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ときめきは膳所から始まる 成瀬が教えてくれない大津観光案内 ①

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成瀬聖地巡礼には、一般観光客向けのスポットが2箇所しかない

成瀬シリーズでは膳所ぜぜ高校に通う成瀬あかりが体験した大津が書かれているので、登場するスポットは成瀬が日常的に利用した施設や飲食店が主となる。著者の宮島未奈も大津の情報発信に熱心だが、ホームページではふらりと立ち寄った店やいつも利用する施設を取り上げることが多い。
したがって、成瀬シリーズで大津に興味を持って、とりあえず観光してみようという人が膳所界隈を訪れたら拍子抜けするかもしれない。古くから膳所に住む人々の普通の暮らしがあるのみだから。
大津市全体で見ても、成瀬聖地巡礼一般観光客向けと言えるスポットは、大津港発着のミシガンクルーズと、かるたの聖地近江神宮2箇所に限られる。湖の駅浜大津おいしやも観光客向けだけど、土産屋兼レストランだから店舗のカテゴリーに入るか。
成瀬は「びわ湖大津観光大使」としての仕事を、本作の中では本格的にしていないと言えよう。

ミシガン就航を告知するポスター 1982年
実写版映画『ちはやふる 結び』のポスター 2018年

遠方からお越しの方へ

成瀬が扱っていないスポットを紹介する前に、注意事項を一つ述べておく。遠方から滋賀県にお越しの方は「滋賀県に行くなら、彦根城を見てひこにゃんに会いたい。その後で成瀬に出てきたときめき坂に行こう」と考えがちだ。

国宝彦根城天守閣とひこにゃん

彦根城はササッと見てすぐに移動するだけではもったいないほど見どころが多いし、彦根城から膳所までの移動は、乗り換えアプリで調べた以上に時間がかかるものだ。そもそもの前提として、彦根城に寄りたい人が膳所をどうしても外せない行き先に挙げることは、成瀬の登場前にはおそらくなかったはずだ。鎌倉の「スラムダンクの踏切」は眼前に海が広がる絶景ポイントだが、漫画やアニメが評判になる以前は、特に顧みられることはなかったのと似ている。あの踏切を眺めることを目的に訪れるのは、やはり作品の世界に浸りたい人だろう。

鎌倉高校前にある「スラムダンクの踏切」

あくまでも膳所に関しては、聖地巡礼として成瀬になりきるか、テレビ東京『出没!アド街ック天国』気分で回ることをおすすめする。私は後者のスタンスで訪れる人を念頭に書き進める。

「ぜぜさんぽマップ」(絵・米村知倫)

成瀬シリーズで敢えて触れていないのは、彦根城のような権威ある観光施設であり、成瀬の目線で体験できるのは「毒がないディープ大津」とイメージすると良い。つまり、彦根城にも行きたいなら、距離的にも趣向的にも一緒くたにしないほうがいいので、無理をせずに日を改めて分けて訪れるべきなんだな。

膳所は2回に分けて案内する。

ときめき坂の角を曲がると

膳所駅(JR膳所、京阪膳所)から琵琶湖へと下る「大津の竹下通り」と称されるときめき坂には、魅力的な飲食店や商店が並ぶ。
緩やかな坂を下ると成瀬の看板の前を通る。成瀬が塩コッペを買ったよりみちぱんは、ときめき坂を右手に入った小路にある。

その突き当たりが、ときめき坂の終点となる西武大津店跡地だ。ここからが私の案内になるが、西武近くのOh!Me大津オウミおおつテラスに行く前に、手前の角を左に曲がってみようぜ。

ルートマップ(ときめき坂)↓

義仲寺ぎちゅうじ

この道が旧東海道になるが、ほんの1分も歩かないうちに質素な門の前に着く。粟津あわづの合戦でこの地に散った木曾義仲きそのよしなか(源義仲)の墓があるので義仲寺と呼ばれる。本堂は義仲が朝日将軍の異名を取ったことにちなんで「朝日堂」と名付けられた。俳人の松尾芭蕉が生前より「義仲公の横で眠りたい」と遺言し、弟子達が遺志に従ってこの境内に葬った。
お寺の奥さんらしき方が丁寧に説明してくれた。
奥の離れのような「翁堂」の天井には、伊藤若冲いとうじゃくちゅうの天井画が奢られている。

伊藤若冲の天井画

境内には、義仲を弔うためにこの寺を創った側室の巴御前を供養する「巴塚」や、義仲寺の再興に尽力した保田與重郎やすだよじゅうろうら篤志家の墓碑がある。
芭蕉の句碑を始め、多くの碑が並んでいる。
「粟津文庫」と「身余堂しんよどう(保田の邸宅の庵号にちなむ)文庫」には、関連する史料や句集などが収められており、俳句好きや史料好きにはたまらない寺だね。

義仲寺は町人屋敷程度の広さだが、ところがどっこい境内全体が国の史跡に指定されている。

古民家カフェSORA

ここで豆知識を一つ。大津市はパンとコーヒーの購入額が、なんと全国1位の「コーヒー王国」なのだ。ちなみに2位は隣の京都市だ。
もういっちょ豆知識。大津は日本茶発祥の地でもあるが、発祥については別の回で触れる。

義仲寺の西隣(山門を出て左手)に自家焙煎の古民家カフェSORAがある。

もちろんコーヒーも美味しいが、この店の名物は客自らが七輪で餅を焼くぜんざいだ。焼きたての餅を入れるとこんなにも香ばしくなるのだよ。

ぜんざい

都湯

一汗かいたらあるいはお帰り前に、ぜひ立ち寄ってほしいのが都湯だ。
大津には8軒の「町のお風呂屋さん」が残っており、湯船に浸かれば地域の絆を感じられる。
都湯は小さな銭湯だが、サウナも水風呂もある。洗面器がケロリンなのも嬉しい。

都湯は主人が廃業しようとしていたところを、若い人が名乗り出て引き継いだので、いかにも成瀬が好みそうなデザインのオリジナルグッズを販売している。旅の記念にお土産として持ち帰りたい。ネット販売もしているよ。

来春OPEN予定 たねや「ラーゴ大津」

琵琶湖を目指すと、由美浜にある大津湖岸なぎさ公園(市民プラザ)には、たねやラーゴ大津」が建設中だ。

たねやといえば、ラ・コリーナ近江八幡が大人気だが、ラーゴ大津の用地になった市民プラザはそれほど広い区画ではない。おそらくラ・コリーナがオープンする前から近江八幡にある日牟禮ひむれヴィレッジよりも、少し小さい程度の販売が中心の店舗になると思われる。

ラーゴ大津のロゴマーク たねやホームページ

激混み必至なので、オープン直後と車での来訪は避けような。


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