天邪鬼に花が咲く
彼女は言葉に詰まっていた。目を伏せ、手をきゅっと握りしめ、何かを言おうとするたびに口を閉じてしまう。
「また黙ってるのか?」
うまく言葉にできない彼女をしり目に、彼はもてあそぶように笑ってる。
彼女はうつむいたまま、小さくため息をつくばかりだった。
「…うるさいな」
ようやく絞り出した渾身の一言。
言わせたくて仕方ない彼は、いつものようにいじわるを口にしようとしたが、なぜか言葉が出てこなかった。
「…君の声の、ヘルツが好き…」
「君のキャッツアイみたいな瞳も、好きよ。まるで夜の中で光る宝石みたいに、私を見つめてくるから…」
「…それから、君が唇を噛む癖も好き。」
彼女はゆっくりと言葉を紡ぎ出す。でも、すぐに視線を落として、また言葉を引っ込めてしまう。
胸の奥で、ぽつんと何かが咲くような感覚がした。彼女の素直に出るためらいがちの一言一言が、彼の天邪鬼な心に花を咲かせた。
あとがき
無口な彼女に好きと言わせたい
天邪鬼な彼氏のお話
彼女の独特な表現方法がお気に入り
儚く/美しく/繊細で/生きる/葛藤/幻想的で/勇敢な 詩や物語を作る糧となります