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九月にはいっても、太陽の勢いが衰えることはなく、残暑というよりは、終わらない猛暑という…
午後三時、予定どおり記者会見がはじまった。 本社ビル二階の大会議室には、数台のテレビ…
6 休息を知らぬ真夏の太陽が、容赦のない光の矢を放っていた。すでに十五日間も雨が降らず…
万里子と篠原が金宮早苗のマンションを後にしたのは、午後九時をすこし回っていた。早苗の生…
恋人を失い、幼なじみの親友を失い、伸二は途方に暮れた。よりよい日本をめざし、世の中の不…
昭和四十二年は、大学紛争の風が吹き荒れた波乱の年だった。ベトナム反戦集会や成田空港反対…
車に乗り込んだ万里子と篠原は、頭の中を整理するように、遠くの海を見つめた。車のまえを、釣り竿を持った子供が通りすぎた。 「わたし、ずっと考えていたんだけれど、マスターって、本当は猪狩伸二じゃないかと思うの。光本孝次郞という人は、もうこの世の人じゃないし」 万里子は、溜まった思考をはき出すように、低い声で言った。 「そうですね。マスターが光本孝次郞でないことはハッキリしましたからね。だとすると、おなじ故郷をもつ猪狩伸二という可能性が高いですよね」 篠原も同意した。
5 翌朝、午前五時。 篠原は、鳥の鳴き声で目を覚ました。隣の運転席では、万里子が寝息…
翌朝、二人は午前八時に目を覚ました。八時間以上睡眠をとったことで、長旅の疲れはだいぶ抜…
入り口で靴を脱ぎ店内にはいると、ご飯が炊けるいい匂いが鼻をついた。ちょうど昼飯時だった…
旅館「銀嶺荘」は純和風の落ち着いた佇まいだった。入り口で迎えた女将が「奥様、お荷物をお…
4 午前三時だというのに、万里子が運転する車は、長い渋滞のただ中にいた。夏休みの帰省ラ…
万里子の携帯電話に原田からのメールが飛び込んできたのは、昼休みが近づく午前十一時三十分…
二人は木島の自宅を後にした。 マンションの出口で、見張りの存在を確認したが、どうやら怪しい車や人影はないようだ。念のため二人はカップルを装い、よりそうような格好で通りにでたが、篠原は万里子が意外にふくよかな身体であることに驚いた。 「なんだか凄い話でしたね」 篠原が言うと、 「そうね、予想以上に凄い世界だったわね」 「ところで先輩、夕食はどうしますか?」 「そうね……、今日は真っ直ぐ帰りましょう」 万里子は少し考えると、意を決したように言った。 でが