律上では赤の他人であって、親族からすれば腹に一物ある部外者という認識だろう。  彼女の窮乏を知り、そしてその病状を知り、それでも敢えて冷淡で在り続けた。彼らが密葬において、祐華の亡骸に涙したであろうその一滴でも、生前に流したことはあるのか。  銀行口座には再び300万という数字が印字されていた。  弁護士から連絡があり、銀行

COLD BREW 30

 その絵は窓辺に掛けてある。  呼び鈴をつけた彫刻のある木製扉、その隣にはステンドガラス…

百舌
9か月前
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COLD BREW 29

 祐華は自身で立てなくなった。  盛夏の時期で、世間はお盆期間中だった。  その朝、彼女の…

百舌
9か月前
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COLD BREW 28

 祐華の制作が始まった。  彼女の横顔にぴんと張りがでたように思える。  時間を持て余して…

百舌
1年前
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COLD BREW 27

 驟雨に目が覚めるようになった。  機関銃のように、間断なく降り注ぐ水滴が屋根瓦を乱暴に…

百舌
1年前
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COLD BREW 26

 祐華は同居を望んではいない。  しかし半ば強引に連れてきた。  僕が10年近く住んだ、この…

百舌
1年前
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COLD BREW 25

 祐華の退院の日が迫っていた。  その時期に主治医に呼ばれた。  前回の面会時に相談されて…

百舌
1年前
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COLD BREW 24

 この傷を埋めるのに、僕では不足か。  口から零れ落ちた。その瞬間に顔が強張った。ただしそれを軽口で否定はしない。 「何それ、今更、求婚 なの?」 「ああ、そうかもしれない」  その病室には6床あったが、気配があるのは4床でしかない。身じろぎをしている音、席を立って外に歩くスリッパの音。息を凝らしていた影が緊張に耐えかねてか、密やかに身動きを始めた。  求婚するには、確かに相応しくない場所だ。  人間にはそれに聞き入るタイプと、遠慮をするタイプとあるらしい。 「それでお仕舞な