【小説】僕と4人のご主人様(2/4)
軽い女
軽い女は嫌いだ。まぁ好かれることに文句はないんだが…。
初美が軽すぎて。
「ごめん、失言だった。童貞が可哀想なんて余計なお世話だったよね。
こんなことに巻き込んで何かお礼が出来ればと思ったんだけど」
えーえー、私は3軍男子で未体験ですよ。
そもそも彼女いない歴…、なんて聞かれてないか。
「それなら厄介になる」
と僕が言うや否や、妹が部屋に入って来る。
体格から言って二胡か。
「ダメ!」
「そうね、初対面のお殿方に何言ってんのか私は、コンコン」
と頭を叩く初美。
「二胡姉ちゃんは、宏を客人としてもてなすことに反対しております」
と通訳の幸。
「一番手は私だからねー」と空気が読めてない宵。
大黒柱
この家の大黒柱は二胡のようだ。
僕の嫌いなタイプの無口で決定権のある彼女は、
「インターンシップ」の提案をした。
1ヶ月でプレゼンをしなければならない僕に、
1ヶ月お試しで執事をしろと言う。
まぁ何も案がなかった僕には、4人姉妹との同居も悪い条件じゃない。
しかし二胡が家事全般をしているというなら、執事など要らないのではないか?
二胡は部活に励みたいと言う。なんでもプロボクサーを目指すらしい。
言葉少なに棘を刺す美少女が、腕力でもマウントを取る気か。
しかし驚いたことには、二胡の家事の雑さだ。
この家の人間は惣菜しか食べてないのか。
僕も料理が出来る人間とは言えないが、
カレーに、野菜炒め、チャーハン、卵料理、
うん、レパートリーが恥ずかしくなる。
それを二胡に睨まれるが、
「お前よりはマシだ」と二胡とはライバル関係が築かれる。
「はい、資金、給料も込みだから」と幸。
中学2年生に家計を任せていたのか…。
そりゃ惣菜ばかりでも、騙せるわな。
夕食
そんなこんなで初日はカツカレーにした。
賞味期限のカツが冷蔵庫の奥にあったから使ってしまおう、ということだ。
ただカレーのルーがなくて買い出しに行ったら、
レトルトのカレーで4姉妹は食事を済ませていた。
(レトルトがあるなら教えてくれよ)
と声に出たんだろう。
「4人前しかなかったの」と初美が言い訳を言う。
言い訳として成立してない気もするが。
私はカツだけでいいので、と口には出さずに伝える二胡。
レトルトのカレーオンリーで「初夜の」食事は済ませた。
なかなかいいところもあるじゃん二胡。
しかしそれは餌付けであることに後で気づく。
入浴
入浴がまた派手に面倒臭い。
「執事は背中流してくれるもんじゃない?」と天然でいう幸。
女性に慣れてない僕は、女性の裸体にはなおさら慣れてない。
「じゃあ私が1番!」
と小6の宵が言ってくれて少しは免疫をつけることができた。
年齢順に入浴をするわけでもなく、
最後、タオルを巻いた二胡と相対する僕。
睨みで、見ないで、と伝えてくる。
それならば背中流させなければいいのに。
「家は?」
短い言葉で核心をつく二胡。
「中2の家出ならぬ、高2の家出だ」
と適当に返す。
「そ」と呆気ない返事。なら聞くなや。
入浴がなんとか終わり、リビングでくつろぐ4姉妹。
僕は台所の片付けから、風呂の掃除まで、
「ゴミ」と一言でゴミ集めの仕事を増やす
二胡を恨みながら。
「2階が寝室だから、私の部屋に来て」とメモ書きをそっと渡す初美。
軽い女は嫌いだ。だが、食事、入浴、団欒と過ごして、今なら悪い気もしない。
隠れもしないで
それぞれ自分のペースで2階に上がっていく。
僕は電気や戸締り、一通りのことをやってから自慰をする。
「あら、もったいない」と幸。
げ、見つかってしまった。まぁ見つからないとも思っていなかったが、
釣れたのは幸か、まぁ別に悪くはない。
「見つかったか…」と心にもないことを言う。
「私で良かったね。二胡姉ちゃんならプンプンだよ」と幸。
「寝床貸してくれ」と何気なく誘う僕。
「いいわよ、私もバージンだし」と余計な親切。
慣れない2人は初夜を過ごした。
それが大波乱に繋がることを知らずに。
つづく、のか?