さむげたん
大学生の“入瀬 葉月”は、 「好きな女の子と同じ名前だったから」という、ひょんなきっかけから、 同期の“雨沢 久弥”と知り合う。 人を寄せ付けない久弥に、最初は悪印象を抱く葉月だったが、 次第にその不器用なほどの一途さに触れていく。
見た目も中身も対極的な男子高生ふたりの恋愛を描いたBL作品です。
15-1 ◯大学、教室前(朝) 葉月、教室の入り口にひとり立っている 後方からやって来て 久弥「おはよ」 葉月「おはよ」 久弥「どうかした? なんで入んないの」 葉月「え?」 葉月「あー… なんか…」 わざとらしく手で顔を覆う 久弥「…?」 葉月「今日 めっちゃ疲れてんなあ…」 久弥「なに? 働きすぎ?」 葉月「いや… そういうんじゃないけど…」 久弥「じゃ 何? 体調悪い?」 葉月「いや…?(目が泳ぐ)」 葉月「…あー な
14-1 ◯大学、教室(夕) 葉月と久弥、誰もいない教室で、ふたり並んで座っている 葉月「大島のときといい──」 葉月「風邪引きそうなことばっか してんな」 久弥「っ…(軽く鼻で笑う) …確かに」 隣の葉月の方を見て、目で示すように 久弥「ん── 貸して」 葉月「……(一寸、久弥を見つめる)」 葉月「──……」 無言のまま、隣席に置いてあるビニール袋からタオルを取り出し、久弥に手渡す 久弥「ほら──」 身体を葉月の方に向けて
13-1 ◯川沿いの遊歩道(夕) 葉月、欄干の上で腕を組むようにして立っている その隣に立つ久弥 久弥「好きじゃないからとか──」 久弥「何が足りないとか じゃないし──」 葉月「うん」 久弥「──……(視線を落とす)」 久弥M「むしろ逆だけど」 久弥「やっぱり 俺は──」 久弥M「──好きだよ 好きだから」 葉月の顔を見て 久弥「“そういう人” 作る気になれない」 久弥M「…だから──」 久弥「恋愛とか──」 久弥「しよう
12-1 ◯川沿いの遊歩道(夕) 葉月、欄干に腕を置いて立っている 久弥、葉月から少し離れた場所に立っている 久弥「なんで」 葉月「え?」 久弥の方に振り向いて 久弥「同じ名前だから?」 久弥「好きだった人と」 葉月「は? …アホくさ」 葉月「そんな理由で 好きになる奴なんか いないだろ」 久弥「……」 葉月「それとも またアレ?」 葉月「(軽く笑いながら)俺なら あり得そうだって?」 久弥「…っ(軽く笑って) いや?」 久弥「
11-1 ◯大学、学食(昼) 久弥、学食へ向かおうとするも、入口前で足を止める 久弥「──……」 虚空を見つめている 踵を返し、立ち去る * * * ◯大学、購買 レジでパンを買う久弥 * * * ◯教室前 久弥「…またかよ」 教室前に貼られている紙を見ながら 紙には“教室変更”を知らせる文章 久弥「──……」 × × × (回想) 教室前にて、サボりを提案する葉月
10-1 ◯大学、教室(昼) 葉月「うい」 久弥の隣席にやってきて、机上にパック飲料を置く 久弥「──……」 無言で葉月を見上げる 久弥「…なんで?」 葉月「こないだ 食欲ないって言ってたから」 言いながら隣の席に腰掛ける 葉月「鉄分でも 足りてないんじゃないかと思って」 久弥「──……」 パック飲料を手に取って眺めながら 久弥「食欲と鉄分って 関係あるんだっけ」 葉月「え…(動揺)」 葉月「…それは分かんないけど(決まり悪そうに
9-1 ◯大学、学食(朝) おばさん「おはよう〜」 まだ人気のない厨房に入って来て、葉月の背中に声を掛ける 葉月「おはようございます」 エプロンを着ながら挨拶を返す おばさん「あら 誰から? これ(箱入りの菓子を持ち上げて)」 葉月「ああ 俺のです お土産で」 おばさん「え〜 お土産? どこ行ってきたの」 葉月「“大島”? 割と近場の離島っていうか…」 おばさん「へえ 島…!」 おばさん「そういや確かに──」 おばさん「ちょっと焼けたかも
8-1 ◯旅館の部屋(深夜) 電気は点いておらず、開け放たれた窓から入る月明かりのみが、部屋を照らしている 久弥と葉月、ともに旅館の浴衣に着替えている 久弥「…はあ──」 脚を投げ出して座っている、葉月の腿の上に寝転がる 葉月「は!? 冷た!」 脚の上の久弥を見下ろして 葉月「お前 全然 髪乾いてないじゃん…!」 久弥「そう?(平然と) じゃあ拭いてよ」 葉月「…やだよ なんでだよ…」 葉月「第一なんで膝枕なんだよ」 葉月「大体
7-1 ◯波止場(夜) 葉月、スマホ画面を眺めている 葉月「っ…!(驚愕した顔で息を呑む)」 久弥「え──(驚き)」 久弥「なに? どしたの」 葉月「…悪いお知らせ──」 葉月「…しかないけど いい?」 久弥「(怖々)…何?」 葉月「…最終便──」 スマホ画面を見せながら 葉月「終わってます…」 久弥「え!?」 久弥「マジか…! もう…!?」 再びスマホ画面を見せながら 葉月「…マジです 今日だけ運休…」 葉月「…あ〜」 葉月「もっと
6-1 ◯港(昼) 停泊している船から続々と降りて来る旅客たち 両腕を上げ、思い切り伸びをしながら 葉月「着いた〜…!」 久弥、船から降りて来ながら、一足先に降り立っている葉月の背に問いかける 久弥「てか なんで大島?」 後方の久弥に軽く振り返りながら 葉月「ええ? そりゃ──」 葉月の言葉を遮るように、にわかに期待しているような瞳になって 久弥「え── もしかして知ってた?」 久弥「俺が猫好きなこと」 言葉を聞くなり、勢
5-1 ◯船内(昼) 葉月と久弥、ふたり並んで座っている スマホを操作している葉月 葉月「(驚いて息を呑む)っ…! やば…!」 久弥「…?」 顔を顰めて葉月の方を見る 久弥「どうかした?」 葉月「このドラマ──」 スマホ画面を久弥に向けて 葉月「配信 今日までだった…(ショック)」 久弥「いいよ 観れば?」 葉月「え〜…(眉を顰める、申し訳なく思う気持ち)」 久弥「別に 寝てるから」 葉月「あ じゃあ一緒に観よ!」 葉月「イヤホンある
4-1 ◯大学、教室前(朝) 葉月と久弥、教室前に張り出されている紙を眺めている 葉月「お〜 今日 教室違うとこなんだ」 久弥「うん」 葉月「──……」 久弥の横顔を見つめる 葉月「どうかした?」 久弥「…え?(葉月の方に向く)」 久弥「何が?」 葉月「なんか…」 葉月「ぼーっとしてる?」 葉月「ちょっと疲れてるように 見えたから」 久弥「──……」 葉月から視線を外し、正面に向き直って 久弥「なにそれ 悪口?(機嫌を損ねた様子でもな
3-1 ◯大学、教室(昼) 久弥「──……」 席でひとり、課題のプリントに取り組んでいる 葉月「お疲れ」 隣席にやって来た葉月を見上げて 久弥「…ああ お疲れ」 葉月「ああ それ!」 久弥「?(不思議そうに見上げる)」 葉月「その課題 来週までだっけ?」 久弥「ああ うん」 葉月「お前は? もう終わった?」 言いながら席に座る 久弥「まあ… ぼちぼち?」 久弥「あとは結論だけまとめたら 終わりってぐらい」 葉月「マジかよ! 神様
2-1 ◯大学、学食(昼) 葉月と久弥、それぞれ食事の乗ったトレーを持ち、レジ前のカウンターに並んでいる 葉月「(レジ前の店員に向かって)いいです 一緒で」 隣の久弥の方を軽く見て 葉月「じゃあ ここは俺に奢って」 久弥「は? なに…」 店員「っ…(咳払い)」 煩わしそう、会計を急かすように 久弥「…あ すみません…」 久弥「はい… これで…」 会計トレーにお金を出す * * * ◯学食、席スペース 葉月と
1-1 ◯大学、教室(昼) 続々と教室内に入ってくる生徒ら 教卓の前で生徒らに呼び掛ける教師 教師「はい じゃあ初回の今日だけ──」 教師「座席表に記載されている 席に座ってください」 教師「えー 次回からは 自由に座っていただいて結構です」 入瀬 葉月(いりせ はづき)、座席表を手に教室に入ってくる 葉月「──……(徐に室内を見渡す)」 座席表に視線を落とす 葉月「──……(ひとつの名前に目が留まる)」 座席表『雨沢 久弥(“入