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旬の魚を使ったビリヤニ作りに没頭した2024
早いもので、今年ももう少しで終わりですね。
私は社会人2年目になり、去年よりは仕事に慣れ、そのぶん趣味に時間を割くことができました。その中で特に時間を割いたことは「ビリヤニ作り」です。
ビリヤニを作るきっかけ
ビリヤニとは、具材を油とスパイスで調理して炊いたインドの炊き込みご飯です。ルーツは中東の方のプロフというラム肉とご飯をクミンやレーズンなどと炊いた料理だと言われています。
インドには色々な種類のビリヤニがありますが、私がハマったのは、グレイビー(具材とスパイスを油で調理したもの。カレーソースと思っていただいても構いません)と半茹でしたお米を鍋の中で層にして炊き上げる、ハイデラバード式のビリヤニです。
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層にして炊くのでグレイビーが染みている部分と白いままの部分とグラデーションになっています。その見た目の美しさとムラがあることで生まれる味の起伏に感動して、自分でも作ってみたいと思うようになりました。
とは、言いつつ、先程書いたようにビリヤニを作るためにはまず現地流のカレーを作る必要があります。インドカレーやスパイスカレーが好きで、時間がある週末は自作もしていたのですが、カレーを作ったところで満足して、そのままご飯にかけて食べてしまいます。
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それにビリヤニは、層にする都合上、ある程度の量の米を使わないと美味しくできません…
なかなか一歩を踏み出せずにいたのですが、ある出来事がきっかけで作り始めることになります。
今年の夏、大学の友人の実家で遊ぶことになりました。友人に最近インド料理にハマっているという趣を伝えました。そうしたら「じゃあ、ビリヤニ作ってよ」と軽く言ってきたのです。私は初めは「時間かかるから…」と言って断ろうと思いました。しかし、よく考えるとこの機会は絶好のチャンスです! ある程度の人数が集まること、広めのキッチンが使えること、(夏休みだから)時間も
ある…
「めっちゃ美味いビリヤニ作ってあげるよ」
根拠のない自信と勢いでこう答えました。
そこから私のビリヤニ・ストーリーは始まったのです。
チキンビリヤニ
初めて作ったのはチキンビリヤニでした。
バスマティライスを30分水に浸し、サフランは40分水に浸します。その間に、
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フライドオニオンを作り、
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チキンのグレイビーも作ります。油を鍋底がヒタヒタになるまで入れるのと、トマトにしっかり火を通して酸味と青臭さを抜くのがコツ。水は使わず具材から出る水分だけ。
スパイスが色々入りますが、工程は極めてシンプルでした。
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先程水に浸していた米は水気をよく切って、ホールスパイスと塩を入れてグラグラ沸かしたお湯で茹でます。この後に具材と炊くので、ちょっと芯が残る(パスタでいうアルデンテ)くらいに茹でるのがコツ。大体5分くらいで丁度良い固さになりますが、鍋によって煮え方が違うので、最後は自分の感覚と味味が頼り。早すぎたら固くてまずいし、遅いと炊いた時に米がぼろぼろベチャベチャする。ここぞ!というとき一気に火を止め、流しに鍋を持っていき湯切りをする。この数分をミスったりとちると、今までの時間やお米が無駄になってしまう。ビリヤニ作りで1番緊張する場面です。
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最後にグレイビーと茹でた米を重ね、層にしていきます。1番上には、バターとサフランで色をつけた水をかけます。これで蓋をして火にかけると、具材やスパイスの香りを纏った空気が上部にあるお米に移るのです。日本が旨みを重ねる食文化だとするなら、インドは香りを重ねる食文化。ビリヤニはその特性が最もよく活かされた料理かもしれません。
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炊く時間は大体30分。最初の3分くらいは強火にして、あとは弱火〜とろ火にします。火を止めたら10分間蒸らします。これだけで合計40分。ビリヤニはスロウフード。せっかちな人には向いてないかもしれません。(かくいう私もそそっかしく落ち着きがないタイプなので、この間にビリヤニによく合うヨーグルトサラダのライタや他のおかずを作ることもあります。)
40分後、蓋を開けると、サフランやカルダモンの甘い香りの蒸気が私たちを向かい入れるかのように鼻腔をくすぐり、米は待ってましたと言わんばかりにプリッと反っています。
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初めて作ったビリヤニは、チキンの味とスパイスの香りが穏やかに重なり合う味で、私はその出来に大変満足しました
この満足度は味というよりむしろ、大きなミスなくやり切れた達成感だったかもしれません。
ビリヤニ作りの課題
しかししばらくして冷静になると、徐々に課題が見えてきました。
・米にもっとコシが欲しい。蓋を開けた瞬間にもっと反り返っていて欲しい
・塩味が足りなくてインパクトがない
・自分らしさが欲しい
最後のは課題というよりエゴとか意識の問題。そもそも初心者なのに「自分らしさ」を求めるのは間違っている気はするのですが…。ですがしかし「美味しいビリヤニだったらインド料理の名店に食べに行けば良いよな」とも思うのです。折角なら、他所ではあまり食べられないビリヤニを食べたい!「これをビリヤニにしたら美味いんじゃない?」と思うものを作りたい!と思い立ちました。
魚ときのこビリヤニへの挑戦
そこで考えたのが「旬の食材」を使うこと。インドにも四季はありますが、日本ほどそれが料理に影響されていないように感じます。折角、日本にいる日本人の自分がインド料理をやるんなら、日本の食材の良さを活かした方が良い。あと、旬の食材って安いし状態もいい。
旬の食材でビリヤニに合うもの。つまり風味や旨みに個性があるものというと魚ときのこでしょう。自分はインド料理の中でも特に魚カレーが好きでよく作っていたので、これなら自分の個性も活かせる!と思いました。
魚ときのこでビリヤニを作り続ける日々
鉄は熱いうちに打て!!
チキンビリヤニを作った次の週から、さっそく魚ときのこのビリヤニを作り始めました。
平目と舞茸のビリヤニ
初めて作ったのは、平目と舞茸。
平目は脂のノリはありつつ、クセがなく調理しやすいということで選びました。きのこは、水分があまり出ないで且つ旨みも期待できそうなエリンギをチョイス。
平目はミャンマー人が営む魚屋で激安で購入。
身質はかなり良かったのですが、いかんせん生臭かったので、塩をふって臭み抜きをしました。魚の生臭さの成分は水に溶けるので、塩を振って浸透圧によって脱水させます。
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そして更にそれをヨーグルトとレモン、香辛料に漬け込み揚げていきます。魚の臭みはアルカリ性なので、ヨーグルトやレモンなどの酸性のものに漬けることで中和させます。スパイスや素揚げも臭み対策です。ベンガル地方では川魚の臭みを消すためにこのような調理法をすることが多いです。
こんがり狐色になった平目は、臭みなどなく、寧ろ食欲を刺激するような香りでした。
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また、スパイスの配合もチキンの時とは大きく変えました。
チキンビリヤニの時に軸にした、カルダモンやクローブやシナモンは、スモーキーな風味や鮮烈な爽やかさがあります。これは肉の強い旨みには良いのですが、淡白な白身魚と合わせると素材の味が活きなくなってしまいます。
そこで、それらのスパイスを半分に抑え、代わりに、フェンネルやコリアンダーシードという爽やかだけど柔らかさもある香りを軸にしました。ビリヤニにはあまり使わないスパイスなので吉と出るか凶と出るか…
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それ以外はチキンビリヤニと特に変わらない工程で作りました。
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蓋をして炊きます。
2回目になると順調に進んでいきました(…と思ったらサフランを水に浸すのを忘れていました。ビリヤニ作りは工程が多くて大変。)
完成
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平目の味は淡白ですがしっかり旨みとなって立ち上がっていたかなと思います。舞茸も後方で旨みをバックアップしています。スパイス使いをかえたのもかなり功を奏していました。
スパイスは香れば良いというのではなく、あくまで食材の風味や旨みを引き出すものという意識に変わりしました。
反省点としては、
・グレイビーが少なく下の方が焦げてしまったこと
・味のフックがあまりなかったこと
・米はふんわりはしてるがあまりコシがなかったこと
でした。味と食感を立たせることが目下の課題になりました。
鰤と舞茸のビリヤニ
平目は美味しかったけど、インパクトという点では少し弱かった。そこで、次に選んだのは鰤。脂がたっぷりのりつつ、平目よりも濃い旨みがあります。舞茸は続投。
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前回以上に臭み抜きの塩当てを徹底し、マリネするスパイスにはガラムマサラという香りの強いミックススパイスを入れました。また揚げ油はサラダ油と、風味の強いマスタードオイルを2:1で混ぜて使いました。
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出来上がったグレイビーは前回よりも、エッジがあり、旨みも強く、かなりの手応えを感じました。
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そうそう、前回と前々回はコヒノールという銘柄のバスマティライスを使っていたのですが、今回はインディアンゲート・クラッシックという銘柄に変えました。湯取りの時間も20〜30秒程度早めました。
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更に今回はもう一工夫。
実は今回、鰤は2種類の部位を買っていました。身がしっかりしている部位は揚げてグレイビーに入れたのですが、脂の強いハラミの部分は入れないで残しておいたのです。それらにじっくり火を入れてソテーし、浮き出た脂と共に米の上にのせます!
ビリヤニは下層部のグレイビーからでる蒸気を米に纏わせて炊く料理ですが、それだけでは流石に食材の旨みは米に染みない。そこで、具材を上にのせることをひらめきました。具材から滴る脂を米に染みさせることで、より濃厚な味のビリヤニにしようと考えたのです。
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前回は少し焦がしてしまったので、今回は鍋中の音を確認しながら、慎重に火入れしました。そして、炊き終わってからの蒸らしの時間を10分→15分にしました。どうやら、米は蒸らす過程でピンと立ち上がり、コシが生まれるそうです。
完成
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これは会心の出来でした。鰤の味がかなり濃厚で、米にもシコシコした弾力が生まれました。鍋底の焦げもありません。
今でもこのビリヤニはクオリティの面で言ったら最高傑作かもしれません。
しかし、ものづくりの性とでも言いますか、「自分のシグネチャーになるような、もっと個性的なビリヤニを炊きたい」と思ってしまったのです。
カマスと白舞茸のビリヤニ
スーパーにはあまり並ばないようなクセの強い魚を探しに魚屋さんへ。手に入れたのはこんな魚です。
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カマスです。
平目や鰤が高級魚だとするならコイツは下魚。強い旨みを持つのと引き換えに、かなり臭いがきつい魚です。また、身が柔らかいので、すぐに身崩れしてしまいます。
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とりあえず3枚におろして、塩をして脱水。キッチンペーパーで拭き取って、スパイスとヨーグルトでマリネして一晩冷蔵庫に置きました。身がかなり柔らかいので、いつものようにグレイビーに入れたら跡形もなく崩れそう…うーむ
悩んでいたら、「うっ!」
流しから生臭い刺激臭がしました。見てみるとそれは、先程捌いた時に出たカマスの頭とアラでした。
それを見た瞬間、解決策が閃きました。
こいつら(頭とアラ)でグレイビーを作ればいいんだ
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一晩かけて丁寧に脱水と臭み抜きを行ったカマスはかなり爽やかな風味になっていました。それでも多少のクセがあるので、目には目をクセにはクセをと言うことでマスタードオイルをサラダ油と4:6で使うことにしました。更にテンパリングスパイスには、コリアンダー、フェンネルに加え、アジョワン というベンガルや東南アジアで使われる爽やかかつクセが強いスパイスも加えました。
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玉葱を揚げて、トマトを入れるタイミングでカマスの頭(こちらもヨーグルトと香辛料でマリネしました)を投下。ヘラという名のしゃもじでグサグサ潰しながら揚げ炒めていきます。しっかり油で揚げることで臭みを飛ばし旨みを引き出します。途中で白舞茸も加えて、水分が抜けるまで炒めます。
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完成したグレイビーは魚の頭のゼラチン質が出てきてかなり濃厚。トマトは青臭さや水気は飛ばしつつ、ややフレッシュさが残るように仕上げました。
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身の方はサッと片栗粉をつけて竜田揚げ風…いや、フィッシュ65にしました。(チキン65という鳥の唐揚げがインドにはあるのです)
揚げると身の表面は固まり、それでいてカマス特有のフワフワ感も楽しめます。
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さぁ米を炊きます。今回はカルダモンを軸に、八角、クローブ、ローズなどで構成しました。シャープな風味にしたかったので、シナモンは入れなかったような。
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グレイビーを下にしてその上から米、最上階にカマス65をのせました。身崩れを防ぐのと、脂や旨みを米に染み込ませるためです。パクチーとレモンをこのタイミングから入れて、臭みを抑えようとしました。ちょっと上にゴテゴテのせすぎかな…
始め3分は強火、その後27分弱火、そして15分蒸らしました。
この時はIHで作ったので、細かな調節ができず不安でした。
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炊き上がりました!!魚の美味そうな香りとフェンネルやアジョワンの爽やかな香りが漂っております。
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いつものターリーがなかったので、雑貨屋で買った陶器に盛ります。これはこれで可愛い。
赤玉葱とトマトのライタ、レモンもつけました。
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美味しい。かなり強い旨みはあるけど、しっかり米の香りと共存している。スパイスとマスタードオイルでカマスのクセを良い方向に持っていけたかなと思います!!トマト感が強いのも今回は功を奏したかも。
バスマティライスはコヒノールを使いました。ふんわりエアリーに炊けましたが、少々物足りなさを感じました。銘柄の選定や浸水時間などを見直す必要があると感じました。
あと、底が全く焦げなかったのも安心しました。
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因みに今回のビリヤニは、インド料理界では著名な東京マサラ部の親方とエリックサウスの料理長である稲田俊輔氏に食べていただきました。内心ドキドキで震えていましたが、
「お店レベルの味」「酸味の立たせ方が良い」などの賛辞を送っていただきました。(お二人とも優しい)
憧れの人だったので胸がいっぱいになり、今までの試行錯誤が報われたような気がしました。
タラとミントのビリヤニ
この時は新大久保で大量のある葉っぱを入手しました…
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そうです…ミントです。
インドにはミントをノンベジ料理に使うことが多々あります。ハリヤリティッカというミントをペーストにして肉に漬けて焼いたものや、ニルギリというグレイビーのベースに用いたものなど。
また、火を通すと香りが爽やかさを残しつつマイルドになるので、ビリヤニのグレイビーにも使われることがあります。
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この時はタラと合わせました。旨みたっぷりでクセのないタラなので、初めてのことをするには丁度良いかもしれません。
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タラの身はターメリックやコリアンダーやガラムマサラ、ヨーグルトをよく揉み込んだ後、マスタードオイルでフライしました。南インドとベンガルの良いとこどりです。
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揚げ油は取っておきます。そこにマスタードシード、フェネグリークシード、コリアンダーシード、フェンネルシード、カシミールチリ、カレーリーフなどをテンパリングします。油に香りが移ったら玉葱を入れます。
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玉葱に火が通ったら鱈のアラをいれます。前回のカマスビリヤニの時の方法を応用しました。頭はザクザクと崩していき、火が通ってきたらクラッシュトマトを入れます
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トマトの水気と酸味をしっかり飛ばします。塩をして味見すると…かなり美味い!でも今回はここで終わりではないんです。
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そこにすりおろしたミント・コリアンダーペーストを加えます。
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更に先程揚げたタラの身も合流。馴染ませたらグレイビーの完成です。
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今回使ったバスマティライスは、「ラルキラ・マジェスティック」という銘柄です。
お米の炊き方は大体前回と同じ。今回はミントに合いそうなコリアンダーシードやフェンネルを多めに、シナモンやスターアニスは抜きました。
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グレイビーと湯取りしたお米を層にします。最上部にはギーを乗せ、サフランを浸した水を回しかけ、フレッシュミントを散らしました。
蓋をして、5分間は強〜中火、25分間弱火で炊きます。時間が経ったら火を止めて15分蒸らします。
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サフランの香りの後に白身魚のふくよかな香りがします。ミントはこの段階ではまだ主張してきません。
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盛り付けて完成!!
ミントは強すぎないけど、しっかり爽やかな香りを出してます。味見した段階は苦味があったのですが、完成したビリヤニには特に感じませんでした。それどころか鱈の上質な脂がミントやフェンネルの爽やかさとマッチしています。米もしっかり炊けていました。コシがあってグレイビーの油も吸ってて塩加減もOK
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ただ、ギリギリのバランスで成り立っているのは確かでした。ミントはすり鉢を使って擦ったのですが、若干口にざらっとした質感が残るので、しっかりミキサーやフードプロセッサーを使ったほうが良いですね。買うか…
カジキマグロとエリンギのビリヤニ
大学時代の友人の紹介で、映画研究サークルの方々を招きビリヤニを作ることになりました。9〜10人前!!平目ビリヤニの時に10人前作ったので、人数にはビビりませんが、自分と縁もゆかりもない方々に食べてもらうのはかなり緊張しますが、偏見のない感想をもらえるチャンスでもあります。
試行錯誤で得た成果を発揮する時だ!
この時はかなり意気込んでました。
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今回使うメインの食材はメカジキとエリンギ。
前回、前々回と魚のアラを使ってグレイビーにしたのがかなり良く、コスパ的にも素晴らしかったので採用。(アラって旨みが強くて、火入れしても固くならないのに、めっちゃ安い)
身の方は火を入れすぎると固くなってしまうのでグレイビーとは別工程で調理して合わせます。これはカマスビリヤニの時の応用です。
エリンギは淡白な旨みがあるので、メカジキのアラを後方からバックアップしてもらうイメージです。
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アラも身も塩をして脱水。特にアラは血合いがあるので時間をかけて脱水して、丁寧に血の部分を取り除きます。
それが終わったら、両方ともスパイスでマリネして、身はヨーグルトに漬けて、アラはレモン汁とマスタードオイルに漬けました。
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1時間ほど漬けた身はオーブンでじっくり焼き、
フィッシュティッカ風に仕上げます。フィッシュティッカとは、タンドールで香辛料やヨーグルトに漬けた魚を焼いた料理で、現地でもメカジキが使われることが多いです。
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続いてグレイビーづくりです。メカジキは身質が魚の中ではしっかりしていて、鶏肉っぽさもあるので、魚にも肉にも合うようにスパイスを組み合わせました。アジョワン というベンガルでよく使うスパイスを少量入れました。油はサラダオイルです。
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玉葱は水分が抜けるようにしっかり揚げます。フライドオニオンを作るイメージです。
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玉葱が揚がったらトマトとホールチリ。チリはカシミリチリという辛さが少なく甘い香りのする品種を使いました。(新大久保のグリーンナスコというハラルショップで購入)
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トマトの水分が抜けてきたら、メカジキのアラとエリンギを投入。グツグツ煮ていきます。
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仕上げにコリアンダーリーフを入れて完成。メカジキをマリネした時のマスタードオイルが効いてますね。コルカタ〜デリーあたりで食べられるような魚カレーになりました。エリンギもいい味出してます。参加者の方に試食をしてもらったら「鶏肉!?」という声が。ダイナミックな弾力のあるメカジキのアラは食べ応えがあり、肉っぽいかもしれません。
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次はお米を湯とります。使うのは前回と同じく、ラルキラ・マジェスティック。弾力がありしなやかな甘みもあるので気に入りました。それを50分水につけたら、スパイス湯で煮ます。
メカジキが思った以上に肉っぽいので、シナモンやクローブなどをしっかり入れて赤身の旨さを引き立てるような香りを演出します。また、艶を出したいので、グレイビーを少量加えました
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煮えてきたのでお米を入れます。4分半でタイマーをして、味を確認しつつ5分半くらいでお湯を捨てます。
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なかなか良い感じに炊けました。湯取りも繰り返すたびに上手くなってきた気がします。初めての時は、こんなに綺麗に米が伸びてなかったよなぁ
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グレイビー→米→グレイビー→米と層にしていき、最上階に先程焼いたメカジキの身(フィッシュティッカ)とバター(ギーの代わり)とサフラン水。メカジキから出る脂が米に染み込むのが狙いです。平目ビリヤニの時の応用です。
蓋をして強火で3分、弱火27分、蒸らし20分…
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できました!!魚とサフランとカルダモン・クローブの良い香りが漂ってます。
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お米の立ち方も悪くない!これはかなり期待できます。盛り付けましょう。
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完成!!最高傑作の予感…………
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めっちゃ美味い!!
メカジキが淡白なので、コッテリ目のグレイビーにしたのですが、上品さの裏にストリート的なワイルドをさ感じます。
徹底的に臭みを抜いたアラや血合ををたっぷり入れてるので魚の旨みがすごい。サフランやローズの甘い香りの奥にあるアジョワンやマスタードオイルのベンガリーな香りがアクセントになっています!
米の炊き方や具材の火入れも悪くなく、オリジナリティーもだせたので、かなり満足!!!!
とりあえず、自分のビリヤニ作りの第一章はここまで!!(さいちょー先生の次回作に期待)
私にとってビリヤニ作りとは
この半年、ビリヤニ作りを通して思ったことは、「なんてタイパとコスパの悪い食べ物なんだ!」ということ笑。自分が慣れていないせいでもありますが、米を浸水するところから始めると、完成まで1時間半はかかります。グレイビー作り、米の湯取りなど工程も多いです。魚ビリヤニだと、捌いたり骨を取ったり臭みも抜くのでより時間がかかる…「レンジで3分温めるだけ」みたいな料理と比べたら途方もない手間です。
また、具材は縮んで米は伸びるから、具材は米の1.5倍以上は入れなくてはいけません。更にはバスマティライスの値上がりもあるので、原価で一皿700〜800円くらいします。
じゃあなんでそんなことをするのか?
まず一つは、ビリヤニでしか味わえない旨さがあるから。特にグレイビーと米を別工程で調理して炊き上げるハイデラバード式は、米とグレイビーのグラデーションと、スパイスの香りのレイヤーを味わうと、名画をみているような気分になります。カオスすれすれの構築美があるのです。
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カオスなようで美味くなるように構築しています。
そして、もう一つはファスト的な価値観に抗いたいから。いわゆるタイパとかコスパとか、「負担を減らしていかに満足度を高めるか」みたいな闘争って、本質を見失ってる気がするのです。もちろんビリヤニ作りの時に使う食材は値引き品だったりするので、そういう意味ではコスパを考えます。しかし、それはあくまで美味しいビリヤニを作るための手段であり、抑えたコストで良い油や新しいスパイスに投資するためです。折角好きなことをやるなら、とことん時間をかけて満足いくまでやる。だって、自分が本当に魅力を感じたものなら、等価交換なんかで考えられないんだから。恋愛だってそうでしょ?
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タモリさんが「仕事は適当に、遊びは真面目に」というような言葉を残しています。これはタイパ・コスパに犯された資本主義の病(等価交換の病とでもいいましょうか)に対する、プロトストなライフスタイルの提唱だと私は考えます。
ビリヤニ作りは私にとってまさに最高の遊びであり、抗いであり、等価交換の呪縛からの解放、本当の豊かさを追求する時間なんです。しっかり包丁を使って、火を使って、時間をかけたものを食べる。旬の魚を使って「もう鰤に脂がのる時期なんだなぁ」と季節を感じる…スロウライフ?丁寧な暮らし?いや、人間の本来すべき営みなのかもしれません。旬の魚を使ったビリヤニ作りは大切なことを気づかせてくれます。
大げさに言うのならば、きっとそう言うことなんだと思います。