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ボタニカル哲学(後集106)俗世に在れば自由を失う

俗世間を離れ深山に住むと、心は清清しくなり、見聞きし触れるものは皆、素晴らしい趣を感じさせる。例えば、一片の雲や野生の鶴を見るにつけ、世俗を超越した思いが起こり、奇岩や湧き出る泉を見れば心は洗い清められる思いが起きる。また、檜の古木や寒中の梅に触れると、真っ直ぐな生き方が自覚され、砂浜のカモメや群れ遊ぶ鹿と戯れると、邪心を忘れる。もし一回でも、街中の埃にまみれれば、自分と関わりのない事で、自分の立場が危険に巻き込まれてしまう。

つまり、環境というのは人間の生き方に大きな影響を与えるが、純より不純の方が強いようで、白色に黒を僅かでも混ぜれば直ぐにくすみが出るが、黒に僅かな白を混ぜても黒は容易に白くならないのと同じようだ。

言換えれば、達人は、大安心の境地を得ていても、油断すればあっという間に俗人に逆戻りすることを覚えておき、日々精進を忘れてはならないという事。

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