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豊川稲荷 東海地方の歩いて行ける駅近観光スポット ①

モーターリゼーションによってマイカーが普及しつくしたが、維持費がかかるマイカーを敢えて所有しない方も増えてきた。クルマ社会である東海地方も例外ではない。自家用車を使わない行楽には、公共交通機関を頼る場合が多いが、実際には目的地の最寄り駅から歩いて行くには、ちょっと遠い場合が多いことにお気づきの方も多いだろう。郊外に行くほどその傾向は高まる。
しかし、行楽ガイドブックにはおすすめのランチやアクセス方法が事細かに書いてあっても、駅から楽々歩いて行ける観光スポットだけを特集したガイドブックは皆無に等しい。この不公平な状況に、ドライブ特集はあんなにあるのにと憤る向きも少なくないのではないか。
かつては0泊2日で下道を飛ばして遊びに行った私も、フリーきっぷの気ままな日帰り旅に心惹かれるようになった。そこで、駅の改札口から歩いて10分以内で観光エリアに差し掛かる観光スポットのみを特集することにした。
東海三県(愛知、岐阜、三重)に加えて、JR東海青空フリーパスにおけるフリー区間と、その範囲内にある私鉄を含む鉄道駅を対象とする。複数の該当する駅およびスポット間を、短時間で移動できる場合は、一つの記事にまとめることもある。

JR東海 青空フリーパス 有効区間

今回は、豊川稲荷を中心に、JR豊川(名鉄豊川稲荷)駅、JR三河一宮駅、豊橋(JR・名鉄)駅、JR二川駅をめぐる。また、JR名松線についても触れる。


狐だらけの「寺」

豊川稲荷は日本三大稲荷の一つに数えられることもある。稲荷なのに神社じゃないのは、豊川稲荷が神仏習合の名残を留めるからだ。
日本は古来より、神社の境内に神宮寺があり、神も仏も一緒に祀っていた。明治になって朝廷をいただく政府が樹立され、国家神道を進めるにあたり、神社と寺は明確に区別されるようになった。

豊川稲荷は正式名を「妙嚴寺」と称し、山号を圓福山とする曹洞宗の寺院です。
一般的に「稲荷」と呼ばれる場合は、「狐を祀った神社」を想像される方が多数であると思われますが、 当寺豊川稲荷は正式名を「妙嚴寺」と称し、山号を圓福山とする曹洞宗の寺院です。

一般的に「稲荷」と呼ばれる場合は、「狐を祀った神社」を想像される方が多数であると思われますが、 当寺でお祀りしておりますのは鎮守・豐川吒枳尼眞天(とよかわだきにしんてん)です。

豐川吒枳尼眞天が稲穂を荷い、白い狐に跨っておられることから、 いつしか「豊川稲荷」が通称として広まり、現在に至っております。

豊川稲荷ホームページ 当山の歴史

そんな訳で、豊川稲荷は独自の立ち位置から、寺なのに稲荷と呼ばれるようになって今に至る。

夥しい数のキツネ像が並ぶ霊狐塚

豊川稲荷の目玉は何ともいっても霊狐塚れいこづかだ。奥の院をめぐるとそのいちばん奥に狐が千体ほどある空間に行き着く。そんなに見つめられたら狐に憑かれてしまうと思うほど狐でいっぱいだが、しばらく経つと不思議に慣れてくる。

狐といえば稲荷寿司だ。もちろん豊川稲荷の名物でもある。あらかじめぶっちゃけた本音を書いておくぞ。稲荷寿司は参道で食べるよりも土産や弁当として、帰りに駅で買うほうが良いな。作り立ては美味しいが、持ち運びができる食品なので、時間が経ってからでも美味しいように計算して作られている。何より荷物になるし、その日に食べられる量は限られているからな。壺屋は豊川駅改札外と豊橋駅改札内にあり、稲荷寿司の持ち帰りだけでなく麺類などの軽食もとれる。ちなみに、三河は濃いめの味付けが地域の伝統と言ってもよい。

変わりいなりも多くあるようだが、スタンダードなもののほうが美味しい。

豊川閣の呼び名も納得する豪壮な本堂

立派な本堂では、ずらっと横に並んで礼拝らいはいできるほど間口が広いが、それでも初詣の参拝客を捌ききれずに、境内の外までびっちりと並ぶ。商売繁盛のご利益があるとされており、自営業の参拝客も多いという。

観光客の分散を唱える私が、初詣スポットとして豊川稲荷をお薦めするのは些か気が引けるが、季節を問わずに訪れてほしい。

三が日は身動きがとれないほどに混雑する 東日新聞(2013年)

豊川いなり表参道

昭和の香り漂う参道の商店街は、多くの土産屋や飲食店が立ち並ぶ。中でもヤマサちくわ豊川稲荷表参道店がお薦めだ。ヤマサのちくわは豊橋名産としてあちこちで売られているが、ここでは焼きたてを食べられる。

香ばしい

門前にもヤマサの店があるが、こちらはこの年末年始にリニューアルオープンする予定だ。何せ正月は混雑でとんでもないことになると予想されるので、表参道にも店があることを知っておいて損はないね。

東三河の郷土料理が多く提供される店がカドヤだぜ。

豊川閣妙厳寺 JR飯田線豊川駅・名鉄豊川線豊川稲荷駅 徒歩6分

豊橋駅近辺で味わうご当地グルメ


豊橋のご当地グルメは、菜飯田楽豊橋カレーうどん、喫茶店のモーニングサービスなどが挙げられる。
豊橋カレーうどんは、うどんに加えてご飯までカレーソースに入っているのが特徴だ。

昔懐かしい定食屋の一福食堂はカツ丼が美味かった。

豊橋のおやつといえば、ボンとらやの「ピレーネ」だ。スポンジで生クリームなどを包んでいて食べやすい。お土産にちょうどいい。

名古屋めしのあんかけスパだが、東の雄がスパゲッ亭チャオだ。ちなみに、私はあんかけスパではピカタが好きだな。

古き良き昭和喫茶の風花モーニングメニューが人気。

風花のモーニング

豊橋では餃子も好まれる。遅くまで観光したら立ち寄りたい「赤のれん」。浜松餃子とはどう違うのだろうか?

菜飯田楽は駅ビルのカルミアにあるみかわの郷で食べられる。挙げた店はいずれも駅から徒歩で5分以内に位置するので、乗り換えついでにブラついてみたい。

三河國一宮

砥鹿とが神社

霊峰本宮山に奥宮、平野部に里宮が鎮座し、大己貴命おおなむちのみことを祀る。実に1300年以上の歴史を持ち、平安時代には延喜式内社に列せられた。里宮には荘厳な檜造りの社殿や、欅や楠の大樹が茂る鎮守の杜に囲まれる。
JR豊川駅から一駅の三河一宮駅から歩いてすぐなのは里宮だ。

地域を代表する立派な神社だが、歩き疲れるほどに境内が広いわけではない。なお、近隣にお薦めできる飲食店は見当たらなかった。初詣や例祭では屋台が出るが、食事を済ませてから向かうと良い。あちこち周りたい方は朝一番に砥鹿神社からスタートしよう。
奥宮と併せて訪ねた記事を見つけたので参照していただきたい。

JR飯田線三河一宮駅 徒歩6分

のんほい

「のんほい」とは三河弁だが、尾張人の私はこの言葉を直に耳にしたことがない。豊橋総合動植物公園の愛称がのんほいパークである。

動植物園などいくつかのゾーンが合わさった総合公園で、言うまでもなく家族連れが多い。なぜか猿のマンドリルが多く飼育されており、ユーモラスな仕草を見せてくれる。「マンドリルをからかわないでください」だったかの注意書きに逆らって、猿真似をして挑発したら、マンドリルが激昂したのは胸の内に秘めておきたかった思い出である。

マンドリル

東三河はうずらの飼養が盛んなので、日本で唯一という「うずらプリン」の店がある。のんほいパークとは逆方向だが、駅から歩いて7分程度だ。

豊橋総合動植物公園 JR東海道線二川駅 徒歩6分

オマケに、危機に瀕する名松めいしょう

駅近観光のテーマとは外れてしまうが、仕事帰りのコンビニで中日新聞夕刊1面にエモい記事が載っているのを見た。地方鉄道の現状と未来は決して明るいとは思えない。このシリーズを始めるにあたって、不採算路線について考えてみよう。名松線が早晩に廃止されるとは思わないが、ローカル鉄道に乗るなら今のうちである。

始発から終電まで、記者が伊勢鎌倉駅に張り付いたところ、この日の乗降客はたった4人であったという。
名松線とは、名張と松阪を結ぶ計画で、それぞれから一文字ずつとったものであるが、名張までは開通せずに未成線となったままである。2009年の台風被害によって家城いえき伊勢奥津いせおきつが豪雨のために不通となり、復旧工事が終了し全線営業再開したのは2016年であった。

地域住民の熱い想いがあってこその復旧だが、白山高校の最寄りになる家城駅から終点までは、ほとんど乗客がいないのだ。
名松線は、沿線地域の観光施設はめぼしいところで美杉リゾートくらいしかない。美杉リゾートの送迎サービスは、近鉄大阪線榊原温泉口駅がメインで、最寄りの名松線伊勢八知駅には予約しないと来てくれないという。

終点の伊勢奥津駅周辺は、神宮への参拝道である伊勢本街道の奥津宿が置かれた場所であり、なかなかに風情がある。
駅に隣接する観光施設では、地元の手作りの品が購入できる。

緑に包まれた山あいを縫うように走る名松線だが、多額の赤字はバス路線に転換すれば解決するものではない。滋賀県のローカル私鉄近江鉄道は沿線自治体との協議の末に、バス転換は困難とのことで路線存続を決定した。不採算路線の存廃問題の答えは一つではないことは確かである。多くのローカル鉄道が観光路線化によって採算が取れる見込みは薄いが、少しでも経営難を助けたいものである。

鉄道輸送は曲がり角を迎えているが、一度に大勢を運ぶことができるので、観光には欠かせないインフラである。日頃は自家用車で移動する方も、たまには鉄道で移動すれば、いつもと違った風景が見られるだろう。

最後に、駅から散歩をテーマに動画撮影しているクリエイターを紹介しよう。

今後も忘れた頃に、記事を追加するので長くお付き合い願いたい。


次回は、焼き物のまちを散策するとしよう。


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