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運動耐容能と栄養の関係
こんばんは、ぐーです。皆さんは忙しいからと言って、食事抜いてませんか?
ご飯を食べないと体力が落ちるのは明白ですよね。その体力の中でも運動耐容能(Exercise Tolerance)は、私たちの健康を保つ上で欠かせない要素です。これは身体がどれだけ運動に耐えられるかを表し、生活の質や病気の回復力にも深く関わっています。本記事では、栄養が運動耐容能に与える影響について解説し、特に「低栄養」「貧血」「肥満」「サルコペニア肥満」などの課題に注目しながら、その改善に向けたポイントを具体的にご紹介します。
1. 運動耐容能と栄養の深い関係
低栄養と運動耐容能の低下
低栄養の状態では、エネルギーやタンパク質が不足し、筋力や体力が著しく低下します。特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の場合、体重が低いほど酸素摂取能力が低下しやすいことが報告されています。ある研究では、COPD患者の6分間歩行距離が350m未満の場合、栄養状態を示す血清アルブミン値や筋肉量が著しく低い傾向が見られました。
また、肝臓や筋肉に蓄えられるグリコーゲン量は約300~500gであり、食事を十分に摂らないとこのエネルギー源が枯渇して運動耐容能が低下します。例えば、朝食を抜くと午前中の運動能力が低下しやすくなるため、糖質やタンパク質をしっかり摂取することが重要です。
貧血と運動耐容能の低下
貧血もまた、運動耐容能に大きな影響を及ぼします。貧血により酸素を運搬する能力が低下すると、筋肉や臓器に十分な酸素が供給されなくなり、疲労感や運動パフォーマンスの低下を引き起こします。
具体例として、術後の患者でヘモグロビン濃度が10g/dL未満の場合、6分間歩行距離が有意に短いことが確認されています。さらに、貧血の改善が進むと日常生活動作(ADL)が向上し、回復が早まることもわかっています。鉄欠乏性貧血に対する治療としては、鉄剤の静脈投与が有効であることが報告されています。
肥満・サルコペニア肥満と運動耐容能
肥満も運動耐容能の低下を招く要因です。肥満の若者を対象とした研究では、やせている若者と比べて酸素摂取能力が低い傾向が確認されています。特に、内臓脂肪の蓄積が酸素摂取量や運動耐容能に悪影響を及ぼすことがわかっています。
一方、肥満とサルコペニア(筋力低下)が併存する「サルコペニア肥満」は、高齢者や回復期リハビリテーション患者で特に問題視されています。この状態では、体脂肪率が男性で30%以上、女性で35%以上と高く、ADLの自立度や自宅退院率が低下することが研究で示されています。
2. 呼吸筋サルコペニアの重要性
呼吸筋サルコペニアとは?
サルコペニアは全身の筋肉量と筋力の低下を指しますが、呼吸筋に特化した「呼吸筋サルコペニア」という概念もあります。これは、呼吸筋の量や力が低下し、呼吸機能そのものに悪影響を与える状態を指します。
例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や誤嚥性肺炎の患者では、呼吸筋が弱くなり運動耐容能がさらに低下します。呼吸筋サルコペニアの診断には、最大吸気圧(PImax)が80cmH2O未満であるかどうかが一つの基準となります。
診断基準と治療の方向性
呼吸筋サルコペニアの診断には以下のような基準が用いられます:
• 全身のサルコペニアを認める
• 呼吸筋力や機能の低下を確認する
• 呼吸機能低下の原因となる疾患が存在しない場合、確定診断とする
この状態に対する治療としては、呼吸筋トレーニングやリハビリテーション栄養が重要です。リハビリテーション栄養は、タンパク質やビタミン、ミネラルを十分に摂取しながら、筋力を鍛えるプログラムを組み合わせたものです。
3. 運動耐容能を改善するための具体策
運動耐容能を向上させるには、以下のアプローチが推奨されます。
栄養面でのポイント
1. エネルギー摂取
必要なカロリーを確保するために、1日のエネルギー消費量に基づいて食事を調整します。肥満患者の場合は、1日あたり250~750kcalのエネルギー制限を目安にします。
2. タンパク質の摂取
筋肉量を維持するために、体重1kgあたり1.2~1.5gのタンパク質を摂取することが目標です。
3. 微量栄養素の補充
鉄分やビタミンB12、葉酸などをバランスよく摂取することで、貧血やエネルギー不足を予防します。
運動面でのポイント
1. 有酸素運動
心肺機能を高めるためにウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動を取り入れます。週に150分以上を目指します。
2. 筋力トレーニング
レジスタンストレーニングを週に2回程度行うことで、筋力と筋肉量を維持します。
3. 呼吸筋トレーニング
呼吸筋を強化するためのトレーニング器具を用いた運動が有効です。
まとめ:栄養と運動のバランスを見直そう
運動耐容能を改善するには、リハビリテーションと栄養の両方が重要です。特に、低栄養や貧血、肥満といった課題を抱える方は、適切な栄養摂取と運動プログラムを組み合わせることで、効率的に改善を図ることができます。
まずは、食生活や運動習慣を見直し、専門家と相談しながら継続的な取り組みを行いましょう。それが健康的で充実した生活を送るための第一歩です。