記紀における四国と東北の記述の少なさ、邪馬台国と富士山が登場しない理由、ヤマト王権と日高見国(蝦夷)の関係。 フィクサー藤原不比等
こんにちは。
トリリンガル讃岐PRオフィサーのモリヨシナリです。
今回は、奈良時代、8世紀初頭に書かれた記紀（古事記・日本書紀）における四国と東北の記述の少なさ、富士山が登場しない理由、ヤマト王権と日高見国の関係についてです。
モリヨシナリのプロフィール
ビジネス英語講師、全国通訳案内士 (英語・中国語)、海外ビジネスコンサルタント
神戸市生まれ、香川県育ち。米国大学経営学部留学マーケティング専攻。
職歴:
大手エレクトロニクス企業にて海外営業職に20年間従事 (北京オフィス所長)
香港、中国にて外資系商社設立に参画、副社長を経て顧問
海外滞在歴:
アメリカ: 2年
シンガポール: 2年
中国: 12年
ベルギー: 1ヵ月
現在の活動:
Bizconsul Office 代表
ビジネス英語講師、全国通訳案内士 (英語・中国語)、海外ビジネスコンサルタント
観光庁インバウンド研修認定講師
四国遍路通訳ガイド協会 会員
トリリンガル讃岐PRオフィサー
保有資格:
英語: 全国通訳案内士、英検1級、TOEIC L&R: 965点 (L満点)、TESOL (英語教授法)、国連英検A級、ビジネス英検A級
中国語: 全国通訳案内士、香川せとうち地域通訳案内士、HSK6級
ツーリズム: 総合旅行業務取扱管理者、国内旅行業務取扱管理者、国内旅程管理主任者、せとうち島旅ガイド
メディア実績:
香川県広報誌「THEかがわ」インタビュー記事掲載
瀬戸内海放送 (KSB) ニュース番組コメント
岡山放送 (OHK) ニュース番組コメント
研修/コンサルティング実績:
観光庁インバウンド研修認定講師として登壇 (香川県善通寺市役所、愛媛県西予市宿泊施設、他)
四国運輸局事業 (訪日外国人観光客向けレンタカー利用調査、アドベンチャーツーリズム他) コンサルタント
香川県主催 瀬戸内国際芸術祭オフィシャルツアー公式ガイド
香川せとうち地域通訳案内士インバウンド研修講師認定試験 面接官
記紀の成立年と編集者と目的
記紀（古事記・日本書紀）は、日本の古代史を記した重要な文献とされていますが不明点や謎が多い文献でもあります。
それぞれの成立年、編纂者、目的は以下の通りです。
古事記
成立年:
和銅5年（712年）
編纂者:
太安万侶（おおのやすまろ）が、稗田阿礼（ひえだのあれ）が記憶していた内容を筆録しました。
目的:
天皇家の系譜や古代の伝承を記録し、国家の正統性を示すこと。
当時の豪族たちに、天皇家の正当性を示すこと。
日本書紀
成立年:
養老4年（720年）
編纂者:
舎人親王（とねりしんのう）を中心とした複数の編纂者によって編纂されました。
目的:
国家の歴史を体系的に記録し、律令国家としての体制を確立すること。
対外的に日本の国威を示すこと。
両書の共通点と相違点
両書は、ともに天皇家の正統性を示すことを目的としていますが、古事記は伝承や神話を中心に、日本書紀はより歴史的な記述を中心に構成されています。
古事記、日本書紀共に、天皇家の正当性を示すことを目的としており、当時の政治的な背景が大きく影響しています。
記紀編集のプロデューサー 藤原不比等
中臣(藤原)鎌足の息子である藤原不比等は、記紀編纂が推進された時代の中心的な政治家であり、その影響力は両書の成立に深く関わっていたと考えられています。
藤原不比等の役割
政治的背景の構築:
不比等は、律令国家の確立を目指し、天皇中心の国家体制を強化するために、記紀編纂を推進したと考えられています。
記紀は、天皇家の正統性を示すことで、藤原氏を含む貴族層の権威を高める役割を果たしました。
日本書紀への関与:
日本書紀の編纂には、舎人親王を中心とした複数の編纂者が関わりましたが、不比等もその中心的な役割を担っていたと考えられています。
日本書紀は、国家の歴史を体系的に記述することで、律令国家としての体制を確立し、対外的な国威を示すことを目的としていました。
古事記への影響:
古事記の編纂には、太安万侶が中心的な役割を果たしましたが、不比等の政治的な意図が反映された可能性も指摘されています。
古事記は、伝承や神話を中心に、天皇家の系譜を強調することで、国家の正統性を示すことを目的としていました。
藤原不比等の影響
天皇中心の国家観の確立:
記紀は、天皇家の正統性を強調することで、天皇中心の国家観を確立しました。これは、藤原氏をはじめとする貴族層が、天皇を支えることで権力を維持するための基盤となりました。
藤原氏の権威向上:
記紀には、藤原氏の祖先である藤原鎌足の功績が大きく取り上げられています。これは、藤原氏の権威を高め、政治的な地位を確立するための意図があったと考えられています。
歴史の政治利用:
記紀は、歴史を政治的に利用した例として知られています。これは、古代の歴史研究において、政治的な背景を考慮することの重要性を示しています。
このように、藤原不比等は、記紀編纂の時代の中心的な政治家であり、両書の成立に深く関わっていました。彼の政治的な意図は、記紀の内容に反映されており、日本の古代史に大きな影響を与えました。
記紀の内容の素朴な疑問点
記紀（古事記・日本書紀）における四国と東北の記述の少なさ、富士山が登場しない理由、ヤマト王権と日高見国の関係
1. 記紀における四国と東北の記述が少ない理由
編纂の中心地からの距離:
記紀は、ヤマト王権（現在の奈良県を中心とした地域）によって編纂されました。そのため、編纂の中心地から遠い地域、特に四国や東北地方に関する情報は限られていたと考えられます。
ヤマト王権の支配の影響:
記紀は、ヤマト王権の正統性を主張するために編纂された側面があります。そのため、ヤマト王権の支配が及ばなかった、あるいは影響力が弱かった地域に関する記述は意図的に省略された可能性があります。
情報収集の限界:
古代においては、情報伝達手段が限られていました。そのため、遠隔地の詳細な情報を収集することが困難であったと考えられます。
まつろわぬ民の存在:
四国や東北地方には、ヤマト王権に従わない「まつろわぬ民」が多く存在していました。彼らの存在は、ヤマト王権の支配を正当化する記紀の編纂において、都合が悪かった可能性があります。
・ヤマト王権に従わなかった「まつろわぬ民」は決して悪者ではなかった！ 歴史は勝者によって書き換えられる！ 土蜘蛛、鬼、毛人、蝦夷、隼人、熊襲、温羅、名草戸畔とは？
2. 記紀に富士山が出てこない理由
編纂時期との関係:
記紀が編纂された奈良時代には、富士山は現在のような顕著な火山活動はしていなかったと考えられています。そのため、当時の人々にとって、富士山は特筆すべき存在ではなかった可能性があります。
神話との関連性:
記紀は、神話や伝承を基に編纂されました。富士山に関する神話や伝承が、記紀に取り入れられるほど確立されていなかった可能性があります。
政治的な意図:
記紀は、ヤマト王権の正統性を主張するために編纂されました。富士山が、ヤマト王権の支配と直接的な関係を持たなかったため、記述されなかった可能性があります。
3. ヤマト王権と日高見国
ヤマト王権:
3世紀後半から7世紀にかけて、現在の奈良県を中心とした地域に存在した古代国家です。
各地の豪族を従え、中央集権的な国家体制を築きました。
記紀を編纂し、自らの正統性を主張しました。
日高見国（ひたかみのくに）:
古代の東北地方に存在したとされる国です。
蝦夷（えみし）と呼ばれる人々が居住していました。
ヤマト王権との間で、長期間にわたる戦いがありました。
日高見国は、ヤマト王権の支配に抵抗した蝦夷（えみし）たちの総称であり、統一された国家ではなかったとする説があります。
関係性:
ヤマト王権は、東北地方を支配するために、日高見国との間で戦いを繰り返しました。
8世紀には、ヤマト王権は多賀城を築き、東北地方の支配を強化しました。
9世紀には、ヤマト王権は蝦夷征討を完了し、東北地方をほぼ支配下に置きました。
記紀の記述は、編纂された時代の政治的、文化的背景を強く反映しています。そのため、現代の視点から見ると、偏りや不足があることは事実です。各地の風土記や伝承、寺社に残る古史古伝、考古学的遺物など多角的な視点で日本の古代史を見直す必要があります。
記紀における四国に関する記述
国生み神話:
古事記、日本書紀ともに、イザナギ、イザナミによる国生み神話において、四国が淡路島に次いで生まれた島として記述されています。
四国は「身一つにして面四つある国」と表現され、伊予国（愛媛県）、讃岐国（香川県）、阿波国（徳島県）、土佐国（高知県）の四つの国として言及されています。
この記述は、四国の地理的特徴を捉えたものとして重要です。
ヤマトタケル伝承:
日本書紀には、ヤマトタケルが四国を訪れたという伝承が記されています。
特に、讃岐国の戦いに関する記述が見られます。
阿波忌部氏:
阿波忌部氏についての記述があり麻や楮などの生産、織物、祭祀などを担っていたことが記述されています。
記紀における東北に関する記述
ヤマトタケル伝承:
日本書紀には、ヤマトタケルが東征の際に東北地方を訪れたという伝承が記されています。
蝦夷（えみし）との戦いに関する記述が見られます。
蝦夷（えみし）に関する記述:
日本書紀には、蝦夷（えみし）と呼ばれる人々に関する記述が散見されます。
彼らはヤマト王権に従わない人々として描かれており、征討の対象として言及されています。
多賀城:
日本書紀に多賀城の記述が出てきます。
四国と東北の記述の量について
記紀における四国と東北に関する記述は、畿内や九州に比べると少ないと言わざるを得ません。
これは、記紀がヤマト王権の正統性を主張するために編纂されたという目的や、当時の政治的な中心地からの距離などが影響していると考えられます。
また、当時のヤマト王権の勢力範囲の問題もあります。
記紀における四国と東北の記述は限定的であり、その背景には記紀編纂の目的や当時の政治状況が深く関わっていることがわかります。
記紀（古事記・日本書紀）に邪馬台国が登場しない理由
記紀（古事記・日本書紀）に邪馬台国が登場しない理由は、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
主な理由としては、以下の点が挙げられます。
1. 記紀の編纂目的と邪馬台国の時代との隔たり
記紀は、8世紀初頭に成立した歴史書であり、その目的はヤマト王権の正統性を主張することにありました。
一方、邪馬台国が存在したとされるのは3世紀頃であり、記紀の編纂時期とは数百年もの隔たりがあります。
そのため、邪馬台国に関する情報が記紀編纂者に正確に伝わっていなかった可能性があります。
2. 記紀編纂者の歴史観
記紀は、天皇を中心とした国家の歴史を記述しており、邪馬台国のような地方政権に関する記述は重要視されなかった可能性があります。
また、記紀編纂者は、当時の政治情勢や思想に基づいて歴史を解釈しており、邪馬台国をどのように位置づけるかという点で困難があったと考えられます。
3. 邪馬台国に関する情報の欠如
邪馬台国に関する情報は、中国の歴史書「魏志倭人伝」にわずかに記述されているのみで、日本国内にはほとんど記録が残っていません。
そのため、記紀編纂者が邪馬台国に関する情報を入手することが困難であった可能性があります。
4. 邪馬台国とヤマト王権の関係性
邪馬台国がヤマト王権の前身であるという説もあれば、全く別の政権であるという説もあります。
もし、邪馬台国がヤマト王権の前身である場合、記紀編纂者が意図的に邪馬台国に関する記述を避けた可能性も考えられます。
このように、記紀に邪馬台国が登場しない理由は、記紀の編纂目的、編纂者の歴史観、情報不足、そして邪馬台国とヤマト王権の関係性など、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
以上