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らいさわも走ればシマシマの尻尾にあたる


久々にランニングに出ました。

大通りを走った(正確にはほとんど歩いた)のですが、土曜日の午前中だったので、まだ通りを歩いている人は少なく、車ばかりが行き交っていました。

わたしは、ウェストポーチに水筒を入れ、スマホは持たずにスマートウォッチとイヤーポッドでランニングをします。

11月も半ば。NYCはだいぶ寒くなってきてその時の気温は2℃くらい。

夏にランニングに出ることを志しましたが、
暑すぎて走れないから秋まで待つ、
と言い訳をしてランニングには出ていませんでした。

その日、急にランニングを思い立ったので、夏に買っていたランニング用の半パンでランニングに出ました。

走ってたら暖かくなるでしょ、そんな軽い考えで。


◇◆◇◆◇◆◇


・・・・間違ってました。

運動をし慣れていないので、そんな常識知りませんでした。

寒い中、夏用半パンで走ると、骨の内から冷えました。

油の切れたロボットか、ってくらいに膝が寒さでガクガク(今時のロボットは油使ってなさそう。笑)。


ちょっと走って歩いた後、家路に着きかけたその時。

某有名教会がそびえ立ち、その門の前にiPadを抱えた中学生くらいの黒人の男の子が立っていて、わたしに近づいてきました。

「宗教の勧誘かなぁ、嫌だなぁ」と頭で思いつつ、
相手は子供なので、いち母親としては気づいてないフリをして通り過ぎることができず、イヤーポッドの音楽を切り、勧誘を断る準備。


◇◆◇◆◇◆◇


男の子「ラクーンが死んでるんだけど」

わたし「えっ!?」

まさかのラクーン(アライグマ)死亡の報告。

背後の教会関係なし。この時点で自分の思い込みを猛反省しておりました。

男の子が指差す先の車道の脇を見ると、確かにラクーンが一匹横たわっていました。

NYCではラクーンが出現し、外に出されているゴミ袋、ゴミ箱などを漁ります。

▼ NYCは人もレストランも多いですから、ラクーンにとってはゴミ箱は餌の宝庫です


生きているときは、夜行性だし、動きが早すぎてなかなかその顔をじっくりと見ることができないラクーン。

たまーに発見しても、特徴的なあのシマシマの大きな尻尾が残像として視界に残る程度にしか姿を見せてくれない機敏なラクーン。

そんなラクーンが一匹、スケッチのモデル並みに美しく、無抵抗で車道の脇に、私たちの目の前に横たわっていたのです。


◇◆◇◆◇◆◇



男の子「車にはねられたんだ。どうしたらいいと思う?」

男の子はラクーンが車に轢かれたのを見て、
そのままにしておくことのできないとても心優しい男の子でした。

▼ 見た目は似てたけどこの子供達とは大違いでした


わたし「多分311に電話すればいいと思うんだけど、でもわたし今電話できるスマホ持ってないんだよね」

男の子「僕のiPadも電話できないんだよね」

*「311」はNY市民の相談窓口で「911」は緊急の窓口です

▼ らいさわが911に電話した時のはなしはこちらの記事で


彼の背後にそびえる教会は男の子とは無関係であり、土曜日だったので開いてもいませんでした(日曜午前中ならミサがあるので開いている)。

車はたくさん走っているけれど、もちろんラクーンの存在なんて見えてないし、見えても乗車している人たちはわざわざ降りてこない。

徒歩で通りかかった人間、ウェストポーチが膨れているわたしならスマホを持っていると踏んだらしく話しかけてきたらしいのでした。

宗教の勧誘だと思い込んでごめんね・・・。おばちゃん、宗教の勧誘にはちょっとトラウマがあるの。

よくよく考えたら子供が一人で勧誘してるわけはない。


◇◆◇◆◇◆◇


さておき。

男の子「寝てるだけだと思う?」

わたし「いや、これは死んでるでしょう・・・」

男の子「とりあえず写真撮って311か誰かに報告するよ!」

いくら動物でも死体を写真に撮るって自身のモラルに反したんですけど、男の子なりにそのラクーンを思ってやっていることなので、

わたし「通りの看板も一緒に送って、具体的にどこなのかを教えてあげるとわかりやすいと思うよ」

くらいしか言えませんでした。

寒さでむき出しになった膝が一層ガクガクしてきていたので、それ以上そこに留まることもできず、立ち去ろうとしかけた時。

ちょうどスマホからイヤホンのコードを出している女性が歩いてきました。

わたしにも男の子の助けになれるかもと思い、話しかけました。

わたし「すみません。スマホ持ってますよね? 311に電話を・・・」

女性「ノー!ノー!」

どうやら英語がほとんどわからないその女性。

話も聞いてもらえず、立ち去られてしまいました。

せっかくアメリカ>ニューヨークという自由な地域に移住してきたのに、アメリカ>ニューヨークの言語、文化と調和することは考えず、元の国の言語、感覚を頑なに保持し続ける人たち、結構多いんですよね〜。

まぁ、NYはそういう人たちにも優しい街なんですけどね。

▼ 英語力は陪審員を選ぶ基準にも関わりがあります


現地の第一言語は多少なりとも勉強した方が各個人の世界が広がると思うし、トラブル回避にもなると思うんですけどねぇ。


▼ 英語圏で英語ができないとトラブルの対処にも困ります


それとも、単純にわたしが宗教の勧誘と思われたかな。彼女もトラウマあるんかしら。


結局、

わたし「ごめん、これ以上何もできることはないから行くね!」

男の子「大丈夫だよ。さよなら」

そのような感じで立ち去りました。


◇◆◇◆◇◆◇

ニューヨークは怖い人たちも変な人もたくさんいますが、優しい人もたくさんいます。

旅行者の時にニューヨークにハマったのはこんなギャップだったりします。

▼ この記事に、こんなニューヨーカーに出会えるかも、と追加したいくらい、いい子でした


寒空の中、半パンで外に出たのは自分のせいで、骨まで冷え切っていましたが、

通話ができないiPadで自分にできる限りのことをしようとしていたこの男の子のおかげで、心は温かくなりました。

こんな出会いがあるならランニングも悪くないなと、思える出来事でした。

コロナの影響で太った10kg減らせるよう、毎日は無理でしょうが、週末くらいは頑張ります。

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