海野リコ(うんの りこ)

複雑なものはムリに簡単にせず、大変だなあ、と思いながら付き合うタイプです。越境するもの…

海野リコ(うんの りこ)

複雑なものはムリに簡単にせず、大変だなあ、と思いながら付き合うタイプです。越境するものに興味があります。国外に結構長く住んでいて、自分でいうのもなんですが、多くの面白い人達と出会いました。ここではその人たちにインスパイアされたことを書いていきたいと思います。

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  • タンゴを踊る人たち

    アルゼンチンタンゴ、一体どんな人が踊ってるの? アマチュアからプロまで、いろいろなダンサーにズームインして、彼らの物語をつづっていきたいと思います。

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Oblivión【忘却】

あらすじなぜこんなに惹かれてしまうのだろう? 恭子は自分よりずっと若い「翔」への気持ちを持て余す。二人の危ういバランスは、アルゼンチンからやってきた天才的ダンサー、ディエゴとチェチリアの存在によって崩れていく。白熱する刃のような彼らのタンゴは、恭子と翔をだけでなく、触れるものすべてを変化させずにおかない。やがて変化は大きな循環となって現れ、忘れられた過去が蘇り、未来へのためらいがちな探索が始まる。トーキョーとブエノスアイレス、地球の正反対にある二つの都市で、時間を超えて流れる

    • タンゴを踊る場所

      「ミロンガなんて言われても、普通の人は『はぁ?』ですよ」  う~ん確かに、ウルトラ怪獣? みたいな音の組み合わせだもんね……。いや、でも、普通の人が来るところなんですよ、冗談抜きで。 (タイトル写真 from Wikipedia )  ミロンガ(milonga)とは、アルゼンチンタンゴを愛する人たちが踊るために集まってくる場のことです。小説『Oblivión』でもミロンガのシーンをいくつか書いたのですが、もうちょっと説明があったほうがとっつきやすかったかも、と反省いたしまし

      • タンゴウォークのことを「カミナンド」と言うのは時々聞くけど何か変。でも何が変なの? 長年の疑問がこの記事でスッキリ解決<https://note.com/pinton7/n/n396045fea9a6> Caminandoは現在分詞の動名詞的使用(英語式の誤用)だったんですねー。ピントンさん、どうもありがとう!

        • これもタンゴ、あれもタンゴ【ダンス編2】

           前回に続き今回はダンス編その2。現在踊られているアルゼンチンタンゴのいろいろなスタイルについて、私なりにまとめてみたいと思います。(タイトル写真 from Wikipedia) 1983年以降  アルゼンチンタンゴは、十九世紀末から二十世紀初頭の創成期、1930-1950年代のタンゴ黄金時代、1976-1983年の軍政による抑圧の時期、1983年の民主化後のグローバル化の時代を経て現在の姿になりました。詳しい歴史はあちこちで述べられているのでそちらを見ていただくとして、

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        • タンゴを踊る人たち
          3本

        記事

          今年も大盛況のうちに終わったブエノスアイレスのムンディアル・デ・タンゴ。ウェブでも素晴らしいダンスの映像が見られます。(ただバナー位置がちょっと……。せっかくのフットワークがバナーに隠れて見えない😭)

          今年も大盛況のうちに終わったブエノスアイレスのムンディアル・デ・タンゴ。ウェブでも素晴らしいダンスの映像が見られます。(ただバナー位置がちょっと……。せっかくのフットワークがバナーに隠れて見えない😭)

          これもタンゴ、あれもタンゴ【ダンス編1】

           さて今回はダンス編です。前回お話しした音楽同様、こちらもいろいろあります。アルゼンチンタンゴでないけれど「タンゴ」を呼ばれるもの、またアルゼンチンタンゴの中での異なるスタイルなど、ありすぎて混乱するので、まずはアルゼンチンタンゴ以外のタンゴのことから書いてみたいと思います。(タイトル写真 from Wikipedia) タンゴが街にやってきた!  今回も簡単な歴史から。音楽編でもふれましたように、アルゼンチンタンゴは二十世紀初めヨーロッパを中心に大ブームを巻き起こしまし

          これもタンゴ、あれもタンゴ【ダンス編1】

          これもタンゴ、あれもタンゴ 【音楽編】

           アルゼンチンタンゴとわざわざ国名をつけて呼ばれる、という事はアルゼンチン以外のタンゴもある? ありますよね、それもかなりのバリエーションが。それらがアルゼンチンタンゴとどういう関係にあるのか、推測も含めつつ、筆にのおもむくままに書いてみようと思います。(タイトル写真 from Wikipedia) ヨーロッパ在住、アルゼンチンタンゴの「はとこ」たち  なぜいろいろなタンゴがあるのか? 理解のために、まずはさっくりアルゼンチンタンゴの歴史から。アルゼンチンタンゴはアルゼン

          これもタンゴ、あれもタンゴ 【音楽編】

          タンゴとロックンロール【2】

           暑い時はダンスは少しお休みして音楽、それも少し毛色の変わったタンゴを聴いてみませんか?(タイトルイメージ by Nice M Nshuti on Unsplash)  アルゼンチンは音楽大国、あらゆるジャンルで人気ミュージシャンを輩出しています(神・マルタ・アルゲリッチとかですね~)。その一人、アンドレス・カラマロ(Andrés Calamaro)はラテン・グラミーをとったシンガー・ソングライターで、ど真ん中のロックンローラーですが、アルバム El Cantante では

          タンゴとロックンロール【2】

          タンゴとロックンロール

          アルゼンチンタンゴとロックンロールときいて、何か共通点浮かびますか? どちらも一世を風靡したポップ・カルチャーであること、はじめのうち公序良俗に反する、というイメージを持たれていたこと、どちらも踊れること……。でも、二十一世紀の現在、ファンベースもビジネスのスケールもロックの方が明らかに大きく、二つのミュージックシーンも直接関係ないような……。いやいや、あるんですよ、実は。 (タイトルイメージ by Nice M Nshuti on Unsplash) 例えば?  私がこ

          タンゴとロックンロール

          タンゴを踊る女たち【3】

          「どうしてタンゴを踊りはじめたのですか?」  いつのころからか訊くようになったこの質問は、今まで訪ねた多くのミロンガで、驚くような物語の数々を私にもたらしてくれました。  人生の数だけ物語がある、というのは本当で、様々な場所で様々な生き方をしてきた人の口から語られる話は、よくあることであっても感動的で、信じられないようなことであっても信じたくなってしまうような存在感がありました。今では、私がミロンガに行くのは、踊りたいから、より、人の話を聞きたいから、と言ってもいいくらいで

          タンゴを踊る女たち【3】

          タンゴを踊る女たち【2】

           ニトとエルバを知っていますか? Juan Aurelio "Nito" Garcia と Elba Natalia Sottile はアルゼンチンタンゴダンスの伝説的ペアです。タンゲーロのためのタンゲーロ、タンゲーロの中のタンゲーロ、彼らにはいろいろな称号が捧げられていて、ひょっとしたら名前を聞いた時点ですでに床にひれ伏しちゃってる人もいるかも知れません。彼らについては The Argentine Tango Society がドキュメンタリーも作っているので、私がわざわざ

          タンゴを踊る女たち【2】

          タンゴを踊る女たち【1】

          「言われちゃったよ~。タンゴを踊る女って『ほら、アタシを見て!』っていう感じ、自己顕示欲強~みたいな感じがするよね、って」  あちゃ~。で、なんて答えたんですか? 「……黙ってた」  あー、確かに。そこでムキになって反論しても「ほら、やっぱりね」ってなっちゃいますもんね……。  まあ、誰しも自分のことはよくわからないし、他人が自分のことをどう見てるのか、なんてことはさらにわからない。そこで、他人事として考えてみました――私の知っているタンゴを踊る女たちは自己顕示欲が強いのだろ

          タンゴを踊る女たち【1】

          ハイヒールで踊れますか?

           アルゼンチンタンゴのイメージと切っても切り離せないハイヒール、でも実際タンゴを踊る皆さん(の半数強)にとっては、何かと悩ましいことも多いですよね……。今回はハイヒールに関するアレコレを書いてみたいと思います。(タイトルイメージ by Femme Spirit) まず最初に質問です  どんなダンスでもいいですが、一番初めに踊った時、どんな靴履いていたか覚えていますか? お母さんのおなかの中とかだと裸足ですが、幼稚園のお遊戯会などだとゴムの上履き、バレエの発表会でもはじめは

          ハイヒールで踊れますか?

          Obliviónの音楽

          はじめに 海野リコです。こんにちは。記事に来ていただいてどうもありがとうございます。また、小説「Oblivión」を読んでいただき、またいろいろな感想もいただいて本当にありがとうございました。  さて、ここでは何件かお問い合わせのあった、小説の中に登場した音楽について書いてみたいと思います。 (タイトル写真 by Preillumination SeTh) 1.Oblivión  タイトルにもなっているOblivión、忘却、はアストル・ピアソラ作曲の超有名曲。メランコリ

          はじめに:事実は小説より奇なり

           はじめまして海野リコです。なぜnoteを始めたかというと、書いたものを発表する場が欲しかったからです。こういうと、真面目に小説を書いてきた人のように思われるかもしれませんが、そうではありません。つい最近まで小説を書こうとも、書けるとも、思っていなかったのですが、ある日突然ウソみたいにお話が流れ出してきたのです。相互に全く関係ない事実の断片が全くのつくり事で繋がって、あれよあれよという間に一つのフィクションになってしまったのは、マインクラフトで遊んでいたら画面から本物のユニコ

          はじめに:事実は小説より奇なり