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2053年、インデックスファンドもアクティブファンドも無くなっている未来を妄想してみた話

鎌倉投信社長 鎌田さんのポストです。

リスク、リターン。この2つの尺度ではない「第三の価値観を」「三つ目を」という問い。僕も投資家の一人としてここのところ、ずっと考えていました。

こうしたことを考えるそもそもの出発点。

それは「アクティブファンド」という括り方、分け方には無理があると考えていました。これが出発点です。

あのファンドとこのファンド、まるっきり違う、全然異なる、extremely different。しかし、です。なぜか同じ「アクティブファンド」として一緒くたにされて認識されている。分けられている、分類されている。

こうした現状には強烈な違和感がありました。


強烈な違和感から第三の価値観を探していた

アクティブファンドの中でも、あのファンドとこのファンドを分つ明らかな要素は、投資の意思決定者が「企業価値を探究しているか」という点でした。

たとえば、この記事です。

投資の意思決定者、ファンドマネジャー、投資会社が「企業価値を探究しているか」、その姿勢、行動をアセットオーナーに示しているか、説明しているか、です。

そこから「企業価値を探究しているファンド」という概念にまとめてみました。対概念は「企業価値を探究していないファンド」ということになります。

↑の記事は、アクティブファンドを対象に述べています。しかし、よく考えてみると、インデックスファンド・パッシブファンドこそ「企業価値を探究していないファンド」の代表格です。なぜなら、それ自身、その投資の意思決定者自身は、企業価値を探究することは一切無いからです。

ベンチマークに採用された銘柄を目標のウエイトに揃える、合わせに行くのが彼らの投資行動ですから、企業価値ではなく株価のみを頼りに意思決定しなければならないはず。投資先の事業、解決している課題にはお構いなし、考慮されません。

なお、世の中には、時価総額=企業価値 という捉え方をしている人が散見されます。が、僕は「株価と企業価値とは違う」という立場です。すなわち、時価総額は企業価値ではなく企業”価格”です。

"Price is What you Pay, Value is What You Get"  バフェットさんのいう通り。

分け方のセンス、力

「企業価値を探究しているファンド」「企業価値を探究していないファンド」と分けてみたものの、自分でもなんかイマイチだな、パッとしないな、と物足りなさを感じていました。

楠木建さんと鹿島茂さんの対談記事でこんなやり取りを見つけました。

デカルトの第2原則「分けて考えよう」は非常に重要な技術であると同時に、「分け方」そのものにこそ、その人の思考のセンスなり力なりが表れると僕は思うんです。

「分け方」にセンス、力が表れる、、、「企業価値を探究しているファンド」「企業価値を探究していないファンド」は弱いなあ。

企業価値という切り口は、リスク、リターンに近い言葉、ファイナンスっぽい言葉です。理論を出発点にして「第三を」「三つ目を」というアプローチでした。

違ったアプローチ、視座が必要だと思っていましたが、妙案が浮かばず。

現代ポートフォリオ理論を”ナシ”にしてみる

リスク、リターン。これは現代ポートフォリオ理論、で一番の基礎となる概念です。企業価値もその流れ、文脈の中にあるのは前述の通りです。

現在ポートフォリオ理論の重要な概念にはCAPMもあります。

このCAPMに懐疑的な投資家の言葉。以前から認識していました。

みさき投資 中神康議さん

たとえば、みさき投資の中神康議さん。

私も一応、アメリカのビジネススクールで教育も少し受けたので、もちろん理論はたたき込まれては います。なぜ僕はそこに違和感があるのかというと、CAPM は、基本的には「絶対価値」主義じゃなくて「相対価格」主義なのです。マーケットが 1 動いたらこの会社の株価はどれだけ動くのか、というの がベータという考え方で、それが CAPM の核心です。これは両方とも相対的な価格です。相対的な株価なる、あまり当てにならないものを基礎とした理論がそんなに偉いのかというのが私の違和感で、も っと企業経営のリアルはあるのではないかと考えています。

講演のスライドからです。

相対的な株価なる、あまり当てにならないものを基礎とした理論がそんなに偉いのか

スライドの中では”懐疑”と表現されていますが、現代ポートフォリオ理論を「そんなに偉いのか?」と問いかけられています。

京都大学の川北英隆さんもブログでこう述べられていました。

京都大学 川北英隆さん

水戸黄門の印籠やCAPMには芸術的・理論的価値はあるのだろうが、現代社会に適応していない可能性が高い。「徳川家って何者」、「印籠の中の薬が効くの」という質問や疑問と同じように、「正規分布が正しいの」、「CAPMが扱う市場って抽象的なもので、現実に当てはめるにはどうするの」という疑問や難問が常にある。

CAPMは水戸黄門の印籠

ベイリー・ギフォード(エディンバラ)のStuart Dunbarさん

続いて、海外の投資家。エディンバラの投資会社Baillie Gifford、Stuart Dunbarさんの論考です。

タイトルは「株式投資の本来あるべき姿 について話し合いましょう

この中でCAPMは次のように評されています。

大半の富は少数のアウトライ ヤー(外れ値)によってもたらされた のです。CAPMは無意味であり、真実 は、その根底になっている正規分布と は程遠いのです。

匿名の学者の批判はより痛烈です。

CAPMはあくまでもモデルであり、理論に過ぎない

人々、というか、プロフェッショナルな人々がどのように使ったか、はこう述べられています。

これにより、アクティブ運用会社であるにも拘らず、投資分析には益々、焦点を当てないようになり、互いを少しでも凌駕しようとする、自己循環的な投資行動に益々集中するようになりました。こうした偏狭な投資の世界では、投資の成功の定義は、ベンチマークを上回ったか否かという相対的なものとなり、運用報告なども相対的なものです。

重要な指摘は2つだと思います。

  1. アクティブ運用会社であるにも拘らず、投資分析には益々、焦点を当てない

  2. 運用報告なども相対的なもの

アクティブファンドに様々なものが含まれてしまう状況をつくった元凶の一つは、現代ポートフォリオ理論。いや、その理論の使い方を間違えてしまった人たちなのかもしれません。

これらの評価をもとにすると、一旦、理論から離れてみる。理論をナシにしてみる。そんな思考が必要です。

そんな思考の結果、リスク、リターンの他に「第三の軸」を探すことは止めるべきだと悟りました。

”パラダイムシフト”との再会

久しぶりにこの本を読む機会がありました。

瀧本さんの言葉。

パラダイムシフトは世代交代だ

天動説が地動説に置き換わった理由を「世代交代」だと紹介されています。

ああ、そうか!、現代ポートフォリオ理論やCAPMって天動説なのだ。

現代ポートフォリオ理論、CAPMは天動説なのだ

パラダイムで思い起こされた本がもう一冊ありました。

影山知明さんの『続・ゆっくり、いそげ』です。この本の「まえがき」はこの一文で始まります。

△を、▽に。

△が示しているのは、リザルトパラダイムです。

リザルトパラダイムとは次のように紹介されています。

成 果リザルトを最初に定義してそこから逆算するやり方

こんな風にも表現されています。

生み出したい成果を先に定義してそこへ最短距離で行こうとするやり方

成 果リザルトを最初に定義してそこから逆算する」から何かを思い起こしませんか。



インデックスファンドです。

あらかじめ決められたベンチマーク(多くは株価指数)に連動するように、そこに向けて運用されるファンドです。インデックスファンドはまさにリザルトパラダイムの権化です。

加えて、ベンチマークを上回ることばかりを声高に訴える、それをやたらと強調したがるアクティブファンドも同じような存在でしょう。

成 果リザルトを最初に定義してそこから逆算する」からこそ、インデックスファンドを選好するする投資家の皆さんは、フィー(彼らはコストと呼んでいますね)を、目を皿にして血眼になって調べているのでしょう。実は、数年前の僕自身がそんな投資家でした、ここに書き添えておきます。

現代ポートフォリオ理論、CAPM=天動説とすると、それを基にした分け方「インデックスファンド、アクティブファンド」も天動説となりますね。

さて、話を戻しましょう。

△を、▽に。

▽は、プロセスパラダイムを指しています。

成 果リザルトを先に定義せず、その過程に注目するやり方

過 程プロセス をベースに考える。

投資会社が、投資候補先や投資先の会社の価値を探究する。探究した結果を基にして投資判断する。ポートフォリオをやりくりする。これはまさにプロセスです。

しかし、多くの投資会社に欠けている姿勢、行動があります。それは上記の一連のプロセスを、自分たちに資金を託しているオーナー、投資家に対して丁寧に伝える、説明する姿勢、行動が欠けています。伝える、説明する「プロセス」が極めて不十分なのです。

  • 投資先、投資候補先の企業価値を丹念に調査し、探究する

  • 調査、探究結果を基に投資判断する。

  • 調査、探究を続けてポートフォリオをマネージする。

  • 上記の過程を、投資家にしっかりと丁寧に説明する。

これらの要素を満たしたファンドを 

プロセスパラダイムファンド

と呼んでみませんか。

対概念は、リザルトパラダイムファンド となります。

当然、インデックスファンドはもちろん、上記の過程が認められないアクティブファンドもリザルトパラダイムファンドとなります。

プロセスパラダイムファンド
リザルトパラダイムファンド

プロセスパラダイムファンドかも?を見分ける方法

プロセスパラダイムファンドかリザルトパラダイムファンドか、見分けるための第一ステップはシンプルです。

ファンドの発信している月次レポートを確認する。これで大半のファンドがリザルトパラダイムファンドだと認識することができるはずです。

投資している会社の株価や株式市況のことばかりを説明している月次レポート。これではプロセスパラダイムファンドとは呼べないでしょう。みさき投資 中神さんの言われる「相対価格」。価値ではなく価格が自分たちの、そして、投資家の関心事だと捉えている証拠がそのレポートで示されているのです。そして株価や株式市況はリザルトです。

プロセスパラダイムファンドなら、月次レポートで株価、市況の話はあっさり、です。というのもプロセスパラダイムファンドは「価値」を探究しているからです。短期間、1ヶ月の価格の動きは重要ではありません。むしろ重要なのは、投資している会社の価値がしっかりと維持されているか、毀損されていないか。それを測るためにどんな調査、分析を行ったか、です。

こうしたプロセスの一端、エッセンスを投資家に伝えよう。このプロセスが月次レポートから認められれば、プロセスパラダイムファンドと呼べるでしょう。逆に、月次レポートからそのプロセスが窺えなければ、価格を追いかけ回しているリザルトパラダイムファンドと同類と捉えざるを得ません。

プロセスパラダイムファンドの発信に特に強く期待したいのは、投資先の会社がどんな課題を解決してどんな価値を実現しているか、そのプロセスをわかりやすく投資家に示すことです。

投資先会社の価値実現のプロセス、それを伝えるプロセス。これらが備わることで投資家の理解、納得が深まり、投資先との関係を強く感じることができるようになると考えます。これこそがプロセスパラダイムファンドの真骨頂です。

パラダイムシフトは世代交代

投資信託の分け方「インデックスとアクティブ」は、現代ポートフォリオ理論を基にしたものです。上述の通り、この分け方は”天動説”だと考えています。この理論をありがたく信奉している古い人たちは、この分け方を生涯携えていくことでしょう。それで問題ありません。

でも、若い人たちは別です。若い人たちには、お願いがあります。

頭を少し柔らかくして一度考えてみてください。

「インデックスとアクティブ」この分け方ってヘンだと思いませんか。

リザルトとプロセス、この分け方って面白いと思いませんか。

リザルトとプロセス、この分け方が”地動説”だ、真理だ、なんて言うつもりはありません。他にもっと素晴らしい分け方があるかもしれません。

とにかく、一度自分で考えてみて欲しいのです、投資信託を買うとは、どんな行動、行為なのか、と。

最後にもう一つ、若い人たちにお願いがあります。

お金をどう使うか、どんな会社の関係者になるか、投資を通じてどんな資産を持つか、で未来は変わります。

リザルトパラダイムの権化であるインデックスファンドの取得に、あなたの資本の大半を投下すること、そうした資産で自分のポートフォリオを埋め尽くすこと。その状態を長い時間続けること。

そうした投資判断、行動がどういう未来をつくるのでしょうか、ぜひご自身で想像してみてください。

インデックスファンドがダメだ、リザルトパラダイムファンドは選ぶに値しない、と主張しているわけではありません。そこは誤解が無いように、お願いします。

何度も繰り返しますが、あなたの投資判断、行動がどういう未来をつくるのでしょうか、ぜひご自身で想像してみてください、ということです。

周囲の皆が同じように判断、行動したら、と想像を広げてみてください。


2053年、インデックスファンド、アクティブファンドという分け方が無くなっている。そんな未来を妄想しています。

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