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全国自然博物館の旅【54】北九州市立いのちのたび博物館

海外の自然博物館を訪れたことのある方なら、桁違いの大迫力展示に驚嘆した経験もおありでしょう。しかし、我が国にも、世界と渡り合える超大スケールのスーパー博物館がいくつも存在しています。
北九州市にも、とてつもない発見と感動にあふれた巨大学術施設が立っています。筆者が心の底から激推しする博物館ですので、関心を抱かれた方は、ぜひ来館していただきたいと思います。


超圧巻! 九州最大クラスの自然博物館!!

自然博物館は数あれど、規模で測るならば北九州市立いのちのたび博物館は確実に全国で5本の指に入ります。九州最大クラスどころか、西日本エリアで最大級の規模! 全国レベルで見ても、ここまでスケール感の大きな博物館はなかなかありません。
本館には生物マニアの誰もが憧れ、足を運んでみたいと思うはずです。無論、筆者もその1人。博多からJR九州の鹿児島本線に乗って、ノリノリで小倉方面へと向かいました。

博物館の最寄り駅はJRスペースワールド駅。北九州市の中心部・小倉に近いので、アクセス環境はかなり良いです。

スペースワールド駅で降りたら、そのまま南側へと向かいましょう。道路を挟んで、イオンの反対側に位置する大きな建造物こそ、北九州市立いのちのたび博物館です。周辺は見通しのいい緑地が広がっており、とても清々しい心地になれます。

博物館の近くにはイオンなどの店舗が集まっています。観覧前後のランチにぴったりですね。
清々しく美しい緑地をゆったり歩きましょう。その先に、九州最大クラスの博物館が待っています。

いよいよやってきました、九州最大級の自然博物館。全国規模のスケールを誇る超学術展示施設ですので、すでに期待で心臓がばくばくしております。本館のハイパー展示を観覧し、地球生命の壮大な旅の記憶に触れてみましょう!

北九州市立いのちのたび博物館。自然科学の好きな人なら、絶対に訪れるべき究極の学術施設です
入口のマットを見て、思わず「欲しい!」と思いました。入館前からテンションは最高潮に上がっています。

「いのちのたび」を体験し、地球を学ぶ!

巨大古生物たちがひしめく超大展示ホール

百聞は一見に如かず。実際に足を運んで、国内屈指の大スケール展示を体感してみれば、本館の偉大さがよくわかります。
メインの展示ホール「アースモール」へと出れば、そこはもう太古の地球への入口です。待ち受けるのは、強大なティラノサウルスを筆頭とした古代のスターたち。全ての来館者が、一瞬にして自然科学の世界に引き込まれます。

ここから、壮大な「いのたのたび」が始まるのです!

メイン展示ホール「アースモール」。人々を圧倒するのは、巨大な恐竜たち! スケール感の大きさは国内随一と言えます。
海外の大型自然博物館にも負けない巨大展示空間。上下左右、至るところに驚異の学術資料がいっぱいです!
最強の陸上肉食動物、恐竜の王者ティラノサウルス! 本骨格は「スー」と呼ばれる大型個体の複製です。

本館は長大なアースモールを奥へと進みながら、生命史を時系列的に体感していく流れとなっています。歩みを進めるに伴って時代が新しくなり、生命がどのような試練を経て発展していったのか、数々の学術資料で仔細に学べるようになっています。
はるかな超古代の地球。原初の生命の発生と進化を見届けてください。

生命の旅の学習スタート。アースモールの壁側には左右両方とも展示コーナーがたくさんありますので、あますところなく観覧しましょう。
ストロマトライト。太古のシアノバクテリアの光合成活動によって造られた、層状の堆積構造です。20億年以上も前の超古代に、生命は酸素を産生し、地球環境を変えていったのです。
古生代の海で繁栄した巨大なオウムガイ類(チョッカクガイ)の仲間。人間よりもはるかに大きな種類が存在しており、まさに古代のクラーケンです。
翼開長70 cmにも達する大型昆虫メガニューラ類の模型。石炭紀において、巨大な昆虫たちが次々に出現しました。

無脊椎動物に負けじと、脊椎動物たちも進化を加速させていきます。水域生態系にて栄えた魚たちは淡水域へ進出。新たな環境にて両生類へと進化し、脊椎動物はついに上陸を果たします。
数えきれぬ困難を乗り越えて、生き物は新しい世界へと広がっていきました。生命の可能性は無限大ということを、本展示で改めて感じられます。

古生代デボン紀の肉食魚類ダンクルオステウスの頭部。顎の形態や関節構造は、現在の魚とは異なっています。
ペルム紀の軟骨魚類クセナカンサス。淡水に棲む捕食者だったと思われます。
ペルム紀の両生類スクレロケファルス。立派な四肢を獲得したことで、脊椎動物は水中から陸上へと進出したのです!
ブラジロサウルス。古生代において爬虫類の繁栄は加速し、様々な種類を生み出しました。

生命は幾多の試練を乗り越え、中生代にさらなる躍進を遂げます。地球史上屈指の大繁栄を遂げた強大な主竜類、我らが恐竜たちの登場です。他の生物群を圧倒し、地球各地で栄えた恐竜は、中生代どころか地球の全時代を通じて陸上生物の絶対王者と言えます。
我々の想像以上に驚異的な強さを有する恐竜たち。立ち並ぶ骨格から、彼らの桁違いのパワーが伝わってきます!

全長35 mのディプロドクスを筆頭に、パワフルな恐竜たちが大集合! みんなかっこよくてテンションが爆上がりです。
頭部に独特な突起を有するクリョロフォサウルス。南極の地層から発見された、ジュラ紀前期の中型肉食恐竜です。
剣竜類ステゴサウルス。肉食恐竜が強くなる度に、植物食恐竜も強大に進化していきました。
奥に並ぶのはティラノサウルスとギガノトサウルス。両者とも全長12 m以上に成長する特大の肉食恐竜です。
パワフルなトリケラトプス。ティラノサウルスと同時代に生きていた有名な角竜類です。

陸上を恐竜たちが支配していた頃、天空では別の「竜」たちが栄えていました。彼らは、空飛ぶ爬虫類こと翼竜。鳥やコウモリに負けない高度な飛行能力を有し、中生代の空を支配していました。
彼らのかっこよさと多様性に、多くの古生物マニアが虜になっています。本館の広大な展示空間には翼竜の飛行ポーズ展示がベストマッチであり、太古のワイバーンたちの勇姿に強く感動させられます。

中国産の翼竜ズンガリプテルス。高位置に飛行ポーズで展示されています。
翼開長5.5 mもの雄大な翼を備えるケアラダクティルス。彼らの姿を間近で感じるならば、上階の展望通路から見てみましょう。
ジュラ紀後期の翼竜ソルデスの化石レプリカ。なんと、体を覆う毛の痕跡が見つかっています
小型の翼竜プテロダクティルス。軽くて丈夫な体、優れた飛行能力を活かして、翼竜たちは大繁栄しました。

中生代には、水域にも巨大な生き物たちの姿がありました。代表的な種族は、モササウルス類や首長竜などの海洋爬虫類です。当時の水域環境は、現代の海とは生物相が大きく異なっていました。
かっこいい古代の海洋生物のダイナミックな展示。誰もが迫力に圧倒され、関心を抱くことでしょう。

強大な海洋爬虫類ティロサウルス。よく勘違いされますが、彼らは恐竜ではなくトカゲ類に近い仲間です
ティロサウルスと同じモササウルス類の頭骨。この大きな顎を駆使して、他の海洋生物を捕らえていました。
首長竜タラソメドン。長い首を活用して、海中の魚を効率よく捕食していました。
中生代の水域には、巨大な魚も多数生息していました。本種マウソニアは全長3 m以上にもなるシーラカンス類です。

太古の海の生命といえば、多くの人々は真っ先にアンモナイトをイメージされるかもしれません。本館のアンモナイト展示は誠に秀逸であり、彼らの多様性と身体構造、さらに進化について明瞭に学べます。展示コーナーを一巡すれば、アンモナイトについてのかなりの知識が身につきます!

アンモナイトの展示コーナー。化石マニアの血がさらに騒ぎます!
とっても大きなパキデスモセラス。巨大アンモナイトの化石にタッチできる体験展示です。
殻の内部構造を学べるテトラゴニテスの切断標本。アンモナイトの殻は細かい区画に分かれており、それらをつなぐ「連室細管れんしつさいかん」が外側の壁沿いに通っています。
アンモナイトの口の化石? イカやタコと同じように、アンモナイトも硬いクチバシ状の顎を備えています。
アンモナイトの進化について、化石標本とキャプションで深く学べます。本種アネトセラスは原始的なアンモナイトであり、殻の渦巻き構造が後代の種類とは異なっています。

中生代末期の環境激変の影響により、鳥類以外の恐竜は衰退の道を歩むことになります。次なる新生代では、恐竜に代わって、哺乳類が大いになる繁栄を始めます。陸や海に拡散した哺乳類は多様な種類を生み出し、現代の王朝へとつながる礎を築いていくのです。
アースモールの奥では、多種多様な古代の哺乳類が大集合! どの子もとってもかっこよくて、私たちを鮮烈に魅了してくれます。古代にはどのような哺乳類王国が広がっていたのか、豪華な展示を見て学びましょう。

立ち並ぶ古代の哺乳類の骨格。新生代に入ると、恐竜に代わって哺乳類が繁栄するようになります。
体重3 tにも達するエレモテリウムの骨格レプリカ。約150万年前に生きていたオオナマケモノ(現生のナマケモノに近縁な哺乳類)の一種です。
がっしりしたブロントテリウム。サイに似ていますが、系統的にはウマに近い哺乳類です
かっこよく身構える肉食哺乳類スミロドン。「サーベルタイガー」と呼ばれるネコ科の一種です。
頭上には、古代のクジラ類の骨格が遊泳ポーズで展示されています。「古鯨類こげいるい」と呼ばれる大昔のクジラたちは、現生種とはかなり外見が異なっていました。

アースモールにはダイナミックな展示標本がたくさんあって、できれば全てご紹介したいのですが、あまりにも数が多すぎて書面ではとうてい網羅できません。ぜひとも、現地にてこの大スケールを体感して、太古の生命と驚異的な出会いを果たしてください。きっと、この上なくパワフルな迫力に魅せられるはずです。

最大最強の古代サメことメガロドンの大顎。アースモールには、このような大迫力展示がいっぱいです!

北九州の恐竜たちが現代に復活!

北九州では実に様々な古生物の化石が発見されており、まさしく化石の一大産地。なんと恐竜の化石までも見つかっており、はるかな太古には、想像を絶する大恐竜王国が福岡にも存在していたのです。
本館の体験展示ゾーン「エンバイラマ館」では、古代の北九州をイメージした大型ジオラマが設けられています。リアルな古生物たちの模型、大迫力の音響演出、プロのスタッフさんの濃密な解説によって、来館者は太古の地球へとタイムスリップできます。まさに究極の体験展示ですね!

エンバイラマ館の精巧なジオラマ展示。こちらは約3億年前の北九州の海が舞台であり、現代には存在しないユニークな海洋生物たちに出会えます。
白亜紀の北九州をイメージしたジオラマ。プシッタコサウルス類をラプトルの仲間が狙っています。
ワキノサトリュウの復元模型。北九州市で発見された白亜紀前期の肉食恐竜です。
巣を見守るイグアノドン類。北九州及び周辺地域では数々の恐竜たちが発見されていて、巨大な恐竜王国があったことを示唆しています。
長大な首を備えるマメンチサウルス類。博物館スタッフさんの解説と臨場感満点の音響演出によって、来館者は恐竜たちの世界へ一気に引き込まれます。

生き物好きにとっては、マニアックな古生物の立体造形を拝めることが楽しみ。特に、ディロングやミクロラプトルなどの羽毛恐竜の模型との対面は、恐竜マニアにはたまらなく嬉しいと思います。精巧な古生物模型を見つめながら、太古の北九州の環境を想像してみてください。

羽毛をまとう小型肉食恐竜ディロング。こう見えてティラノサウルスに近縁な種類です。
小型肉食恐竜ミクロラプトル。後足にも翼状の羽毛が生えています。
高所で鳴いているのは翼竜ズンガリプテルス。頭部のトサカ、湾曲したクチバシが特徴です。

お次は学術標本とキャプションにて、北九州の古生物学をたっぷり学習しましょう。本館の「リサーチゾーン」では北九州及び周辺地域の標本が展示されており、環境や生態系の変遷を時系列的に知ることができます。古生物マニアにとっては、まさに宝の山のような展示区画です。

太古の北九州を学ぶリサーチゾーン。この大地には、恐竜をはじめ様々な古生物たちの楽園が広がっていたのです。
たくさんのキャプション資料で、北九州の生命の歴史を解説。壮大な地球の営みを深く学びましょう。
宮崎県で発見されたシルル紀のクサリサンゴ。約4億3000万年前の地層から出土しており、九州で最も古い化石の1つです
古生代石炭紀のオウムガイ化石を含む梅花石。約3億6000万~約2億5000万年前、北九州には生命豊かな暖かい海が広がっていました。
小倉地区の白亜紀の地層から発見されたカメ類の甲羅。当時の肉食恐竜たちに警戒しつつ、水辺で暮らしていたと思われます。

筆者の視線を強く引きつけたのは、北九州から出土した数々の魚類化石です。北九州の大地には「脇野亜層群わきのあそうぐん」という地層が分布しており、白亜紀前期の湖の淡水生物が数多く眠っています。ここでは大発見のオンパレードが巻き起こっており、新種として記載された魚類もたくさんいます!
そして、さらにすごいことに、多くの種類において、完模式標本(論文で新種記載される際に使われる標本)が展示されています。古生物マニアが心の底から大喜びするほど豪華で貴重な標本のラッシュ、しっかりと目に焼きつけましょう。

北九州で発見されたチュウシュンイクチスの貴重な標本。脇野亜層群からは、非常に多種多様な淡水魚の化石が出土しています。
北九州の地名を冠したワキノイクチスの化石。新種記載のもとになった完模式標本が展示されています!
ピラルクやアロワナの祖先とされるアオキイチクス。これも完模式標本、すごすぎる!!
ユンカンイクチスの完模式標本。復元図と共に展示されているので、魚たちの形態的特徴を理解できます。

恐竜ファンの皆様、お待たせしました。北九州で発見された恐竜の登場です!
化石は全て尊い学術的価値を秘めていますが、恐竜化石は世間にとってのインパクトが非常に強く、地域の誇りにさえなりえます。本地域からはかっこいい大型肉食恐竜も発見されており、恐竜マニアから強い憧れの念を集めています。ご自慢のスーパースターたちとの対面に、筆者も大興奮しました。

肉食恐竜ワキノサトリュウの歯牙化石レプリカ。白亜紀前期の北九州において、生態系の上位に君臨していたと思われます。
ワキノサトリュウの頭部模型。全長は10 mクラスに及んだと考えられます。
北九州に近い下関市にて見つかったイグアノドン類の足跡。「鳥脚類ちょうきゃくるい」というグループに属する植物食恐竜です。
小型の植物食恐竜プシッタコサウルスの全身骨格。白亜紀前期の東アジアに生息していた恐竜であり、北九州に棲んでいた可能性もあります。

北九州では、新生代の動物化石においても、数々の大発見が成し遂げられています。ペンギンモドキの異名を持つ巨大な海鳥コペプテリクス、良好な保存状態で見つかった約3000万年前のヒゲクジラ類、そしてゾウ類やサイ類などの大型陸上哺乳類。濃密な展示解説によって、かつて北九州に存在したメガファウナの実像に迫ることができます。

北九州で発見された巨大な海鳥コペプテリクス。ペンギンのような姿をしており、海の中を巧みに泳ぎ回っていました。
ヤマトクジラ。約3000万年前の海に生息していたヒゲクジラ類です。北九州の海洋の古環境は本当に興味深いですね。
マツガエサイの下顎化石のレプリカ。新生代後半の北九州の大地は、サイやゾウがひしめく動物王国だったのです。
トウヨウゾウの牙の化石。九州大学の探検部より寄贈された標本です。

リサーチゾーンは古生物マニア垂涎の豪華な区画。北九州の生命の歴史を通じて、超壮大な地球史に想いを馳せることができます。本当に幸せすぎる学びの時間となりました。

リサーチゾーンには膨大な学術情報が満ちています。太古の北九州の秘密、徹底的に探りましょう。

美しき生態系が広がる現代の地球

永い地球史をたどり、来館者は現代へ戻ってきました。進化のバトンは現在の地球生命へと手渡され、「いのちのたび」はここからも果てしなく続いていきます。
アースモールの奥までたどり着くと、現生動植物の学術展示がスタートします。現代の地球に暮らす生命の多様性と生態、本館にてたっぷり深く学んでください。

アースモールの最奥部から、現代の生き物たちの展示が始まります。ここからは、観覧を進めながら徐々に上階へとあがっていきます。
全長3 m以上にも及ぶウシマンボウの剥製。現代の海にも巨大生物はたくさんいるのです。
大型博物館ならではの膨大な展示標本数。地球上の生物の多様性や生態を細かく学べます。
あらゆる生物群に関して、解説資料が充実しています。標本と合わせて、キャプションや写真なども隅々まで学びましょう。

アースモールを過ぎると、本館の最奥部「生物の多様性館」に突入します。本区画では膨大な数の生物標本が展示されており、現生動植物の多様性について網羅的に学ぶことができます。脊椎動物の剥製はどれも美しく、生き物たちの洗練された姿を味わい尽くせます。展示空間は1階から3階までの吹き抜けとなっていますので、上下階とも余すところなく観覧し、生物多様性をとことん学習しましょう。

本館最奥部の展示区画「生物の多様性館」。地球上の生き物の網羅的な標本展示を味わえます。
立ち並ぶ哺乳類の剥製標本。古代と同じく、現生動物は多様性に富んでいます。
鳥類の剥製展示。飛べない陸上鳥類からかっこいい飛翔性の鳥まで、幅広い種類が展示されています。
イリエワニの剥製。大型動物さえも捕食してしまう強大なクロコダイル類です。
壁面には魚類の剥製が多数設置されています。本種バショウカジキは、時速100 km以上の超スピードで泳ぐことができます

昆虫大好きな筆者としては、魅力的な節足動物たちの展示も見逃せません。動物界全体の約80%を占める節足動物の世界は、まさに多様性の宝庫。ユニークな姿や生態を備える仲間たちが目白押しです。鮮やかな工夫が施された展示には、誰もが魅せられてしまうことでしょう。

床面に設置された節足動物の展示ケース。生命史の大先輩である彼らは、海から陸まで、あらゆる環境に適応しています。
芸術的に並べられた鱗翅類(チョウやガの仲間)の展翅標本。大型種と小型種の配置が絶妙ですね。
大型昆虫の標本展示。ヨナグニサンの雄々しき翅はいつ見てもかっこいいですね。

続いては、北九州の地域自然の学習です。
3階の展示エリア「自然発見館」では、岩屋海岸・紫川・平尾台・曽根干潟など、現地の著名な自然環境が総合的に紹介されています。リアルなジオラマに配された剥製・模型展示は視覚的インパクトが強く、

3階展示エリア「自然発見館」。北九州の自然の体系的な学習、とても楽しみです。
山田緑地(小倉北区)の初夏の林をイメージしたジオラマ。人が里山の環境整備を行うことで、現地の生態系も豊かに保たれます。
平尾台(小倉南区)の初夏の草原を再現。希少種を含めて、とても多様な動植物が生きています。
北九州市の東に広がる曽根干潟のジオラマ。なんとこの干潟にはカブトガニが生息しており、学術的に極めて重要な環境と言えます。
ジオラマは、あらゆる角度に学習ポイントがあります。スナガニの巣穴模型のように、地形の断面図に秘密が隠れていますので、秘密を探しながら楽しく学びましょう。

そして、生き物好きが期待するのは、現地産の多様な生物標本。豊かな森と海を擁する北九州は、雄大な生命の宝庫です。彼らの生態と生息環境を学んでいくと、北九州の大自然がとても尊く愛しく思えてきます。

北九州の干潟に現れるズグロカモメの剥製。成鳥の個体数が約7000羽しかいない超希少種であり、本館では保護のための研究が進められています
オオウラギンヒョウモン。博物館で昆虫標本を見ると、とても心が癒されます。
海浜植物ハマボウフウの乾燥標本。地上に出ている植物体は小さく見えますが、地中では長大な根をはっています。
コウイカの「貝殻」。頭足類は広い意味で言えば貝類の仲間ですので、殻を有している種類がいるのです。

豊かな北九州の生態系に触れたら、環境問題について深く学習していきましょう。開発による環境破壊、外来種侵入による在来種への影響ーーこれらの問題は、我々人類が原因となっています。不幸な生き物を増やさないために、そして地球の尊い自然環境を守るために何が必要なのか、展示観覧を通してじっくり考えていただきたいと思います。

人類が環境に与える影響についての解説資料。私たち1人1人が考えなくてはならない問題ですので、全てのキャプションをしっかり読ませていただきました。
シチメンソウの液浸標本。北九州から絶滅した植物であり、彼らの悲劇を繰り返してはなりません。
北九州にやってきた外来種ソウシチョウ。生態的地位の近いウグイス類に影響を及ぼしています。
外来種からの食害を受けたカスミサンショウウオ。同様の事例を増やさないために、(外来種のみならず)一度飼った生き物は最後まで面倒を見なくてはなりません。

本館には生体展示コーナーもあります。国内外の様々な生き物たちが飼育展示されていて、大いなる癒しと学びを与えてくれます。標本のみならず、生体の観察もさせていただけるとは誠に豪華。自然環境の中へ飛び込みたい気持ちが増してきますね。

生体展示コーナー。様々な種類の水棲生物や陸上生物と出会えます。
最小クラスの囓歯類カヤネズミ。イネ科の草を巧みに編んで、頑丈な「家」を作ります。
可愛くうずまくるシラホシハナムグリ。博物館の周辺でも、よく観察することのできる昆虫です。
チリメンナガクビガメ。首を動かしながら泳ぐ姿が可愛いですね!

地球と共に歩んだ「いのちのたび」は、本当に素敵な体験となりました。現生動植物・古生物問わず、全ての生き物好きに全力でオススメしたい博物館です。
本館での学びを通して、地球と生命への知的好奇心がさらに強くなるはずです。この感動と迫力を体感するために、筆者は必ず再び来館します!

何度も来たいと思えるスーパー博物館。地球が存在し続ける限り、「いのちのたび」は終わりません。

北九州市立いのちのたび博物館 総合レビュー

所在地:福岡県北九州市八幡東区東田2-4-1

強み:国内屈指のスケールを誇るアースモールの大型骨格標本展示、解説つきの大型ジオラマなど五感で学べる各種体験展示、現生動植物・古生物を問わず多種多様かつ膨大な学術標本のラッシュ

アクセス面:JR九州鹿児島本線のスペースワールド駅から、わずか徒歩3分! アクセスは極めて容易であり、来館者にとっては非常に嬉しいところです。空路で福岡県に来た旅行者の方は、JR博多駅から特急ソニックに乗って小倉駅で降り、そこから各駅停車でスペースワールド駅へ向かいましょう。西日本にお住まいの方は、山陽新幹線で小倉駅に向かい、そこから各駅停車の車両に乗り換えてください。また、博物館は北九州都市高速のインターからとても近く、九州にお住まいの方は車で来館されるのも大いにありです。

全てが最高以上の最強な九州屈指の大型自然博物館。生き物好きにとっては憧れの学術施設であり、全国の生物マニアから圧倒的な指示と人気を集めるスーパー博物館です! 圧巻の展示内容はまさに桁違いのスケールであり、子供も大人も関係なく一発で本館の魅力に取りつかれるでしょう。特にメイン展示ホール「アースモール」の迫力は国内唯一無二と言っても過言ではなく、これほどたくさんの大型古生物の骨格が一堂に会する施設は他にはほとんどありません。
恐竜をはじめ超壮大なスケールの古生物たち、多種多様な現生動植物の標本資料、古今問わず豊かな九州の自然環境を探る豪華な解説展示、そして太古の九州の大型ジオラマ体感展示までも有しており、とにかく至れり尽くせりなスペシャル学習ができます。あらゆる生き物のマニアの方々(特に古生物マニア)が超濃密に学べますので、生き物に関心のある全ての人に訪れていただきたいです。
本当に「究極」という言葉が似合うハイパー大型博物館。誰もが特別な体験を味わえる学術施設ですので、ぜひとも丸1日かけて太古の地球を歩いてみてください。

本館のマスコットキャラクター「いのたん」。ぜひ現地を訪れ、彼と一緒に生命の旅路を歩んでみてください。

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