仲谷龍之丞

アマチュア文筆家。音楽・映画・雑貨好きのための自己啓発サイト Lindenhof 〜リンデンホフ の管理人。 lindenhof.sakura.ne.jp

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マガジン

  • ビギナーでもたぶん読める、人気イマイチ指揮者の技と神髄

    才能は一級ながら、売れっ子スターにはなれなかった指揮者たちの世界。クラシック音楽ビギナーにもお薦め。

  • これは怖い! おススめ短編小説・ホラー篇

    ライターが本当に怖いと思った古今の短篇ホラー小説をご紹介。

  • あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です”

    読んだにも関わらず、本棚に残さなかった本について、個人の読書メモを公開。

  • 隠れた傑作、これいかに?

    特に名作と呼ばれなくても、多くの人に観て欲しい珠玉の映画たち。

  • これ観てみ! 忘れられたマイナー映画たち

    執筆時点でまだDVD化されていない、忘れられた傑作映画をお薦め。

最近の記事

人気イマイチ指揮者の技と神髄 FILE.2 エドゥアルド・マータ Part.3

7.超名演なのに手に入らないストラヴィンスキー さらに、これもダラス響の演奏で、ストラヴィンスキーのバレエ音楽《火の鳥》組曲と、《3楽章の交響曲》(そういうタイトルの曲なのだ)のカップリング。 小学生の時に初めて聴いて以来、40年近く経った今でもまだ、両曲共に競合盤の中でトップクラスの名演だと思うのだが、これが罪深いことに、メキシコのBMG(RCAを買収した国際レーベル。現在はCBSも傘下)で一度CD化されただけなのだ。 そんな、メジャーな指揮者でもメジャーなオケでも

    • 人気イマイチ指揮者の技と神髄 FILE.2 エドゥアルド・マータ Part.2

      4.マータってどんな人? マータはさすが人気イマイチ指揮者だけあって、映像ソフトが全く出回っていない。 わが国へも読売日本交響楽団への客演で計3回来日しているが、その頃の私はまだ幼少期であったし、当時も今も関西在住だ。 というわけで私は、というよりほとんどのクラシック・ファンは、動いている彼の姿を見た事がない。 また今回、記事なども必死で探したが、日本の音楽誌にインタビュー等が掲載された事は無いようである(ひどい!)。 レコードやCDに、写真はよく載っている。 基本型

      • 人気イマイチ指揮者の技と神髄 FILE.2 エドゥアルド・マータ Part.1

        1.メータとマータ 前回に続いてまたもや名前の話で恐縮だが、ビギナーにとってアーティスト名というのは、妙に印象を左右するものなのである。 指揮者界にはズービン・メータという、世界的スター指揮者がいる。 80年代当時まだ小学生だった私は、マータと聞いてもメータの二番煎じみたいに思えたものだ。 きっと彼は、少なくともレコード・アーティストとしてはという事だが、名前で損をした部分も少なからずあったのではないか。 もちろんそれは本人が悪い訳ではなく、ただの印象なのだが、ショー

        • 人気イマイチ指揮者の技と神髄FILE.1 アンドルー・デイヴィス Part.3

          7.アンドルーはまろやかに癒す 英国のフィルハーモニア管弦楽団と録音した、フォーレ作曲の《レクイエム》も素敵な演奏である。 私など、例えば連休の谷間で、 さあたくさん原稿を書くぞと意気込んで机に向かっても、なんか気怠くてやる気が出ない時がある。 それならいっそフォーレでも聴いて猛烈にリラックスしてやろうと思っていると、 チョイスしたCDが、妙に力こぶが入っていて自分のテンションに合わなかったりする。 昔から名盤として定評があるアンドレ・クリュイタンス指揮とか、チョン・

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        • ビギナーでもたぶん読める、人気イマイチ指揮者の技と神髄
          9本
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          13本
        • あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です”
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        • これ観てみ! 忘れられたマイナー映画たち
          12本

        記事

          人気イマイチ指揮者の技と神髄FILE.1 アンドルー・デイヴィス Part.2

          4.意外に立派なA・デイヴィスの経歴 A・デイヴィスのレコーディング数は、 人気イマイチ指揮者の中では多い方である。 ロンドン交響楽団やバイエルン放送交響楽団など一流団体との録音も数点あるし、 ニューヨークが世界に誇るオペラハウス、 メトロポリタン歌劇場での公演も、 マニアックな演目ながら2種類映像ソフト化されている。 だが、彼が音楽監督や首席指揮者などの常任ポストを得た楽団は、BBC交響楽団を除けば地方のマイナー・オケばかりという印象だ。 トロント時代にも欧米各地の

          人気イマイチ指揮者の技と神髄FILE.1 アンドルー・デイヴィス Part.2

          人気イマイチ指揮者の技と神髄FILE.1 アンドルー・デイヴィス Part.1

          1.デイヴィスはデイヴィスでも 大方のクラシック・ファンにとって、 指揮者界で「デイヴィス」と言えば、 アンドルーと同じ英国の先輩コリン・デイヴィスであり、彼こそが「デイヴィス」の第一人者であった。 デイヴィスといえばまず「コリン」であり、「コリン」を差し置いて「アンドルー」が脳裏に浮かぶ人は、よほどひねくれているか、 アンドルーを激推ししている超コアなマニアかの二択であろう。 しかも日本では「アンドルー」と「アンドリュー」の翻訳表記が混在し(前者の発音が正しいとの事

          人気イマイチ指揮者の技と神髄FILE.1 アンドルー・デイヴィス Part.1

          人気イマイチ指揮者の技と神髄 序文 『人気イマイチ指揮者が出来上がるまで Part.3』

          9. 人気イマイチ指揮者は資料まで少ない 人気イマイチ指揮者の才能は、スター指揮者たちと比べて決して劣るわけではない。 あくまでこれは、すこぶる高いレヴェルでの話なのである。 指揮者というのはそれほど困難な仕事で、世界的に指揮者として活躍している時点でもう奇跡的な成功なのだ。 私がカラヤンらと比較しているのは、あくまで「人気」がイマイチな指揮者であって、三流四流の指揮者について言っているのではない。 ただ、華やかなスター性や神秘的なカリスマが足りなかったとか、ルック

          人気イマイチ指揮者の技と神髄 序文 『人気イマイチ指揮者が出来上がるまで Part.3』

          人気イマイチ指揮者の技と神髄 序文 『人気イマイチ指揮者が出来上がるまで Part.1』

          1. なぜここで、スターではなく人気イマイチ指揮者なのか? 別に、ひねくれた事をやって注目されたいわけではないのだが。 クラシック音楽ビギナーの方々も視野に入れているのに、いきなり人気イマイチ指揮者を取り上げるという荒技に出たのは、もちろん、彼らへの愛ゆえである。 これからクラシック音楽を聴いてみようという皆様には、世評に惑わされず、ご自分の感性に合った演奏に出会って欲しい。 それこそ「名盤100選」なんて本を開いてしまうともう、没後も依然として人気スター指揮者であ

          人気イマイチ指揮者の技と神髄 序文 『人気イマイチ指揮者が出来上がるまで Part.1』

          人気イマイチ指揮者の技と神髄 序文 『人気イマイチ指揮者が出来上がるまで Part.2』

          6. 人気指揮者たちのラッキーなスパイラル スターの人気の一因にはもちろん、レコード会社が発掘したり争奪したりした有望株を、全面的にバックアップ、宣伝したという事が当然ある。 特に日本の音楽ファンが海外のアーティストを認識するのは、ほとんどが録音媒体と雑誌類を通じてである。 そして当たり前の事だが、レコードを出せるのは各レーベルが才能とスター性を認め、契約した指揮者だけなのだ。 いったん市場にアルバムが放たれれば、批評家やリスナーが彼らの新譜をあれこれ論評する事でま

          人気イマイチ指揮者の技と神髄 序文 『人気イマイチ指揮者が出来上がるまで Part.2』

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #15 『私の頭が正常であったなら』 山白朝子 (2018年、角川書店)

          初めて読む作家なので、図書館で借りてお試し。最初に断っておかなくてはならないが、私は「山白朝子」が乙一氏の複数のペンネームの一つである事を知らずに、本書を手に取った。 そして私は、乙一氏の著書もまだ読んだ事がない。なんとなくではあるが、自分には肌が合わないのではないかと思っていたからだ(その予想が外れる事ももちろんある)。そうなると当然、好きな作家や興味のある作家が優先になってしまう。 この作家は肌に合わないのではと思って手に取らないできた一方、興味あるかもと思って手に取

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #15 『私の頭が正常であったなら』 山白朝子 (2018年、角川書店)

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #14 『夜ごとのサーカス』 アンジェラ・カーター 訳:加藤光也 (2000年、国書刊行会)

          19世紀末のロンドン。翼をもった空中ブランコ乗りフェヴァーズが、アメリカ人ジャーナリストに生い立ちを語りはじめる。卵からの誕生、売春宿での少女時代、秘密クラブでのフリークショー。舞台はロシアのペテルブルクからシベリアへ。奇想天外なファンタジー。 アンジェラ・カーターは、どちらかと言えば好きな作家である。お気に入りとまではいかないが、邦訳された本の多くは興味を持って読んでいる(廃刊で入手できない本も数冊あり)。 とはいえ、そもそも一筋縄では行かない、癖の強い個性派作家だし、

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #14 『夜ごとのサーカス』 アンジェラ・カーター 訳:加藤光也 (2000年、国書刊行会)

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #13 『幽談』 京極夏彦 (2008年、メディアファクトリー)

          私は京極作品との出会いに、過去2度失敗している。言うまでもなく氏は売れっ子作家ではあるが、残念ながら個人的には、ひどく相性の悪い作家である。 最初は長編『姑獲鳥の夏』。このコーナーでしつこく繰り返しているように、私はミステリを苦手としているが、この謎解きの仕掛けに賛否両論が起こる事は、著者にとっても織り込み済みの了解事項だっただろうと思う。私はそちらよりもむしろ、始まってすぐの所で京極堂が延々と講釈を垂れるのに辟易し、ふと見たら既に100ページ近く経過していて閉口した。

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #13 『幽談』 京極夏彦 (2008年、メディアファクトリー)

          『西の魔女が死んだ』 隠れた傑作、これいかに? 第16回

          『西の魔女が死んだ』  2008年 / 日本  監督:長崎俊一 出演:高橋真悠、サチ・パーカー、りょう、他 第15回で書かせていただいた通り、ゼロ年代以降の日本映画で、特に私が重要な傑作だと考えているのが、 長澤雅彦監督の『ココニイルコト』と、 紀里谷和明監督の『CASSERN』、 そして本作、長崎俊一監督の『西の魔女が死んだ』です。 本作を含めいずれの作品も、総合芸術としてのクオリティが著しく高く、ありきたりの型を用いない点で共通していますが、 作品ごとの理由は『ココニ

          『西の魔女が死んだ』 隠れた傑作、これいかに? 第16回

          『ココニイルコト』 隠れた傑作、これいかに? 第15回

          『ココニイルコト』  2001年 / 日本  監督:長澤雅彦 出演:真中瞳、堺雅人、原田夏希、他 ゼロ年代以降、約二十数年間の日本映画で、 『万引き家族』『スパイの妻』『ドライブ・マイ・カー』といった国際的な評価を受けた作品を除いて、 掛け値無しの傑作と太鼓判を押せる映画が何本あったか。 観ていない映画もたくさんあるにせよ、残念ながら今の私には、頭に浮かぶ作品がほとんどありません。 森田芳光も、大林宣彦も、岩井俊二も、三池崇史も、今関あきよしも、 みな私にとっては大好き

          『ココニイルコト』 隠れた傑作、これいかに? 第15回

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #12 『深泥丘奇談』 綾辻行人 (2008年、メディアファクトリー)

          初めて読む作家なので、図書館で借りてお試し。売れっ子ミステリ作家である著者が、怪談専門誌「幽」に短篇創作怪談をと依頼されたものをまとめた連作短篇集。著者は当初、雑誌創刊のお祝いで1作だけ書いたつもりが、掲載誌で「連作1」となっていて驚いたと、あとがきにある。 このコーナーを既に読まれている方はご存知の通り、私はミステリが苦手なので、綾辻氏の本は読んだ事がない。氏は特に、私の苦手な新本格の系列のようだからなおさらである。しかし本書は京都の、それも私のような関西人にはそれなりに

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #12 『深泥丘奇談』 綾辻行人 (2008年、メディアファクトリー)

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #11 『氷三部作1 ブロの道』『氷三部作2 氷』 ウラジーミル・ソローキン 訳:松下隆志 (2015年、河出書房新社)

          初めて読む作家だったが、帯の惹句が面白そうすぎて買ってしまった(そしてネットオークションに出品してしまった)2冊。特に前者の推薦文。「アヴァンギャルドから物語の最前衛へ。ソローキンにしか書けない超絶スペクタクル小説。憧れる」(中原昌也)、「そこの肉機械のあなた、ソローキンさんが世界の成り立ちをわかりやすく書いてくれましたよ、肉機械用に」(藤野可織)。私好みである。そりゃ買うわ。 ちなみにこの2冊、刊行順は逆である。先に『氷』が書かれ、その後に『ブロの道』が発表されている。ブ

          あくまでアマチュア書評集 “ワケあって未購入です” #11 『氷三部作1 ブロの道』『氷三部作2 氷』 ウラジーミル・ソローキン 訳:松下隆志 (2015年、河出書房新社)