【書評】コンラッド『闇の奥』を新訳で読む。やっぱり良く分からないけれど、この闇は面白い。
ロッシーです。
コンラッドの『闇の奥』の新訳が、新潮文庫で出版されていたことを知り、すかさず購入。
好きなアーティストの新譜が出たときのような気持ちですね(笑)。
翻訳者が変わると、同じ作品でもかなり印象が変わるので面白いです。
同じクラシック音楽でも、指揮者が変わると全く印象が変わるのと似ています。
『闇の奥』は、個人的に好きな作品です。
下記の「書評まとめ」にも記事を掲載していますので、もしご興味があればご覧ください。
では、『闇の奥』の何が面白いのか?
というと、これがまた説明するのが難しいのです。
村上春樹的な作品といえば分かりやすいのかもしれません。
つまり、「なんだかよく分からないけれど、面白い」というタイプの作品です。
『闇の奥』には、これといった落としどころがありません。読んでいて、「何を言いたいんだ?」という意味不明な箇所がいくつもあります。
特に、クルツが逃げて、追いついたマーロウが対話する場面は、会話の内容が意味不明ですし、気がついたら二人とも船に戻っているし、なんだかわけが分かりません。
にもかかわらず、何やら得体のしれない面白さがある作品なんですよね。
こればっかりは読んでみないと分からないと思います。
「見えそうで見えない」
というのが最もそそられる(笑)といいますが、
「何かありそうでよく分からない。」
というのは、絶妙に洗練された作品ならではの技だと思います。
稚拙な作品であれば、何かありそうな感じで深淵そうに見せていても、結局は底が浅いことがバレバレになってしまうでしょう。
でも『闇の奥』はそうではありません。
もしかしたら実は底が浅いのかもしれませんが、コンラッドの力量により、「なんか深いぞこれは!」と読者は思わずにはいられないわけです。
コンラッドの『闇の奥』は、底が深くて真っ暗闇です。いくら読んでもその闇が明るくなることはなさそうです。
そんな文学的な闇を体験したい方は、ぜひ手に取ってみてください。
年末年始を過ごすにはうってつけの一冊になると思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!