「夕焼けは」#シロクマ文芸部
夕焼けは、遠くに連なる山々を紅く燃え上がらせ、やがてゆっくりと夜へと溶けていった。
夜は、いや、闇への誘いはロマンティックな雰囲気を辺りに漂わせる。公園のベンチに座っている二人のカップルの様子が私はさっきから、気になって仕方がなかった。
「だから…」
さっきまで、その頬を夕焼けで赤く染めていた男が、隣に腰掛けている女の視線に気付かないふりをして前を向いたまま話している。
「だから、だからさ…」
私には次にくる言葉が分かる気がした。
しかし、黙ったままじっと男の瞳を覗き込ん