【書評】『砂の女』(安部公房)は、たまに読み返したくなる本
ロッシーです。
『砂の女』を読みました。
読むのはこれで3度目か4度目だと思います。
なぜか、この本はたまに読みたくなるんですよね。(同じような人いますでしょうか?)
この本も名作だけあって、毎度毎度いろいろな読み方ができます。
例えば・・・
・人間はどんな環境にも慣れてしまう、ということを描いた作品
・合理的な男と、非合理的な女を対照的に描いた作品
・自由を求めつつ、どこかで不自由を求めずにはいられない人間の性を描いた作品
・砂という自然と、それに抗うシーシュポスの神話的な人間の営みを描いた作品
・閉鎖的な集団を守る村落の人々の狂気的なエゴを描いた作品
などなど・・・。
でも、そんなことはさておき、とにかく読んでいて面白いんですよね。
特に、登場人物の女性はいい味を出しているなぁと思います。この作品で最も存在感があります(ほとんど他に登場人物がいないので当たり前か)。
合理的であろうとしてある種の「屁理屈」をこねる男に対して、特に言い返すでもなく、現状に対して文句を言うでもなく、ただただ今の状況を受け入れるのみ。
一見すると弱いように見えるこの女性が、最も強い存在に見えてくるから不思議です。
『老子』には、「上善水の如し」という言葉がありますが、水も砂も、そのありかたは同じだと思います。
そして、この女性が体現しているのが、まさに砂のようなあり方なのではないでしょうか。だからこそ、この本のタイトルは『砂の女』なのかもしれません。
社会は、男が体現するような合理的精神のもとで発展する部分もありますから、男性的なものと女性的なものの両方が、バランスよく必要なのだとは思います。
しかし、その合理的精神で私たち人類が築いてきたものにしても、この広大無辺な宇宙全体からすれば、砂でお城を築くような行為なのかもしれません。
ぜひ、まだ読んでいない方は読んでみてください。おすすめです!
Thank you for reading!