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哲学書評

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#存在

【読解】納富信留「「ある」とはどのようなことか?」

【読解】納富信留「「ある」とはどのようなことか?」

はじめに本noteは、『現代思想2024年1月号 特集=ビッグ・クエスチョン(青土社)』に所収された、納富信留の「「ある」とはどのようなことか?」を紹介するものである。納富はプラトンの専門家であり、本論文はギリシャ語の語源的な「ある」と、パルメニデス、プラトン、アリストテレス以降の西洋哲学の伝統的な探究テーマになった「ある」の意味を対比させた後、「ある」の神秘性や考えることそのものの難しさを述べて

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「なぜ世界は存在するのか?」という問いはどういった問いなのか?永井均『哲学の密かな闘い』を読みつつ

「なぜ世界は存在するのか?」という問いはどういった問いなのか?永井均『哲学の密かな闘い』を読みつつ

問いがもっているべき構造世の中にはたくさんの謎がある。ある不幸な人はこう思うだろう。「なぜ自分だけこんな目にあうのか?」。また、ある科学者はこう思うかもしれない。「なぜこの世界はこのような物理法則に支配されているのだろうか?」。また、ある人はこう思う。「なぜ世界は存在するのだろうか?」と。

どのような問いも共通の構造をもっている。問われているあり方そのものと、それに対比される他の可能性としてのあ

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入不二基義『現実性の問題』「現に」という現実性の、記述可能性、認識可能性、存在可能性

入不二基義『現実性の問題』「現に」という現実性の、記述可能性、認識可能性、存在可能性

はじめに以前所感を書き、別noteで円環モデルを紹介し、さらに別noteで「現に」という現実性を解説した、入不二基義『現実性の問題』を読み解いていく。

「現に」という現実性を解説した際にも登場したが、「現に」という現実性は、記述された内容や輪郭とは独立のものである。だが、そのようなものが存在していると、どのようにして言えるだろうか。本noteでは、私から三つの疑問を提示し、それに対応する入不二の

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