吉田りぶ

文字を書くのが趣味の主婦。

吉田りぶ

文字を書くのが趣味の主婦。

最近の記事

永遠の一秒

 一週間の疲労から開放された土曜日の朝は、遅く起きてもいい。息子のにっともややお疲れモードで、今日は自宅でのんびりデイだ。  保育園の上履き洗い、の、ついでに園からのお便りにも目を通す。 「バスケの試合の無料招待クーポン、だって」  岐阜の男子バスケットボールのチーム、岐阜スゥープスのホーム試合。岐阜市に住まう幼児とその家族が対象。いつだろう。今日と明日か。 「にっとさん、バスケ見に行く?」  一応、声はかける。形式上、確認しただけだったのに、 「行く。いつの何時?

    • このところのこと

        このところのこと  このところのこと。  みたいな、似た形の文字だったり同じ文字だったりをひらがなで並べて、一見すると読みにくいんだけれど、読んじゃえばありふれている言葉を書く、のが、ちょっとしたマイブーム。  呪文や早口言葉みたいで、唱えたらいいことが起こりそう。別になにも起こらないし、わざわざ読みにくい文を作るのも優しくない、けど、ささやかないたずらをした気持ちになれる。下駄箱の靴を左右逆に置いてみるかのような、一瞬首を傾げてしまいながらも、こないだ間違えてたかな

      • 飴玉のメッセージ

         幼いわたしは泣いていた。青森県にある母の実家からの帰りの電車で。いとこや祖父母との別れが寂しくて。  お盆を過ぎた夏の空は、どこか白けている。年季の入った車体が大きく揺れると、ますます「現実」に投げ出された気分になる。好きなだけ遊んで寝て食べて騒ぐ季節が、夢だったかのように。 「いい加減、泣き止めじゃよ」  横並びの座席の左隣から、母が力なく言う。ボストンバッグを荷物棚に上げてもなお、母は大きな鞄を抱えている。自分のハンカチや飲み物に加えてわたしのジュース、お菓子、お

        • zineフェス岐阜の頒布物③無料配付ペーパー

           いよいよあと一ヶ月となりました。  ……という内容を昨日投稿予定でしたが、どたばたするままに早々に寝込んでしまいました。  前回までは販売します本についてのお知らせでした。  今回は無料配付のペーパーをご紹介、といきたいのですが、現在制作中です。そのため画像でお見せすることはできない状況です。  イメージとしては、  B5サイズ  手書き文字の読みもの (クリスマスにまつわるエッセイ)  となります。  他二冊のご購入はなさらなくても、ふらっと立ち寄ったついでだけで

          zineフェス岐阜の頒布物②鉄道エッセイ「乗り子鉄と揺られ旅」

           zineフェス岐阜に持っていくものの紹介、前回の記事↓の続きです。 乗り子鉄と揺られ旅  全44ページ  B6サイズ  500円  乗り鉄な子鉄息子との鉄道散歩エッセイ。  ただ電車に乗るだけ。  観光したり、土地のおいしいものを食べたりするわけでもなく、乗ることが目的の旅の記録。  全5話収録。 一部試し読み 以下制作小話  noteにも投稿しましたエピソード3本と、書き下ろし2本を収録しました。  名鉄岐阜駅やJR岐阜駅、岐阜羽島駅をスタートとして、近場をが

          zineフェス岐阜の頒布物②鉄道エッセイ「乗り子鉄と揺られ旅」

          zineフェス岐阜の頒布物①エッセイ本「きおくのかおり」

           少しずつzineフェス岐阜に持っていくものを紹介させていただきます。 きおくのかおり  全16ページ  A5サイズ  200円 「記憶」をテーマにしたエッセイ本。  全4話収録。 一部試し読み 以下制作小話  全話note有料記事(現在は非公開)より収録しました。  時々noteにも書いていますが、普段はデイサービスでパートをしています。過去に認知症グループホームでの勤務経験もあり、それがわたしの介護業界デビューでした。それゆえか「ひとの記憶とはおもしろいなあ」

          zineフェス岐阜の頒布物①エッセイ本「きおくのかおり」

          すくう 2(小説)

          (前回の公開から半年もたっている……。)  シャープペンシルを握る。答案用紙に自分の名前を漢字で記入する。高島順哉。カクカクと曲がり角だらけで、四角形の集合体みたいな名前だ。  今日のテストが終わったら、バスケ部で一緒だったメンバーで集まり、明日のテストの教科を勉強することになっている。混ざりたがっているあの子を受け入れるか否か、おれだけの判断では決めかねる。次の十分休みの時間に、同じクラスで、かつ同じバスケ部の坊さんに悟りを求めてみるつもりだ。  今回のテストまでの成績が

          すくう 2(小説)

          二冊の本ができた

           タイトルの通り。  十二月のzineフェス岐阜に持っていく本が、二冊、できました。  我が家におしゃれな撮影スポットがない! ピンクのほうは「きおくのかおり」  A5サイズ。「記憶」をテーマにしたエッセイ。有料記事(現在非公開)から抜粋。五分くらいで読みきれる、お手軽な内容量のため、吉田りぶ入門書のような立ち位置。 写真のほうは「乗り子鉄と揺られ旅」  B6サイズ。noteにも時々書いている、息子との電車旅エッセイを加筆訂正したもの三作+書き下ろし二作。電車旅とは

          二冊の本ができた

          すきぴ・はう・まっち?

          ⚠️アイドルグループを追っていた頃のお話 ⚠️グループ、メンバーに関してフェイクあり  岐阜の自宅から電車を乗り継ぎ、名古屋も栄も矢場町も。二十歳そこそこのわたしは、とにかく彼を追いかけた。  今日は栄の雑貨店一階、広場にて。無料観覧イベントの多いご当地アイドルグループの、みどりくん。黒髪を優しくパーマで丸め、細長い目がとろけた笑顔。どんなに元気でも鼻声みたいな歌声が、脳をほぐす。苦手だというダンスパートでは、厳しい顔つきでただ一点を凝視している。できている自分を見ている

          すきぴ・はう・まっち?

          この頃のこと

          本を作ること  わりと無事に進んでいる。一冊はできている。もう一冊はあと入稿するだけ。じゃあはよしろよって話。ちょっとパソコン環境がままならず、USBにデータを入れて実家のパソコンから入稿しよう! と思うもいろいろ立て込んで実家に行けず。九月中に入稿したかった。来週末に期待。時間を置くとちらほら書き直したくなる。改稿はやり出すときりがない。ほどほどにしなくては。いつまでも完成できない。  本がそろえばいいだけではない。十二月に参加予定のzineフェスは、机と椅子を持参する必

          この頃のこと

          終わりがけのセプテンバー

           夢だとわかる夢だった。  BUMP OF CHICKENのライブにて、何階席なのか数え切れないほどの高さから、ごま粒大のバンドメンバーに熱狂している。ガラスのブルース、車輪の唄、カルマ、天体観測、グングニル。青春時代のテーマソングを生で浴びた。したたる汗がまぶたに落ちて、視界がほのかにかすむ中、アンコールの幕が開ける。静まる会場に響くのは、落ち着いた曲調、セプテンバーさんだ。  BUMP OF CHICKENのボーカリスト、藤原基央氏が、RADWIMPSのボーカリストであ

          終わりがけのセプテンバー

          本を一冊読みきった!

           産後四年半とちょっと。  産んでから初めて本を一冊読みきった!!  なんのことかというと。  九月の上旬のある日、  この日以来に「平日のおひとりさま休日」を得ることができた。やりたいことはたくさんあった。行きたい場所も数え切れない。  今度やってみよう、行ける日に行ってみようとは思っていても、今度とは、はたまた行ける日とはいつなのか。限られた時間の中で、後回しにしたくない順に考えた結果、 ①粗大ごみを出して、 ②行ってみたかった喫茶店で公募のためのネタ帳整理に挑

          本を一冊読みきった!

          実家に泊まって自宅に帰って

           三連休初日の土曜日、息子のにっとと一緒に、わたしの実家に泊まりに行った。  自宅から実家は車で十五分ほどの距離だ。わりと行き来している。そうも特別な「帰省!」という張り切り感もない。ただなんとなく、なんだか自宅のことをやるのが面倒くさくなってしまって、楽をしに行ったのだ。 「ババとおじいちゃんと寝る。ママはあっちのお部屋で寝てね」  夜も八時半が過ぎて、寝室に布団を敷く手伝いをしながら、にっとはにやりと笑った。 「いいよ。じゃあママの布団はあっちのお部屋に敷くね」

          実家に泊まって自宅に帰って

          zineフェス岐阜に申し込んだ

           タイトルの通りです。  バナー↓から案内ページに飛べます。 ▼ZINEフェス岐阜  開催日:2024年12月1日(日)  開催時間:12時~17時  入場料:無料  会場:宝玉会館  〒500-8875 岐阜県岐阜市柳ケ瀬通2丁目3  高島屋とか丸デブ総本家とかの近くです。  二冊持っていく予定です。  どちらもnoteの記事を加筆修正したエッセイですが、一冊は有料記事(すべて下書きに戻しました)から厳選、もう一冊は我が家の子鉄との電車旅シリーズまとめになります。  

          zineフェス岐阜に申し込んだ

           自宅から車を走らせると、お散歩圏内のとある家に、ダンプトラックが二台停まっていた。午後一時。残暑のさなか、玄関は開けっぴろげだ。作業服のおじさんが大きな袋を抱え出てきて、ほいっとトラックの荷台に投げた。  横目に流れた光景に、息が止まる。  ――みかんの木はどうだった?  時速五十キロでの通りすがりを、思い起こそうとしてみても。なかったような気がする、あったけど短く切られていたかな、という程度が精一杯だった。    ▼  とにかく家中あちこち汚い。  床もソファもミ

          煽り運転・イン・コーヒー

           とにかく暑い。連日気温が四十度に迫り、日差しが肌を突き刺す。  ショッピングモールの立体駐車場に停止して、運転席から飛び出す。エアコンが効くより先に到着したからか、車内より屋外のほうが涼しく感じる。後部座席のスライドドアを開ける。滝に打たれたかのような息子のにっとが、ジュニアシートから勢いよく抜け出す。 「あちー! なんだよ、八月っていうのはよお」  教育テレビ以外にもお気に入りの番組が増えた四歳男児は、しゃべりも一人前になってきた。 「ママ、こんな日はまず喫茶店だぜ

          煽り運転・イン・コーヒー