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まいにち易経_1001【開物成務~サーバントリーダーシップ~開成】それ易は物を開き務めを成し、天下の道を冒う。[繋辞上伝:第十一章]

子曰。夫易何爲者也。夫易開物成務。冒天下之道。如斯而已者也。是故聖人以通天下之志。以定天下之業。以斷天下之疑。

子曰く、れ易は何為なにする者ぞや。夫れ易は物を開きつとめを成し、天下の道をおおう。かくの如きのみなる者なり、と。是の故に聖人は以て天下の志しに通じ、以て天下の業を定め、以て天下の疑いを断ず。

『物』は人物のこと。『冒』は覆。
孔子曰く、「そもそも、易は何のために作られたのか。その起源は、太古の時代において、人々が知恵を持たぬ頃、占いを通じて吉凶を見極め、災いを避ける方法を教え、様々な事業を成功に導くためのものだった。天下の道理はすべて易の中に含まれている。易とはそのようなものに他ならない」と。
ゆえに聖人は易を用いて天下の人々の意志を理解し、易によって天下の事業を定め、易によってすべての疑問を解決する。

開物成務かいぶつせいむ:物を開発して、事業や職務を望んだとおりに完成させること。または、人々の知識を開発して、事業をなしとげること。世の中がうまくいくように導くこと。

ある企業の新人研修に招かれた老易学者が、
未来のリーダーを担うポストZ世代の若者たちに向かって語る

まず、「開物成務」という言葉から始めましょう。これは易経の本質を表す重要な概念です。「開物」は物事の本質を開くこと、「成務」は自分の務めを果たすことを意味します。
皆さんは、自分の中にどんな才能や可能性が眠っているか、考えたことがありますか?それを見つけ出し、花開かせるのが「開物」です。そして、その才能を活かして社会に貢献するのが「成務」なのです。

さて、易経が書かれた目的は大きく二つあります。

一つ目は、人や物事の持っているあらゆる可能性を開花させること。そして、物事の道理を明らかにすることです。
二つ目は、それぞれの人が自分の務めるべき役割を果たし、目的を達成することです。

これらは、まさに皆さんがこれから社会に出て、リーダーとして活躍する上で非常に重要なポイントになります。

例えば、チームを率いる立場になったとき、メンバー一人一人の才能を見出し、それを最大限に活かすことが求められます。これが「開物」です。そして、その才能を組織の目標達成のために適切に配置し、成果を上げることが「成務」となるのです。

易経では、「中庸」という考え方を重視します。これは、極端に走らず、バランスを取るということです。例えば、新しい技術やトレンドが出てきたとき、すぐに飛びつくのでもなく、完全に無視するのでもなく、慎重に観察し、適切なタイミングで適度に取り入れる。これが「中庸」の態度です。

さらに、易経には「時」の概念も重要です。すべての物事には適切なタイミングがあるという考え方です。これは、ビジネスでいう「タイミング」と同じです。例えば、アップルのiPhoneは、携帯電話とインターネットの技術が十分に発達し、かつ消費者のニーズが高まった「時」に発売されました。これが大成功の要因の一つです。

皆さんも、自分のキャリアを考えるとき、この「時」の概念を意識してみてください。新しいスキルを身につけるタイミング、転職のタイミング、起業のタイミングなど、すべてに適切な「時」があるのです。

ここで、易経の教えを現代のリーダーシップ理論と結びつけて考えてみましょう。

サーバントリーダーシップ

現代のリーダーシップ理論では、「サーバントリーダーシップ」という考え方が注目されています。これは、リーダーが部下に奉仕し、彼らの成長を支援するというものです。

実は、これは易経の「開物成務」の考え方と非常に似ています。部下の才能を開花させ(開物)、その才能を組織の目標達成に結びつける(成務)。これこそが、真のリーダーの役割なのです。

私自身、経営者として多くの失敗と成功を経験してきました。その中で、最も重要だと感じたのは「人」です。どんなに素晴らしい戦略や技術があっても、それを実行する「人」がいなければ何も始まりません。

そして、その「人」の可能性を最大限に引き出すのが、リーダーの役割なのです。これこそ、易経が教える「開物成務」の本質だと私は考えています。

易経は、単なる占いの道具ではありません。それは、人生の指針であり、リーダーシップの教科書なのです。

変化の激しい現代社会では、固定観念にとらわれず、柔軟に対応する能力が求められます。その際、易経の教えは非常に役立つでしょう。変化を恐れず、むしろそれを機会として捉える。そして、自分と周りの人々の可能性を最大限に引き出す。これが、易経が教える真のリーダーシップなのです。

皆さんには、これからの人生で多くの選択と決断が待っているでしょう。その時、易経の知恵を思い出してください。自分の中にある可能性を開花させ(開物)、そしてそれを社会のために活かす(成務)。これこそが、充実した人生を送る秘訣なのです。


参考出典

開物成務
易経は何のために書かれたのか。一つは人や物事の持っている一切合財――徳や特質、能力などを開花させるためであり、また物事の道理を明らかにするためである。
もう一つは、人がそれぞれの務めるべき職分を果たし、目的を遂げるためである。
それゆえ、易経には時代、地位、年齢に関わらない人間社会のあらゆる道が網羅されているのである。
「開物成務」の語源となった言葉。

易経一日一言/竹村亞希子

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