るーとら

書いたものの整理場所。それが出来なくなる前に。

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マガジン

  • 夜明け前雑記

    夜明け前、稼ぎ仕事に行く前の日々の雑記。

  • 🔲通信創作集

    1990年代、57号まで出した個人通信「🔲通信」の中からセレクト。

  • 詩集「日の採集」セレクト集

    1987年に自費出版した詩集から愛着のあるものをアーカイブ。

  • 日のすきま

    2000年~2013年、ブログや、メルマガに出していた日々の表出。

  • お絵描き帖

    いわゆるひとつの渦のようなもの。

最近の記事

カアカアと

 県堺の健康センター「勿来関の湯」  海の見える露天風呂  サウナ水風呂後の寝椅子に  五体裸体投げ出し  空の奥には空の奥  海の果てには海の果て  空と海とはつながっているし  酷暑続きの地べたで  恒星に灼かれ  塩を舐めながら働いて  ( 九月    少しは寝苦しくなくなりました    夜明け前などいい感じです )  それでも日中のこの紫外線  木影あるのが有難く  木に上って木の懐から出たくなく  木のまま終わりたく  ( 無限を前に鋏を動かし    木に

    • tsunami

       丘の上から遠く凪いだ海を見ている。沖に船が浮かんでいる。日差しは暖かだ。丘の下にはのどかな農村が広がっている。小川で婆ちゃんが野菜を洗っている。爺ちゃんは野良仕事。ゆっくり鍬をふるっている。と、空と繋がった水平線あたりに雪山が出来る。雪山はどんどん大きくなる。沖に浮かんだ船を飲み込む。船長さんたちが叫んでいる。波を透かして無人島が見える。無人島にはバナナがいっぱいなっている。他にも果実がたくさん実っているけれど、バナナしか名前を知らない。猿がうれしそうに喰っている。船からは

      • 詩(眠れぬ夜は)

        ねむれぬ夜は 窓をあけ うすらあおい空に あたまをのせる 目にみえぬ銀河を 目をつむってひらき このままのかたちで じぶんをうすめる もう関係も痛まない もう言葉も傷まない ふかい あさい ゆれる 星の水

        • 詩(ひまわり)

          酔っぱらって  うふふ  ぬごうか ぬぐまいか あたいのかたちなんぞ 犬にやってくれ きょうもあしたも いらない いらないよう 殺してもかまわない まっぱだかだよう そらがひろく ひかりひかりひろく 酔っぱらって あはは うふふ やろうか  やるまいか どちらのあたいも 海に捨ててくれ 失くしてかまわない うんざりだよう みずがふかく みずがひろくふかく ひまわりひまわれ ひまわりひまわれ 酔っぱらちゃった 酔っぱらちゃった にんげんが にんげんが 遠い 空の水を飲んで

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        • 夜明け前雑記
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        記事

          いちにち 3

          雨の日 無人駅で弁当をひらいた 寄ってきた子猫に骨をやった 冬田に冷たい雨がふる 父を病み母を病んだ日々 あの空は 許されたのか むきだしにされた他者の膚は 癒えたのか 暮らしの底に折り重ねられた傷跡よ 雨の午後には疼くがいい 猫の背中に手をやるように やさしくおまえを慰めよう 世界はおまえを使い捨てる 世界はおまえを終わりにする けれど まだ ゆけるさ そう たしかめて 濡れた合羽を着こみ 冷たい雨の中に出た

          いちにち 2

          きょうは熱があってつらいから休ませてください あかい菜果にそう言って枯草の上にねた 百舌が母のそばで鳴いている 冬の陽だまりが温もったところ 午後じゅうにあと十軒集金しなければならない けれどすこし休ませてください 子どものころの林のなかのはじめての空へ ひとりでいるのが愉しくて 大きくなったら炭焼きかきこりになろう ひとりの小屋を建て愉しく暮らそう 薄空のなかで姿がめくれる 目ざめたぼくはお爺さん? 夕暮の気圏が燃えている ぼくは発熱した来歴をはずし あと十軒の見知ら

          いちにち 2

          いちにち 1

          ひとびとの夕餉の灯がともる ぼくは売れ残った うらぶれた商人宿に帰れば 冷めた食事が待っている 凍えた身体を湯舟に入れ  ひふをほどいた 今年もおわりですな 富山の薬屋が入ってくる バイクの冬はきつくていけません いけませんな すえた布団のぬくみのなかで おもいっきり世界をひきよせた まっくらな森を走れ さむい風をあつめろ 背びれをたて 胸びれをひらく この水際をこえれば 世界に入れるか

          五月

          みずいろの植物と乳房を 手のひらにのせ ぼくは魚のように 空に吸いついた 鏡のなかの海のかなたにみえる ひとの島 遠くなってしまったけれどさみしくない たのしく風と距離を腰につけ 立っている土地だけゆくことにしよう 五月は水の街 象やキリンやシマウマが まっすぐな眼で 地平線をみている あそこにうすく立っているのが ぼくらの鏡だよ 鏡はさみしいかい そんな 言葉は知らない ぼくらはただここで 草を食み朽ちてゆくんだ 牛たちが静かにうなづいた 夕暮れには しんみり寝床をつ

          挨拶した

          夢とうつつの水際にからだを濡らし さみしいから 万葉のうたびとに身をそらし あおい五月の空を受けた 南の島のにおいがする 飛魚のように 風を切り とおくまで行った シャツに腕を通すと 今日のいちにちが始まる きのうは キリンと遅くまで話して 少し熱がある なあに ヒタイを 草の方へつきだせば 風にかわくよ 心配そうに窓辺によりそった イルカに あかるく笑って 挨拶した

          風にふかれていた

          ひとり暮らしの背中にさわり 空虚をやさしく包んでいる この布は どこからもってきた 空を一枚動かしてきた 近くには火山があり その上にさみしく立つ人がみえた 胸からあたらしい血がこぼれる このシャツのボタンをはずし 遠い海にひろげよう にんげんのこころをみたかい にんげんのこころをひかりに散らす 大きな呼吸で 火山の上の人が飛んだ 白い歯を痛みながら ひとり暮らしの肩にさわる きのうシネマをみたかい きのうはひとりで風にふかれていた

          風にふかれていた

          ぼくと話そう

          キリンの鳴く声が 海辺の方からきこえてくる ワニのように一日をあけ きょうのひとりを了えた 朝噛じった果実が 死体のように変色してしまった カーテンをひいて キリンを迎える準備をする こちらの装置のヒビの部分を やわらかくなめてもらえば助かるし ぼくもキリンの孤独を深く 濡らすことができる 自転車がいるかい 迷わずこれるかい 名も知らぬ星の左よこ 35度下方が ぼくの部屋だよ いく枚もの大気圏に燃えて 結石化した病痕を 迷わずたどって ここまでおいで ぼくと話そう

          ぼくと話そう

          日のすきま セレクト集(2004年2月~2005年4月)麓の村へ

          2004年 2月8日 ■ 近況  水は炊事、洗顔にも事欠くようになった。  ペットボトルをやめてキャンプ用の水タンクを買った。  ひと山向こうに名水の出るところがある。  浜のスナックのオヤジらが汲みに来ている。  いまは雪道が恐くてほとんど誰も来ない。  タンクに水を溜めながら寂れた僻地の雑木山を見る。  カラスも鳴かない。  風呂はあちこちの保養施設で済ます。  このあいだ仕事が遅くなって入れなかった。  洗面器に湯を入れてタオルで拭いた。  凍えた。  冬は二度とやら

          日のすきま セレクト集(2004年2月~2005年4月)麓の村へ

          日のすきま セレクト集(2003年11月~2004年2月)

          2003年 11月28日 ■ 炭住と海と林道  昔、炭坑があった山里の村で仕事した。  ボタ山が雑木山になっていた。  炭住のような腰板の家もあった。  静かに柿が実っていた。  行き帰り、太平洋を見た。  砕ける波の向こうに緑と青の帯があった。  遠くに日が差し、船が浮かんでいた。  峠は霧が出ていた。  前のトラックが遅いので、林道に入ったら、道に迷ってしまった。  ヘッドライトを照らしながら小便をした。  霧が晴れたので空を見上げた。  空は穴のように暗かった。

          日のすきま セレクト集(2003年11月~2004年2月)

          膜を張ること

           膜を張ること。  言葉を知って外せなくなった世界との膜を。  外せないならむしろ自覚的に張ってゆく。  泳ぐように。  踊るように。  飛ぶように。  言葉のない世界を夢見ることで、  言葉の膜宇宙を特権化するな。  これもひとつの幻。  空像としての世界。  空像を、  泳ぐ。  踊る。  飛ぶ。  毎日剪定仕事。  泥のように暑い夏。  言葉の身体で泳いでゆく。  言葉の五体を諦めてゆく。

          膜を張ること

          煙を吐くひと

          煙を吐くひと

          片足の土工

           震災後、あちこちの修復に全国から作業員が集まり工事していた。  こちらも土砂崩れで通行止めになったルートを迂回しながら、毎日の現場に向かっていた。  いつもの商店街の交差点付近で、今日も道路工事をしている。  信号待ちをしてふと見ると、片足の土工が松葉杖を突きながら、踊るように、跳ねるように作業していた。片手に松葉杖、片手に角スコップ持って、重機の散らしたアスファルト片を掃除していた。関西訛りで仲間に何かしゃべりながら笑っている。  信号が変わり、クルマを発進させながら

          片足の土工