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夢の灯を持つリリイと夢を食べるドリアン

リメイク版です
短い動画も制作しました
youtubeにて公開しています
併せてごらんください

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夢の灯を持つ妖精リリイと、夢を食べる魔法使いドリアンがいました。
リリイは美しい夢を人々に与える存在として崇められ、ドリアンはその夢を食べてしまう存在として嫌われていました。リリイは人々に希望を与え、輝かしい未来を夢見させ続けていましたが、ドリアンはそんなリリイのことをよく思っていませんでした。

世界ではリリイのように人に夢を与えることが正義とされていました。人の夢を食べるドリアンは誰からも好かれず、一人彷徨い続けていました。ある日、リリイの作った夢を見ている一人の少女がいました。その夢は、白馬の王子様が迎えに来るという美しい夢でした。少女はその夢を心から信じ、王子様が迎えに来るのをずっと待ち続けていました。

ドリアンはそんな少女に声をかけました。「そんな夢は僕が食べてあげるよ」そう言って、彼はむしゃむしゃと夢を食べ始めました。すると、少女は泣いてしまいます。ドリアンはなぜ彼女が泣くのか理解できませんでした。

「僕はあの子のために夢を食べているのに、どうしてあの子はこんなにも悲しむんだろう?」

彼はただ、少女が目を覚まし、現実と向き合うために夢を食べていました。それなのに、少女は泣いてしまうその光景に、ドリアンは胸の奥に重いものを感じました。自分の行為が誰かを救うはずだと信じていたのに、その行為が逆に少女を苦しめているのです。それでも、ドリアンはやめられませんでした。夢を食べることが彼の役目であり、それが人々を目覚めさせる唯一の方法だと思っていたからです。

少女はドリアンに言いました。「私は白馬の王子様を待っていたいのに、なぜ食べちゃうの。酷いよ。」ドリアンは困ってしまいました。

その時、人々に夢を与えていたリリイが気が付き、こちらへやってきました。「なんでこんな素敵な夢を食べちゃうのよ!意地悪っ。」そう言われたドリアンは心が痛みました。彼は夢を食べることが悪いことだとわかっているけれど、夢にしがみついているだけでは人々は本当の幸せを見つけられないとも思っていました。

「僕は意地悪なんかじゃない…ただ、彼女に本当の人生を生きてほしいだけなんだ」

そう思っても、リリイの強い言葉は彼の心を締め付けます。ドリアンは何も言わず、静かにその場を去りました。彼の中で、正義と罪の間で揺れる感情が渦巻いていました。リリイと少女はドリアンがいなくなったことに喜び、夢の続きを見始めました。

少女が夢から覚めたとき、目の前には幼馴染が座っていました。「おはよう!うなされてたみたいだけど大丈夫?少し散歩でもする?」と優しく話しかけましたが、少女は「大丈夫、私は白馬の王子様が来るのを待ってなくちゃ」と言い、窓から外を眺めていました。それを聞いた幼馴染は、「そうだね、白馬の王子様がいつ来てもいいようにしなくちゃね」と言って、少女の隣に座りました。少女は夢の内容を楽しそうに話し、幼馴染はそれを微笑みながら聞いていました。

何度も何度も眠っては、リリイに白馬の王子様の夢を見させてもらいました。「白馬の王子様がまだ来ないの、お願いリリイ、もう一度夢を見させて」と少女が願うたびに、リリイは笑顔で「もちろんよ」と応えました。夢を与えるのが役目のリリイは、自分に「これで大丈夫」と言い聞かせていました。

しかし、とうとう少女は80歳になってしまいました。白馬の王子様は迎えに来てくれず、でもリリイは「白馬の王子様はいつか必ず来るわ」と言って励まし続けました。ですが、リリイの心には次第に疑問が湧いてきました。夢ばかり見させている間に、気づけば少女はおばあさんになってしまったからです。

「本当にこれで良かったのかしら?」

リリイは心が痛み、夢を見させ続けることが彼女の幸せなのか、夢を諦めさせた方がいいのか悩み始めました。与えた夢が彼女を縛りつけているのではないか。自分の役目を信じてきたリリイの心に、初めて葛藤が生まれたのです。

その姿をドリアンは遠くから見ていました。「本当にこれでよかったのかな…」彼もまた心を揺らしながら、彼女の姿を見つめていました。そして、ドリアンは決断しました。「もう彼女を苦しませたくない」そう思い、ドリアンはこっそり気づかれないように彼女の夢を食べました。

その瞬間、ドリアンの胸の奥に鋭い痛みが走りました。「僕が夢を食べたら、彼女の希望を壊してしまうかもしれない…でも、このままでは彼女は永遠に夢に縛られたままだ」。ドリアンは自分が正しいのかどうかさえわからないまま、『少女の夢』を食べたのです。

すると、それに気づいた彼女は怒ってドリアンに言いました。「なんてひどいことをするの?これで本当に白馬の王子様が来なくなってしまったわ」と泣きじゃくります。彼女の泣き声に、ドリアンは心が壊れそうでした。

「君は白馬の王子様に迎えに来てもらうために、何か努力をしたかい?いつか迎えに来てくれるって思い込んで、ずっと夢を見続けただけで、自分から動こうとしたことはあったかい?何度もチャンスはあったのに、君はそれに気づかず、もう80歳になっちゃったんだよ。」

ドリアンの言葉に、彼女はさらに大声で泣きました。「本当は気づいていたのに。でも、私は夢の中で見た王子様が迎えに来てくれるって信じてたの。もう何もかも遅すぎたわ。」彼女は後悔しましたが、時間は戻りません。

そしてドリアンは優しく伝えました。「僕が夢を食べたから、もう大丈夫だよ。これで君は現実と向き合えるんだ」そう言って、ドリアンは消えてしまいました。

少女は夢から覚めました。すっかりおばあさんになった彼女の目の前には、いつもそばにいてくれた幼馴染が立っていました。彼もまた、すっかりおじいさんになっていました。

そんな彼の姿を見たおばあさんは、安堵の笑みを浮かべました。「待っててくれてありがとう」

「一緒に居ようね、お姫様」と幼馴染が優しく答えました。


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