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詩集:自家中読

14
生活の中から生まれた言葉を縫い止めた刺繍。つれづれ。記録。
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#歌詞

さらば 遠心力

さらば 遠心力

25時の電話で思いを伝えあった
あのときの私たちに
信じられるだろうか

爛れた20時の朝食に笑いあった
あの日の私たちに
伝わるだろうか

あのころ私たちを隔てていた
物理的な距離は
無意味なマイルだったのに
いま
近くにいたはずの私たちの心は
月まで届くほどの場所で
さみしい岐路に立っている

写真で届いたオリオンの光を
なによりあたたかく感じた夜
同じ星をどこかで見上げあっていただけで
幸せ

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せつぞくしのタンゴ

せつぞくしのタンゴ

何度も
思い出してしまう
他愛ないやり取りだったのに

お守りのように
見つめてしまう
無機質な着信の文字を

近づけない距離だから
むやみに考えてしまう
でも
届かない手だから
むしろ安心してしまう

なのに
ガラス越しの横顔が
電話越しの声が
業務連絡の文字が
私を揺らすのは事実で
細胞の振るえを起こすのも事実だ
そして
この思いに先がないことも
紛れもない事実

だけど
行くあてのない思いだ

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新芽を摘む

新芽を摘む

摘むんだ

出てきてはいけない
知らない
知ってはいけない
こんな芽吹きは許せない

見ないように
目よ、追わないで
浮かばないで意識に
せめて弾けないで
堪えきれないしゃぼんのように

消えてなくなればいい
今のうちに
私は知らなかった
それで済ませるから

もう渡れない橋の前で
佇むことしかできない
目的地さえない片道切符を
使うわけにはいかない

気づかないふりをして
通り過ぎればいい
会釈

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