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『本』について思うこと―――

文字とは不思議なものである。

どう偽って書いても、人の気持ちや心理状況がはっきり表れるからだ。
少ない量の文字では正確にその人自身の人間性を把握することは難しいかもしれないが、その文字がたくさん集まり、本という形になった時、その著者の心をそこにコピーしたといえるだろう。

現代は、昔と違って簡単に書き記したものや、そこにあるものすべてをコピーすることができるが、いつの時代も人の心だけは最新の機械を使おうと、コピーすることはできない。それを別の場所に写すことを可能にするのは、他人でもなければ機械でもない、その本人だけなのだ。

その表現法は、言葉を発して行うのではなく、文字によって伝えるということこそが、最も正確に表すことを可能にすると私は思う。

本は、その著者の分身といってもいいのではないか。不思議なことに本がたくさん並ぶ空間に足を踏み入れると、どことなく神秘的な雰囲気が漂い、心に何か得体の知れないものが入り込むような、そんな感覚に襲われる。

それは、ひとつひとつの本の著者の魂が、そうさせているのかもしれない。

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