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サルトルの『存在と無』:実存主義の深淵に触れる

こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

今日はサルトル特集!

ジャン=ポール・サルトルは、20世紀を代表するフランスの哲学者、作家、劇作家です。

彼の名は、実存主義という哲学的概念と強く結びついています。

実存主義とは、人間存在の不確実性と自由、そして自己責任を強調する思想です。

サルトルは、著作や演劇、政治活動を通じて、この実存主義を世に広め、人々に深い影響を与えました。

生涯

サルトルは1905年、パリの裕福な家庭に生まれました。

幼い頃に父親を亡くし、母方の祖父に育てられました。

エコール・ノルマル・シュペリウールで哲学を学び、1929年にシモーヌ・ド・ボーヴォワールと出会います。

二人は生涯にわたるパートナーとなり、互いの知的探求を刺激し合いました。

政治活動

サルトルは、哲学的な思索にとどまらず、政治にも積極的に関与しました。彼は、アルジェリア戦争やベトナム戦争に反対し、反植民地主義、社会主義を支持しました。また、1968年の五月革命では、学生運動に共感し、彼らを支持しました。

影響

サルトルの思想は、哲学、文学、政治など、様々な分野に大きな影響を与えました。実存主義は、戦後の不安や不条理感に苦しむ人々に、生きる意味を見出すための指針を提供しました。

また、彼の自由と責任を重視する思想は、現代社会における個人のあり方を考える上で、重要な視点を提供しています。

そして、彼の主著『存在と無』は、1943年に発表された実存主義哲学の金字塔です。

第二次世界大戦下の不安と虚無感が漂う時代において、人間の存在の意味を根源から問い直したこの書物は、難解ながらも多くの人々の心を捉え、20世紀の思想界に巨大なインパクトを与えました。

現代社会においても、その鋭い洞察は色褪せることなく、私たちに「自分とは何か」「どのように生きるべきか」という根源的な問いを突きつけます。


実存は本質に先立つ:人間の自由と創造

サルトル哲学の核心をなすのが、「実存は本質に先立つ」という概念です。

これは、人間には生まれながらにして定められた本質(エッセンス)、つまり目的や性質は存在せず、まず世界に「存在」しているという事実から出発するという考え方です。

人間は、自らの行動や選択を通して、自らの本質を創造していく存在なのです。

言い換えれば、私たちは「自由」であるということです。

この自由は、無限の可能性を秘めていると同時に、重い責任を伴います。

なぜなら、私たちは自らの選択によって、自分自身を規定していくだけでなく、同時に世界に対しても責任を負うことになるからです。

サルトルは、この自由と責任の重圧から逃れることなく、主体的に生きることこそが「authentic な(真の)存在」であると主張しました。

不安と虚無:自由の代償

しかし、自由は常に不安と隣り合わせです。

確固たる基盤を持たず、常に選択を迫られる人間は、必然的に不安や虚無感に襲われます。

サルトルは、この不安と虚無こそが、人間の存在の本質的な条件であると捉えました。

私たちは、この不安や虚無から目を背けることなく、それを受け入れることによって初めて、真に自由な存在となることができるのです。

他者の視線:自由への挑戦

サルトルは、自己と他者の関係についても深く考察しました。

「対自存在」とは自己自身に対する意識、「対他存在」とは他者に対する意識を指しますが、サルトルは、他者の視線によって自己が客体化され、自由が脅かされると考えました。

他者は、私たちを「あるがまま」に見るのではなく、自らの解釈に基づいて「評価」し、「固定化」しようとします。


この他者の視線から逃れることは容易ではありませんが、サルトルは、真の自由を獲得するためには、他者の視線に屈することなく、主体的に自己を確立していく必要があると説きました。

『存在と無』が現代社会に問いかけるもの

情報化やグローバル化が加速する現代社会において、私たちはかつてないほどの情報量と選択肢に日々直面しています。

その一方で、アイデンティティの喪失や不安、孤独感など、現代人特有の悩みも深刻化しています。

『存在と無』は、こうした現代社会の状況を予見していたかのように、人間の自由、責任、そして存在の意味を鋭く問いかけています。

サルトルの思想は、現代社会を生きる私たちにとって、自己と世界を理解するための重要な手がかりとなるでしょう。

より深く理解するために

『存在と無』は、決して容易に読める書物ではありません。

しかし、その難解な文章の裏には、人間の存在の本質に迫る深遠な思想が隠されています。

本書を読み解くことは、自分自身と向き合い、世界の意味を問い直す、知的で刺激的な旅となるでしょう。

今まではボロボロの中古本とか、昔の翻訳の本で読むしか無かったのですが、最近(といっても2009年ですが笑)きれいな三巻セットが出ていて新品で買えるので、読むのならこちらがおすすめ。ちなみに電子書籍は存在しません。

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