顧客の声(VoC)を活用した「Uber Voice」という取り組みの全貌
はじめまして。かてぃ(@katy___0516)です。
現在、株式会社ベーシックのSaaS事業、ferret Oneのカスタマーサクセス(以下CS)を担当しています。主にオンボーディング終了後のユーザーさまの運用支援をしています。
6月末にferret OneのCSの取り組みについて、チームマネージャーのnote記事が公開されましたが、ご覧いただけましたでしょうか?
ferret OneのCSの取り組みの全体像について紹介していますが、細かい取り組みについては語りきれませんでしたので、わたしからは『顧客の声を生かす取り組み』、VoC施策(「=Voice of the Customer」顧客の声を継続的に追跡し、顧客の考えやニーズを事業やプロダクトに反映する取り組み)について詳しくお伝えしたい!と思い、初noteを執筆します。
このnoteを読んでいただくことで、VoC活用について考えているプロダクト・CS担当者に役立つことができれば幸いです。
なお、同じく語り切れていないロータッチ施作であるもくもく会については、同チームのおしゃからnoteが出ましたので、ぜひ合わせてご覧くださいませ。
CS部主導のVoCプロジェクト「Uber Voice」
お客様からの声を収集しタイムリーに事業部内へ展開するVoCプロジェクトは2019年7月から始まり、CS部の重点取り組みの1つとして続いています。
3月に開催されたCS天下一武道会でもUber Voiceを紹介させていただいたところ、ユニークな名前についてTwitterでも反響いただきましたが、こちらは現在、formrunで事業開発を担当している前任のぴろりが、デリバリーで有名な「Uber」にかけてプロジェクト開始当初に命名しました。キャッチーな名称ゆえにその取り組みはCS部を超えて、セールスチームやマーケティング部を含めた事業部全体で浸透するようになりました。
Uber Voiceに取り組む目的
多くのSaaSが取り組むVoCプロジェクトのなかで、Uber Voiceは、顧客の声をプロダクトに反映するだけではなく、マーケティング・セールスにも活かしている点が特徴的かと思います。
先日参加したCSのVoCイベント(GOLD RUSH〜VOCという金脈〜 -CS HACK #46 )で、「VoC施策を行うには目標設定が重要」という話が各社より出ていました。ferret Oneではセールスチームやマーケティング部を含めた事業部全体で重要指標としているCAC(=「Customer Acquisition Cost」、顧客獲得単価)の改善において、CSが集めた顧客の声を各セクションに届けることが重要であるという共通認識を持っています。
以下で紹介している通り、Uber Voiceはかなりの工数を割いており、一般的にはその工数ゆえ継続が難しいと判断されるようなものですが、事業部として重要なプロジェクトとして位置付けられ、これまで開催できています。
以下では具体的なUber Voiceの取り組みについて説明していきます。
プロジェクトの運営
声の収集
ferret OneではVoCの収集をCSが担っています。
CSは大きくアカウントマネジメント(オンボーディング・アカウントサクセス)/カスタマーサポート/制作の3つのチームに分かれており、それぞれのメンバーがお客様と関わる中でいただいた声をスプレッドシートに記載するという方法で集約しています。
全体を通じて、議題としてあげる声・あげない声の線引きは行なっていません。理由は、このプロジェクトの目的が事業部全体でのCACの改善であり、どの声がどのくらいそれぞれのバリューチェーンに活きてくるかについてCSメンバーでは測れないからです。
機能に関する声は、もちろんプロダクト改善につながります。
さらに機能に関する声以外の声のその根底にあるお客様のWebマーケティングに関するお悩みや、営業組織の課題なども、プロダクト改善の指標となったり、マーケティングや営業の訴求につながることがあります。
そのため、あらゆる声を漏れなく共有することを心がけています。
声の集約・活用方法
週に1回CSメンバーが集まり、お客様からの声を集約(CSナレッジ共有会)し、他部署に隔週(Uber Voice会)で届け、プロダクト改善について月1回提案を行う(プロダクト委員会)という流れで行なっています。
<Uber Voiceプロジェクト全体の流れ>
1. CSナレッジ共有会(週1回開催)
2. Uber Voice会(隔週1回開催)
3. プロダクト委員会(月1回開催)
CSナレッジ共有会(週1回開催)
各メンバーが収集した声をまずはCS内部で共有する場です。この場ではUber Voiceで届ける声の確認を行うだけではなく、CSチーム内でのナレッジを共有する目的もあります。
<CSナレッジ共有会はCSの全チームが参加>
Uber Voice会(隔週1回開催)
このプロジェクトのメインの場です。
CSでの共有を経て、各部署の代表者に集まってもらい重要な声を届けています。
ただ共有するだけで終わらせず、例えばプロダクトの改善やマーケティング訴求文の改善など各部署での施策に活かしてもらうことを目的として会議を行っています。また、各部署との意見やナレッジ交換の場としても機能しています。
参加は自由なので多い時には15名もの参加者が集まる会になっています。
どちらも元々はオフラインで実施していましたが、リモートワークに移行した今はオンラインで全て開催しています。
プロダクト委員会(月1回開催)
顧客の声を元にプロダクト改善にフォーカスした提案の場です。
プロダクト・開発・CSが集まる場で、今後のプロダクト改修について議論を行います。
ここでの提案はボリューム(量)だけでなく、CSとしての優先度を合わせて提案を行なっています。
プロジェクトの成果
これまでご紹介してきた通り、様々な会議を経てUber Voiceのプロジェクトを推進する中で、3つの成果が生まれました。
①実際の施策・活動に繋がるようになった!
プロダクト委員会での提案により、改修の優先順位やポイントで顧客の声が反映されるようになっています。これまでは顧客の声の「数」が判断基準となっていましたが、プロダクト検討の場にCSが入って提案することで、「数」が少なかった機能の改善が優先的に開発・改善されました。
▼ボタンパーツの改善も顧客の声よりリリースされた機能改善の1つです
Uber Voiceで実施しているアンケートでは、毎回「活用できる声があった」と各部署から評価いただいています。さらには、「案件化につながった」といったようなKPIの達成に寄与しているという声も発生する会になり、そもそものCAC改善の目的に繋がる兆しが見えてきています。
②顧客の声が日常的に集まる組織になった!
顧客の声を漏れなくピックアップするのが重要ですが、月に200件ほどあがる環境になっています。月を増すごとに顧客の声が増えていっています。
③ナレッジ共有にも繋がっている!
顧客の声を元に部署横断で議論できる場なのでナレッジ共有にも繋がっています。例えば、マーケティング部の取り組みやインサイドセールスの取り組みを営業・CSが活用するといった連携もできてきました。
Uber Voiceがぶつかった3つの壁
この成果をあげるまでに全てが順調に進んだ訳ではありません。
チームの目標を共有し、会議の場を設定し、顧客の声を集約することは定着しましたが、それらをどう活かしていくかについてはまだまだ模索中な部分も多いです。
我々がぶつかった課題はVoCプロジェクトを推進しようと思うと必ずぶつかるものだと思いますので、課題とその対策をお伝えします。
全てが絡み合っているのですが、まとめると課題は下記の3つに集約されていました。
①CSが顧客の声を届けることの優先度が下がる
②顧客の声の優先度がつけきれていない
③実際の施策・活動に繋がらない
課題に対する対策
課題に対して下記の取り組みを実施、または計画を進めています。
課題① CSが顧客の声を届けることの優先度が下がる
解決策①【CSメンバーへ顧客の声の共有の重要性を伝え続ける】
日々の顧客対応でいっぱいいっぱいになってしまうこともあるのですが、顧客の声を共有することが重要施策であることの意識づけを行なっています。
具体的には「言い続けること」なのですが、各部署へ共有した時の反応や取り組みが成果につながったこと、その成果までの過程を伝えています。自分の挙げた声がどう活かされているのかを認識してもらうことで声の質の向上やプロジェクトの継続にもつながります。
課題② 顧客の声の優先度がつけきれていない
解決策②【顧客の声の優先度づけをする】
ラフに共有することを目指しているからこそ、声の数が膨大になり、どの声が重要かの判別が難しいというのが一番の課題でした。
これに対しては、CSメンバー内でサクセスさせるべき顧客を明確にし、カスタマージャーニーマップを作成し、解決をしました。カスタマージャーニーマップで顧客がぶつかる壁を「知識」「ferret One機能」それぞれに分け、どれだけ重要な声なのかを判別できる指標としてCSメンバー間での共通認識をとるだけでなく、他部署との認識統一にも活用しています。
また各部署から、集めてきて欲しい声、具体的には「解像度を上げたい機能や施策についての声」の要望をUber Voice会でCSにシェアしてもらうことも意識して行なっています。
これによって各部署へのフィードバック内容も充実し、顧客の声の活用度が高まりました。
課題③ 実際の施策・活動に繋がらない
解決策③【声のボリュームではなく、カスタマージャーニーマップを基に優先度を伝える】
2020年上期からスタートしたプロダクト委員会にて顧客の声を基にした提案を実施することで、上記で記載したようなプロダクト改善が成果として出ています。声を各部署に伝えるときは「プロダクト委員会」の項目でもお伝えしたように、声のボリュームではなく、カスタマージャーニーマップを基にして優先度を伝えています。
他の部署の施策反映は都度Uber Voice会でのアンケートで確認を行っていますが、まだまだ具体的な施策への活かし方やその成果についてはキャッチアップ仕切れていないところもあるので改善予定です。
今後に向けて
これまでの取り組みを伝えましたが、目標の達成に向けては改善余地が多くあるので、ブラッシュアップを重ねていっている真っ最中です…!
次のタイミングには全ての壁を超えて、新たなステップに進んだというお話が具体的にできればと考えております。
皆様の組織のVoCの取り組みの参考に少しでもなれば幸いです。
Twitterもやっておりますので、ぜひお気軽に感想やご意見お聞かせくださいませ。
・かてぃlカスタマーサクセス:@katy___0516
VoCだけでなく、各社のCSMと情報交換させていただければと思っております!!!
最後まで読んでいただきありがとうございました。