『山椒魚』
『山椒魚』
井伏鱒二著
山椒魚と岩屋って、知らずに選択してしまった人生ってことなのかなあと思った。
岩屋は〝壊れない〟し〝出ることができない〟それが、日常になる。
群れに縛られるメダカをバカにする。その点、山椒魚は、確かに自由だ。しかも、山椒魚には身の危険が無い。ただ、孤独なのだ。
そこに蛙が迷い込む。
最後に山椒魚が、死にゆく蛙に対して、「お前はどういうことを考えているのか?」と問うのだけれど、蛙の方は、「いまでも、別にお前のことを怒っては、いないんだ」
蛙は他人なのだけど、そんな蛙を岩屋に閉じ込める。自分と同じ制約のもとを生きる蛙は、他人では、なくなるのだ。蛙と山椒魚は、夫婦だなあと思った。
蛙にとって山椒魚との生活は、自由はないけれど、孤独でもない。運命共同体のようなものなのかもしれない。
どんな生きものにも、それぞれの「岩屋」がある。そして、どの生き物も、それぞれの「岩屋」からは、自由になれない。
「まぶたを閉じた」暗闇のなかに初めて自由がある。死んだら解放されるということなのか?
人生、こんなものだから、生きてる間は、楽しくしていることが大事だなあと思った。
運命共同体の夫婦でいる時間は、喜んで過ごすことが大事だと感じた。
『スパークル』幾田りら