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本を一冊読みきった!

 産後四年半とちょっと。
 産んでから初めて本を一冊読みきった!!

 なんのことかというと。

 九月の上旬のある日、

 この日以来に「平日のおひとりさま休日」を得ることができた。やりたいことはたくさんあった。行きたい場所も数え切れない。
 今度やってみよう、行ける日に行ってみようとは思っていても、今度とは、はたまた行ける日とはいつなのか。限られた時間の中で、後回しにしたくない順に考えた結果、

①粗大ごみを出して、

②行ってみたかった喫茶店で公募のためのネタ帳整理に挑もうとするも、店内の雰囲気がなんとなく合わず、入店しないでそそくさと飛び出し、

③InstagramやnoteやTwitterでよく見聞きするカクカクブックスさんに行ってみた。

 お店の引き戸を開けた瞬間から「また絶対こよう」と心がつぶやいた。普段なら……大型の書店でなら見向きもしないようなジャンルの本ですら、わたしの手を引き寄せた。全部読んでみたい。絶対全部おもしろい。興奮しながらも不思議と静かな気持ちが保てて、


「たろんぺというかたち」の話は後日別記事をば。

 二冊の本を購入した。
 ここで書き出しの文章に戻る。

 息子と図書館によく通うし、わたしの好みの作家の小説も借りる。が、期限内に読みきれない。以前なら一時間半あれば文庫本の小説を一冊読めていたのが、ただ目が文字をなぞるだけで、内容が頭に入らない。文と文のつながりがつながらない。結局は借りた日に少しだけ頑張ってみるものの、翌日以降は開く気力を起こすだけで疲れてしまう。
 小説がだめならと、イラストや漫画も交えた「〇〇のひみつ」「××大全」のような本も借りてみた。どれもとても興味を抱いて選んだはずが、やはり半分が精一杯だった。

 インターネット上で、いつも交流してくださる方々の文章作品を読むことはできる。内容もちゃんと脳裏に描けるし、この方はなぜプロではないのかと思ってしまう方もいらっしゃる。

 こんなに書きたい書きたいとわめいている人間が? 小説の本を理解できないって?

 本当に悲しくなる。
 インターネットで横並びの文字を読むことに慣れすぎたのか。認知機能が低下しているのか。集中力が落ちているのか。おそらく全部なのだけれども。

 カクカクブックスさんで出会った「屋久島ジュウソウ」の森絵都さんの作品には、過去にものすごく影響を受けた。

 午後からダイニングテーブルにひとりたたずみ、読書をはじめる。読める。わかる。森絵都さんといえば児童文学のイメージが強いが、この本はエッセイだ。それがなおのこと近しく語りかけてくるように感じるからか、自然と「ふふ」なんて笑い声まであげてしまえた。
 息子の保育園のお迎えに行く寸前まで、昔と変わりないペースで読み進めた。あいにく平日に休日を得ると、翌日も平日で、しかもまた仕事やなんやに追われるばかりだ。続きを読むべくページをめくったのは、一週間以上たってからだった。日曜日にリビングで息子が遊ぶ様子を見ながら、わたしはそばで、本を広げる。当然ながら「ママ、なに読んでるの?」「い、し、の、ん、お、こ、って書いてあるけど、なに?」と覗いてきては構いたがる。「お山登りの本だよ」「知ってるひらがな、たくさんあったの?」と返し(目についた知っているひらがなを読み上げているだけで“いしのんおこ”なるものが登場するわけではない)、時々音読してみせては「あーいい、いい。おれには難しいから」と息子は逃げる。そのうち自分も絵本の棚からお気に入りを持ってきて、彼は音読ではなく絵の実況中継をしながら、にぎやかに読書をはじめる。
 百パーセントの集中はできなくとも、読み進めることのできる環境だ。それどころか、こうして親子で各々好きな本を読み、気に入ったページは共有できるなんて。とても充実した瞬間だった。

 ひとりの時間がなければ、読書ができないのか。そうではなさそう。この日のうちに「屋久島ジュウソウ」は読みきれた。一冊読みきった! お腹の底から空を飛びたくなる。読んだ。読めた。おもしろかった。計り知れない充実感。
 大好きな、憧れの作家のエッセイだったのが決め手かもしれない。それと、長らく夢見て憧れた書店で購入した本だから、との理由もひとつの秘訣だろう。木のにおいと暖かな静けさに包まれた店内は、はじめての場所なのに、帰ってきたような気持ちを抱かせてくれた。帰ってきた? どこにだろう。入店してから考えていた。いまならわかる。帰ってきた。本が読める自分に、であったらば嬉しい。

 本を読みたくなったなら、これからはカクカクブックスさんを訪れよう。自宅からわりと離れているから、毎月一度とは言わないものの、ある程度のスパンでいいから「カクカク休暇」を取りたくなった。わたしがよりわたしらしく、以前のわたしを取り戻すためにも、文字の刺激がほしい。無理なくリハビリすることで、きっとわたしの書くものがまた、新しくなるはず。

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