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日のすきま セレクト集(2004年2月~2005年4月)麓の村へ
2004年 2月8日
■ 近況
水は炊事、洗顔にも事欠くようになった。
ペットボトルをやめてキャンプ用の水タンクを買った。
ひと山向こうに名水の出るところがある。
浜のスナックのオヤジらが汲みに来ている。
いまは雪道が恐くてほとんど誰も来ない。
タンクに水を溜めながら寂れた僻地の雑木山を見る。
カラスも鳴かない。
風呂はあちこちの保養施設で済ます。
このあいだ仕事が遅くなって入
日のすきま セレクト集(2003年11月~2004年2月)
2003年 11月28日
■ 炭住と海と林道
昔、炭坑があった山里の村で仕事した。
ボタ山が雑木山になっていた。
炭住のような腰板の家もあった。
静かに柿が実っていた。
行き帰り、太平洋を見た。
砕ける波の向こうに緑と青の帯があった。
遠くに日が差し、船が浮かんでいた。
峠は霧が出ていた。
前のトラックが遅いので、林道に入ったら、道に迷ってしまった。
ヘッドライトを照らし
日のすきま セレクト集(2001年3月~2002年4月)■ 阿武隈以前(船橋時代)■
2001/03/05(月) ヒカルと古事記
宇多田の新曲を仕事中のカーラジオで聴いてなぜだか古事記のことを思い感極まっちまった。よくよく感じてみたらみんな近代的閉塞じゃねえか。売れないことがなぜ悪い。無関係でいることの凶暴さ。春だというのに自由な呼気吐気できない。もっと客観的にみる訓練を。生活の実用をやるにつけ言葉のメタメタ度合いが減ってきちまった。いちどおれのなかの絡み枝を全部抜き取り、
日のすきま セレクト集(2002年4月~2003年10月)
2002/04/30 (火) 池袋の夜
今日は本漁り。 神田古書店街、池袋リブロ、ジュンク堂と回ってきた。 もうしばらくここへはこれないな、と狩猟する。 池袋の夜。 獲物を抱えて駅へ帰ると、周りのビルや道路が、突然、最深奥の自然に見えてきた。 複雑で高度な都市は一級の自然に似てくる。 無数の空間を集約した都市場は有機的に動き出し、 あらゆる種類の人間の物語を化合する。
日のすきまセレクト集(2006年8月~2007年8月)
2006年 08月 23日
■ いつか
医院の芝刈をしていると、吉増剛造に似た院長に、ノラ猫の屍体を埋めてくれと頼まれた。
行ってみるとサザンカの生垣の下に、黒白の大きな猫が横たわっていた。
この間までこの辺りを睥睨していたボス猫だ。
目の辺りに蟻がたかっていた。
持ち上げるとまだ死後硬直している。
庭の片隅に穴を掘って埋めた。
見開いた目は閉じることもなく土をかけられた。
猫
日のすきま セレクト集(2007年12月~2008年10月)
2007年 12月 15日
■ 異様なもの
高台の庭。
松から降りて一服すると、遠く海が見えた。
海に陽があたり、冬田にも陽が降りていた。
大きな鳥がゆっくり横切ってゆく。
錆た身を立てて、また脚立に乗る。
松葉に風が鳴る。
夜、犬といつものグランドを走ると星が異様に見えた。
初めて夜の星々を畏れた。
この宇宙は異様だ。
薄い皮膜のなかに多数の次元を折り畳み、無言で
日のすきま セレクト集(2009年2月~2013年6月)
■ 祈り 2009.02.24
今年50になる。
ずいぶんアタマが悪くなった。
なのに「それ」はまだある。
日々の起き伏しを蝕んで、
虚空に投げ出された気になる。
仕事が暇なので毎日、薪割りをしている。
鉄斧で「それ」を真芯から叩き割る。
木喰い虫がこぼれて、鳥たちが啄みにくる。
鳥たちは必死だ。
「それ」を何と名付けようと、
私は「それ」の現れに過ぎぬのだ