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読書記録

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刹那と本当の強さ

刹那と本当の強さ

 恩田陸さんの『祝祭と予感』を読んで。

素敵な出会い 『蜜蜂と遠雷』を読み終えたとき、もっとこの人たちの日々が見たい!という気持ちになった。そして、このスピンオフ作品の存在を知って、迷いなく購入、あっという間に読了してしまった。

 印象的だったのは、奏ちゃんとパヴェル氏のヴィオラの出会いが描かれた『鈴蘭と階段』と、ホフマン先生と風間塵の出会いが描かれた『伝説と予感』。素敵な出会いという、何かが

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🎼音楽😌

🎼音楽😌

 恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』を読んで。

はじめに 素敵な本に出会うと、もうこの本を超える本には出会えないだろうなという冷静な残念さと、ああもう大切なことは全部この本の中に書かれているという安直な安心感を同時に抱いてしまう。

 この本は、特に後者の色がとても強かった。登場する人物たちに近しい人が、自分の身の回りや、音楽ではないどこかのフィールドにもきっといるんだろうなと思った。

 ホフマン先生

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わたし的なんじゃこりゃ本大賞堂々第1位(番外編)

わたし的なんじゃこりゃ本大賞堂々第1位(番外編)

 一條次郎さんの『ざんねんなスパイ』という本について。

 感想。変。何じゃこりゃ?!何じゃそれ??

 でも、すいすい読み進められて、タイトルの通り「ざんねんなスパイ」な主人公が本当にざんねんで面白い。

 表紙の巨大なリス、その名もきょりす(本当)もいい味出してた。というか君のせいで私はこの本を買った。

 こういうタイプの本は読んだことがなかったけれど、ふざけ倒したコメディみたいで、一冊を通

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時間の花

時間の花

 ミヒャエル・エンデの『モモ』を読んで。
 (何度目かの再読)

感想 時間とは何か、生きるとはどういうことか。そんな根本的な難しいことをテーマとしていながら、そしてときに現代社会を風刺しながらも、読み進める私たちをわくわくさせてくれる楽しい作品。

 モモのように、本当の聴く力を持ち、本当に大切なことを見失わない人でありたいと思う。

時間は奪われ、情報は与えられ モモの物語の中で描かれる「時間

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2日目のおでんの大根のような

2日目のおでんの大根のような

 松浦弥太郎さんの『エッセイストのように生きる』を読んで。

 「エッセイストのように生きる」というのは、日常生活の中で起こる出来事に、自分なりの視点を持って丁寧に向き合い続けていくような生き方。

 素敵なエッセイを書く人は、対象と向き合うことにかける時間や熱量が桁違いで、その結果を言語化するときの言葉選びにも妥協がないのだろうなと思った。「わかる!」と共感できたり「ほー、なるほど。」と学びがあ

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なんで、この人の日常をこんなにも知りたくなるんだろう

なんで、この人の日常をこんなにも知りたくなるんだろう

 くどうれいんさんのエッセイ集『虎のたましい人魚の涙』を読んで。

 虎が(大きいネコ科の動物が)好きで、表紙に吸い寄せられてこの本を買った。表紙に虎がいてくれてよかった。

 なんで、この人の日常をこんなにも知りたくなるんだろう。なんて、周囲の人と人間くさく関わることができる人なんだろう。とにかく、やりとりが、"一歩踏み込んでいる"感じがして少し羨ましくさえなった。

 こととことに、連想した理

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手紙を書くように

手紙を書くように

 喜多川泰さんの『手紙屋 〜僕の就職活動を変えた十通の手紙〜』を読んで。

〇〇さんへ
(このnote記事を開いてくれたあなたへ)

 こんにちは。Rikaです。

 気づけば9月も中旬に差し掛かり、朝晩は心地よい涼しさも感じられる季節になりました。とはいえ日中はまだまだ暑いですね。夏の疲れが身体にあらわれる頃かもしれません。季節の変わり目、どうかご自愛ください。

 さて、〇〇さんは、『手紙屋

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九月の終わりに

九月の終わりに

 瀬尾まいこさんの『その扉をたたく音』を読んで。

あらすじ 主人公の宮路は、29歳無職、ミュージシャンになるという夢を捨てきれず、と言いつつ夢に対する情熱を持ち続けているわけではなく、親からの仕送りで怠惰な日々を送っていた。

 ある日、ギターの弾き語りのために訪れた老人ホームそよかぜ荘で、サックスの天才に出会う。彼は五つ年下の介護士渡部君。その音色に惚れ込んだ宮路は、またその演奏が聴きたくてそ

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