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長編小説ー路傍に咲く花ー(連載中)

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木内万里子は、篠原真吾と山元哲哉をひきつれ、新宿のバーを訪れる。そこで知りあったマスターの悲しい過去に、時代の憐憫をおぼえ傷つく。そして、その出会いが大きな事件に巻きこまれて行く…
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記事一覧

路傍に咲く花(27)

6  休息を知らぬ真夏の太陽が、容赦のない光の矢を放っていた。すでに十五日間も雨が降らず…

仕方 じん
4時間前

路傍に咲く花(26)

 万里子と篠原が金宮早苗のマンションを後にしたのは、午後九時をすこし回っていた。早苗の生…

仕方 じん
23時間前
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路傍に咲く花(25)

 恋人を失い、幼なじみの親友を失い、伸二は途方に暮れた。よりよい日本をめざし、世の中の不…

仕方 じん
1日前

路傍に咲く花(24)

 昭和四十二年は、大学紛争の風が吹き荒れた波乱の年だった。ベトナム反戦集会や成田空港反対…

仕方 じん
1日前
1

路傍に咲く花(23)

 車に乗り込んだ万里子と篠原は、頭の中を整理するように、遠くの海を見つめた。車のまえを、…

仕方 じん
1日前
1

路傍に咲く花(22)

5  翌朝、午前五時。  篠原は、鳥の鳴き声で目を覚ました。隣の運転席では、万里子が寝息…

仕方 じん
1日前

路傍に咲く花(21)

 翌朝、二人は午前八時に目を覚ました。八時間以上睡眠をとったことで、長旅の疲れはだいぶ抜けた。  万里子と篠原は、手早く着替え、荷物を整えると、足早にチェックアウトした。ゲートから車を出すとき、人目が気になったが、さいわい歩行者の姿は見えなかった。  万里子は振り返ってホテルを見た。リアウインドウから見えた建物は、ライトアップされたときの華々しさとは裏腹に、かなり老朽化したものだった。まるで一夜限りで萎れてしまう、月下美人のようだと思った。  国道七号線沿いのコンビニで

路傍に咲く花(20)

 入り口で靴を脱ぎ店内にはいると、ご飯が炊けるいい匂いが鼻をついた。ちょうど昼飯時だった…

仕方 じん
2日前
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路傍に咲く花(19)

 旅館「銀嶺荘」は純和風の落ち着いた佇まいだった。入り口で迎えた女将が「奥様、お荷物をお…

仕方 じん
2日前

路傍に咲く花(18)

4  午前三時だというのに、万里子が運転する車は、長い渋滞のただ中にいた。夏休みの帰省ラ…

仕方 じん
2日前

路傍に咲く花(17)

 万里子の携帯電話に原田からのメールが飛び込んできたのは、昼休みが近づく午前十一時三十分…

仕方 じん
2日前
2

路傍に咲く花(16)

 二人は木島の自宅を後にした。  マンションの出口で、見張りの存在を確認したが、どうやら…

仕方 じん
2日前
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路傍に咲く花(15)

 木島が初めて談合の場に出席したのは、経営調査部に異動して半年が経とうとしていた、晩秋の…

仕方 じん
3日前

路傍に咲く花(14)

 海浜幕張は、東京駅から約四十分のベッドタウンである。東京湾沿いの新興住宅街は、JR京葉線の開通により都心へのアクセスがしやすくなり、高層マンションの建設など、急速な発展をとげた。駅前を中心とした再開発もさかんで、近代的なオフィスビルも次々と建設され、美しいオフィス街を形成していた。  また、近隣施設には、モーターショーなどのイベントが行われる幕張メッセ、千葉ロッテマリーンズの本拠地「千葉マリンスタジアム」などがあり、イベント開催時には大勢の観客で賑わう街でもある。  万