ゆがみんレンズを意識してみよう
石川県金沢市。石川県庁と金沢港の間のあたりにあるコミュニティハウス・シェアマインド金沢で、月に一度開催されているセルフケアセミナー「ゆらっく」。2017年9月開催のセミナーへ参加したときの話です。
このときのテーマは「ゆがみんレンズを意識してみよう」。
自分が他人やものごとを見るときの「先入観」「思い込み」「バイアス」、そういう意味の「色眼鏡」の話題かな?と思っていました。
金沢港に巨大ビル並みの豪華客船がどかーーーんと停泊していたのが横目に見えた、そんなカラッと晴れた日曜日。
こぢんまりとしたハウスの中へ入っていきました。
セミナーの流れ
最初は【チェックイン】。
いろいろな問いが書かれている50枚ほどのカードから1枚だけ引いて、その問いに対する自分の気持ちや感覚を自己紹介を兼ねて言い表してみる。ここでは講師さんも参加者と同じ立場でカードを引いて話します。
そうして自分に向き合うためのウォーミングアップをしていって…
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引き続き【マインドフルネス】に入ります。
部屋の中で自分にとって心地好い場所を思い思いに選び、その場所で楽になれる姿勢をとります。リラックスして自分のからだの声を聴き、こころの声を聴く数分間。
<マインドフルネスの感覚と効用>
今回は「平穏な心身にスイッチして、今の自分と身の周りに意識を集中」していく試み。ゆっくりと呼吸をしながら、その呼吸の数を20まで数えます。3秒吸って、6秒吐く。また3秒吸って…終わったあと、ひとりずつ感覚を振り返りつつ話していきます。自分自身が感じた感覚はこうでした。
前回と同じように聴覚がかなり敏感に。外からの環境音が心地よい。あまりにも聴覚に集中しすぎて、呼吸をゆっくりカウントすることも、他のことも意識から飛んだ。ただただ気持ちよくリラックス。
このひとときは本当に「聞こえてくるもの」のことしか頭にない感覚になっていました。このセミナーや、最近ときどきやるようになったヨガなどで、呼吸に意識を向けることで、雑然とした思考がシンプルにクリアになっていく感覚が少しわかるようになってきた気がします。
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そして、セミナーのメイン【テーマワーク】 。
今回のテーマ「ゆがみんレンズを意識してみよう」に沿って、はじめに講師さんから「ゆがみんレンズ」の解説。
<ゆがみんレンズ:認知の歪み>
ここでいうレンズとは、人が個々に持っている考え方や価値観を指すもので、人はこれを通して世界を見ているということを指しています。
認知の歪みとしてよく紹介される「All or Nothing思考」「~すべき思考」「過度の一般化」などを指していて、出来事とそれに対する自分の反応とそこから生じる感情の間にこのような認知がレンズのように挟まっている、という意味です。そんなレンズ=色眼鏡をちょっと外してみたら?というほどの感覚でとイメージしやすいように「ゆがみんレンズ」と表現されているのでした。
実際にワークをして、自分自身にどんなレンズがありがちなのかを確認します。まず、あるひとつの出来事と、それに対して自分が取りがちな反応や感情を書き出します。それから、その両方を照らし合わせて、「出来事」と「反応・感情」の間にどんなレンズ(考え方や価値観)が入り込んでいるのかを判断するわけです。
このような「レンズ」は、自分だけが特別に持っているものではないし、自分の「レンズ」だけを特別に悪く思うこともまったくない。かといって、無自覚なまま放置をするでもなく、まずはそれに気づくことが大事であるということです。
<PRP法:自分の感情に対処する>
さらに、ゆがみんレンズを通して出てきてしまった「反応」には、感情をかき乱すようなものがあります…ということで、そんな自分の感情に対処する PRP法 の解説に続きます。
1. 自分が人間であることを許す......Permission
起こった出来事とそのときに感じた感情をあるがままに認める。
必要な時間をかけて(時間の長短は問わない)率直に書き出す。
あるいははっきりとイメージする。
2. 状況を再構築する...............Reconstruction
出来事の見かたを変えて、メリットを見い出してみる。
3. より広い視野から見る..............Perspective
大きなスケールで考えてみる。
3か月後の状況はどうか、1年後はどうなっているか...など。
必ずしもこの順序どおりではなくてもよいそうです。
過去の出来事やいま直面している心配事を、これに沿って整理することに馴れていくと、捉えかたが変わっていく(=レンズがはずれていく、あるいはレンズの厚みが徐々に薄くなってくる)、ひいては、ストレス反応の強さも緩和されていくことになるのでしょう。
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最後は【クロージング】。
各自、全体を通して振り返って、得たこと感じたことを話して共有します。
所感:認知の歪みに気づくこと
ゆがみんレンズ。
当初イメージしていた、単なる「先入観」「思い込み」などということではありませんでした。むしろ、それらの間にある、自分なりのものごとの「考え方」「価値観」のことだったということで、自分にはどんな認知の歪みがあるのかを親しみやすく具体的に自覚することができました。
そして、認知の歪みによって引き起こされてしまった気分の悪さについて、配布資料に引用されていた言葉が印象的でした。
気分が悪くなるということは奇妙なことだ。
決して真実ではないことを勝手に思い違いして、
みじめな気持ちになっているのだ。
- 心理学者・デイヴィッド・D・バーンズ -
気分が悪くなったときに、気分が悪くなった要因そのものにフォーカスするのではなく、その要因を見ている自分の中にある「ゆがみんレンズ」にフォーカスをする。
自分のレンズを通して見えた出来事が「思い違い」ではなく、「真実」であるか、「誰から見ても同じ事実」であるか。気分を害するのは、それが明らかになってからでも遅くはない。
なかなか簡単ではないでしょうが、こういうことを頭に入れておく。できるだけ冷静な気持ちでいられるための、とてもシンプルで効果的な心がけだと思います。
今回は、以前に受講したり体験したことのある認知行動療法の一部に近い内容で、目新しいことがあったわけではありませんでしたが、過去に見聞きしたことがあった「心を整理する考えかたや手法」が、今回のセミナーを通して、自分の中でより血肉化することができてきたように思いました。
「ゆらっく」セミナーについて
ゆらっく とは…
ゆらっく:『あなた(You)』が、『楽に』なれる場所
「自分としっかり共にいる」
「自分の声に耳を傾ける」
「自分とゆっくり対話する」
講師は福多唯(ふくだゆい)さん。
女性護身術「Wen-Do(ウェンドー)」の、日本人初、かつ唯一のマスターインストラクターとして、女性専用のセルフディフェンスの普及活動に取り組んでおられます。企業や教育機関などでの教育・講演も多くの実績を残されています。
セルフディフェンスから派生した「いろんなパワー(外圧)に対する心的防御」として、日頃の自分の心持ちを整理する、また、自分の内なる声に耳を向けて、自分の思いや感覚を大切にすることが、日頃のセルフケアとしてスムーズに取り入れられるようになるためのセミナーでもある、とわたしは捉えています。
日常のこころのセルフケアのヒントをやさしく知って体験することができる。それにはうってつけの場であると思います。